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Thing 11: 希少性の死(New Music Strategies)

原典: The 20 Things You Must Know About Music Online (pp.46-50)
著者: Andrew Dubber
Website: New Music Strategies

Thing 11: 希少性の死(The Death of Scarcity)

経済学者に希少性の終焉を宣言することは、物理学者に重力の終焉を宣言するかのように思われるかもしれない。しかし、「インターネットがエコノミクスを破壊した」という事実は残る。これまで世界を動かしてきた法則は、もはや通用しなくなっている。

私は15歳のとき、学校で経済学を学びましたが、当時の私には、そこで習ったことは根源的な不変のルールであったように思えます。それは需要と供給の法則であり、希少性に関連するものでした。希少性は非常に重要な概念でした。経済学のレポートに『希少性』という言葉を書けば書くだけ、より高い評価が得られたように思えます。

おそらく、あなたはパクランガのエッジウォーター大学の5年生というわけでも、高度な経済学の理解があるというわけでもないでしょうから、少し説明をしておきましょう。

限定された量のモノがあるとします。それは希少なモノです。もし、スーパーマーケットの棚に3箱のコーンフレークがあり、スーパーマーケットが3箱のコーンフレークを売りに出せば、いずれコーンフレークはなくなります。しかし、誰もコーンフレークを買わなければ、スーパーマーケットはそのコーンフレークの在庫をもてあましてしまいます。コーンフレークに本当に人気があれば、スーパーマーケットはコーンフレークに高い値段をつけることができます。ただ、コーンフレークの価格があまりに高ければ、人々はそれほどコーンフレークを欲しがりません。コーンフレークが棚からなくならないのであれば、コーンフレークの価格を下げることで、より大きなデマンドを作り出すことができます。これらは、非常に単純な時代の経済学における自然法則でした。

では、インターネットではどうでしょうか。そこでは全てが破壊されます。

オンラインミュージックストアがある楽曲を販売するとき、彼らは『在庫に』その楽曲の1つのインスタンスを保持することになります。1つのコピーを売るにしても、100万のコピーを売るにしても、彼らは在庫に1つのコピーを保持するのみです。まるで魔法のコーンフレークの箱のようです。売れ残りの棚スペースを心配する必要も、品切れの心配も必要ないのです。つまり、その楽曲の希少性は存在しないということになります。

このことは、音楽ビジネスで生計を立てていきたいという人たちにとって、全てが変わったことを意味しています。

1,000枚のCDをプレスして、200枚をプロモーションのためにタダで配り、残りの800枚を販売に当てる、という時代もあったかもしれません。しかし現在は、1,000枚のCDをプレスしたとしても、100万のコピーをタダで配ることができ、さらに手元に販売用の1,000枚を残したまま、ということが可能になりました。希少性の死は、「失われたセールス」の概念を無意味なものとしています。もし、誰かがあなたから購入しなかったとしても、他のいくつかの手段で音楽を手に入れることができます(おそらく、それは100万人へのプロモーションのコピーの1つを手に入れることで)。あなたは「セールスを失う」ことはないどころか、リスナーを手に入れることになります。

更に重要なのは、あなたがアテンションを得るということです(この言葉を覚えてますか?これは非常に重要になっていきます)。

オンライン環境における希少性の死は、ニッチをより多く提供することが、ヒットに期待するよりも、よりベターなマーケット戦略であることを意味してもいます。以前の章でお話ししたロングテールです。要約すると、クリス・アンダーソンは、ビジネスの未来があまり売れないモノを数多く売ることだとしています。

また、アンダーソンはその考えを更に進め、The Economics of Abundance(潤沢経済)というフレーズを導入しています。

デヴィッド・ホーニックはこのように説明しています

基本的なアイディアは、テクノロジーの驚異的な進歩が、トランジスタ、ストレージ、帯域といったモノのコストを、ゼロにまでドライブするというものである。そして、ビジネスを作り出す要素が、自由なアプローチに対して十分に豊富であるとき、企業はリソースが希少であった時代(Economy of Scarcity:希少経済)とは異なったものとして、自らのビジネスを適切にとらえなければならない。彼らは浪費を懸念することなく、自由に[潤沢に]リソースを利用しなければならない。それが潤沢経済(Economy of Abundance)における最も重要な態度となる。「1つのことをするのではなく、全てのことをやる」「1つのコンテンツを売るのではなく、全てのコンテンツを売る」「1つのデータを保存するのではなく、全てを保存する」。潤沢経済は、全てを行い、機能しないモノを捨て去るということである。潤沢経済においては、その全てを所有することができる。

ここで最も重要なのは、潤沢という言葉が、製造販売のツールが極めて広範囲にわたって提供されたことを意味するということです。もちろん、全てのメッセージが平等に伝えられるような理想的なメディア環境に私たちがいるなどとは言いませんが、そのバランスは、ほとんどの人が正しいと思える方向にシフトしてきていることは確かです。

放送を考えてみましょう。放送の周波数域には希少性があります。従って、ラジオやテレビの放送局になれるのは、大企業や政府に限られていました(もちろん、『犯罪者』や海賊たちもいましたが)。

オンラインでのオーディオストリーミングを『ラジオ』と考えて良いものかどうかはさておき、これまでにないほどに、多数のチャンネルが多くの人々に利用できるようになっています。これは単純に、オンライン『スペース』が潤沢であるためであり、それゆえ、そこに参入するためのコストが非常に低いのです。

ある町で最大どれくらいのFM局を許容できるかをご存じでしょうか。おそらく50くらいが限界でしょう。では、その同じ町で利用できるオンラインオーディオストリーミングの数は最大でどれくらいでしょうか?ほぼ無限と言って良いでしょう。

オンラインが潤沢さを実現しうる環境だというだけではなく、その潤沢さはますます増大を続けています。ハードディスクの容量や帯域を考えてみてください。かつて、56kbpsのダイアルアップ接続ですら驚くべきものでした。しかし、今となってはあまりに遅いと感じられるものです。イーサン・ザッカーマンは、オンラインメールストレージを例に挙げてこう述べています。

それまで利用されていたメール容量2メガバイトのHotmailに代って、GMailが2ギガバイサービスを提供した時点で、ハードディスクストレージは潤沢なものとなった。「メールボックスがいっぱい?それって何だったの?」

また、マイケル・ゴールドハーバーも指摘していますが、オンライン経済の基盤は、製品やサービスの不足に対する懸念をこえて、主にアテンションを中心とする経済へとシフトしています(再びアテンションという言葉が出てきました)。

製品やサービスが不足することはないため、アテンションがオンラインでの成功のための基盤となります。しかし、これはお金がその方程式に含まれていない、ということを意味するものではありません。

…現在、お金はアテンションと共に流れています。これともっと普遍的な言葉に直すと、経済学の転換が生じているときには、これまでの富が新しいものを手にした人々のもとにいとも簡単に流れていく、ということです。

GoogleがYouTubeの買収に15億ドルを支払ったのも、DoubleClickの買収にその倍の額を出したことも、偶然ではないのです。お金はアテンションへと流れています。これら2つのサービスは、それ自体は実際にコンテンツを提供するものではありませんが、膨大なアテンションを生み出しています。Google自体も、オンライン上で最もアテンションが向けられているサイトです。

ただ、人々の目(や耳)を釘づけにしたからといって、自動的にお金が舞い込んでくるわけではありません。リシャブ・アイヤー・ゴッシュは、Economics is Dead! Long Live Economics!という記事の中で、こうした考えに対する指摘をしています。これについてもっとよく知りたいと思ったのなら、是非読んでみることをお勧めします。彼の立場を簡潔に言い表すと「well, actually, it’s more complicated than that.」

これはあなたが読んでおくべきトピックです。私が15歳のころに重要だと考えたから、というわけではありませんが、経済学は実際に重要なことです。あなたが仕事として関わっている経済の環境を理解することは、音楽を生業として―もちろん、他の仕事も同様ですが―生き残るために極めて重要なことです。

いかにしてアテンションを得るのかについては、後のサーチエンジン最適化の章でお話しすることにしますが、とりあえずここでは、希少性の死があなたの生計を支えるものにどのような影響を及ぼしうるのかについて、少し考えてもらいたいと思います。あなたが音楽を失うことはなくなり、製品、サービス、さらには消費者が欠乏することもない、ということを思い出してください。

このトピックついて更に知識を深めたいのであれば、TechDirtに掲載されたこれらの記事を読まれることをお勧めします。

翻訳者より:対訳テキストを付記しておきます。原文と訳文の対応を確認したい場合にどうぞご利用ください。何か気になる点がありましたら、どうぞご遠慮なくご指摘ください。

The 20 Things You Must Know About Music Online 目次

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Comment

p | URL | 2009.06.15 16:59
興味深いテキストの翻訳、多謝です。今後のテキストも楽しみにしています。
目次中のThing 3: Opinion Leaders Rule (オピニオン・リーダー・ルール)の項のリンクがThing 2のものになっています。URLに気づけばすぐに行き着けるとは思いますが他のページも同様でしたのでコメントさせていただきました。
heatwave | URL | 2009.06.17 14:13 | Edit
pさま

ご指摘ありがとうございます。
テンプレを作って貼り付けているので、おそらくほとんどのエントリで修正が必要になっていそうです。時間を見つけて修正したいと思います。

わざわざのご指摘、本当にありがとうございます。
自分では気付かない点も多々あるので、指摘していただけると本当に助かります。

20 Things シリーズは一応全部訳してはいるのですが、表現の見直しや原文のコンテクストの理解により、できるだけ良いテキストとしてアップしたいと思っておりまして、時間をかけながらの更新になりそうです。これからもどうぞよろしくお願いします!
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