2009.01.09 Fri
無料で入手できても購入を選択する人々:NINのCCアルバム、Amazon MP3ストアの2008年ベストセラーアルバムに
以下の文章は、CreativeCommons.orgの「NIN’s CC-Licensed Best-Selling MP3 Album」という記事を翻訳したものである。
原典:CreativeCommons.org
原題:NIN’s CC-Licensed Best-Selling MP3 Album
著者:Fred Benenson
日付:January 5, 2009
ライセンス:CC by
NINのCreative CommonsライセンスアルバムGhosts I-IVが、最近数多くのヘッドラインを飾っている。
先ずはじめに、同アルバムは批評家たちから賞賛を受け、グラミー賞の2部門にノミネートされている。これは同アルバムの音楽作品としての素晴らしさを示すものだろう。しかし、さらに我々を驚かせるのは、このアルバムがいかに音楽ファンに受け入れられたか、ということ。リリース第1週で160万ドル以上の収益を生み出したのみならず、Billboard Electronicチャートの第1位に輝き、Last.fmでは5,222,525回以上scrobbleされ、アルバム・オブ・ザ・イヤーの第4位につけた。
しかし、さらにエキサイティングなのは、Ghosts I-IVがAmazon MP3ストアで2008年最も購入されたMP3アルバムに輝いたことだろう。
少し、これについて考えてみよう。
NINファンはこのCC-BY-NC-SAアルバムを、合法的にファイル共有ネットワークから入手することができる。実際多くの人がそうしたし、現在でも数千人の人が共有を続けている。しかしではなぜ、ファンはファイル共有ネットワークでも手に入るファイルを購入する気になったのだろうか?1つの説明としては、NINのサイト、Amazon MP3ストアが便利で利用しやすいから、と考えられる。しかし、別の説明としては、ファンが、MP3の購入を自分の好きな音楽やミュージシャンのキャリアを直接サポートするものとして理解しているためであるとも考えられる。
もし、CCで音楽をリリースすることはデジタルセールスを食いつぶす、なんて主張する人に出会ったら、Ghosts I-IVがそのルールを打破したことを思い出して、このエントリを見せてやって欲しい。
もちろん、既に人気を確立しているNine Inch Nailsだからこそというところもあるのだけれど、それでも無料で手に入るにもかかわらず、お金を支払って購入した人が多数いたことは驚きに値する。無料で入手できることが、必ずしもペイを妨げるというものではない、という1つの例とも言える。
ここでも言われているが、1つには利便性からの説明も可能だろう。アルバム『Ghost I-IV』は、300ドルのウルトラデラックスパッケージ、75ドルのデラックスパッケージ、10ドルの2枚組CD、5ドルのダウンロード、そして4部作中第1部のフリーダウンロードが提供されており、公式にはフルで無料ダウンロード、というわけにはいかない。もちろん、CC by-nc-saでライセンスされているので、BitTorrentやオンラインストレージなどを通じて入手することも可能ではあるが、日頃そうしたものの利用になれていない人にとっては、わざわざ探したり、クライアントを導入する手間をかけるよりなら、Amazonで購入した方が楽でいい、と思えるのかもしれない。
それに『加えて』、Nine Inch Nailsのこうした『リスナー考を考えた戦略』に対して、音楽ファンはサポートしたいという感覚を得ることだろう。そうした感覚が、購入へとさらに後押しする。
さらにもう1つ説明ができるのだとすれば、『GhostI-IV』が人気ダウンロードアルバムとしてフィーチャーされていることで、こうした事情をよく知らないAmazon利用者にもリーチすることができた、ということも考えられるだろう。そして、同アルバムの価格設定は5ドルと、一般的なAmazonのアルバム価格8.99-9.99ドルよりも遙かに手が出しやすい価格であったことも影響したかもしれない。(さらに別の可能性としては、『Ghost I-IV』はアラカルトでの購入ができず、アルバムのみの購入となっていること、同アルバムがアラカルトでの購入を動機づけられないようなトータルなアルバムであったことなども、アルバム購入を促した理由であるとも考えられる。)
いずれにしても、ユーザとしては非常に手が出しやすいように設計された戦略であるといえる。無料のものよりも利便性が高く、さらにサポート感覚を満たしてくれ、その上、手ごろな価格である、それらが合わさってこうした結果を生み出しているのだと思っている。
当初、私はこうした戦略がフィジカルセールスやライブ、グッズ販売へと繋げるために、ダウンロードセールスを捨てることになるのではないかと思っていたが、必ずしもそうはならないことをこのケースは示している。もちろん、同じことをすればNINのような成功をえられるというわけではない。一部にはNine Inch Nailsのフロントマン、Trent Reznorの確立されたカリスマ性がそうさせるところもあっただろう(さらに言えば、そのTrent Reznorでさえ、失敗を経験している)。
ますますレコード産業は低迷から脱せず、ますます困難な時代を迎えつつあるのだろうが、しかし八方手を尽くして今に至っているわけではない。まだまだ時代の先端をいくどころか、追いついてさえいないという感もある。そう考えると、レコード産業には未だ多くの可能性が残されているとも言える。その可能性に期待したい(先日、お伝えしたSpotifyへのメジャーレーベルの参加もそのための一歩と考えられるだろう)。
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