2006.12.26 Tue
ISPのP2Pトラフィック規制を暗号化で回避することの是非
日本でもP2Pトラフィックを規制しているISPが多数存在するが、それは海外でも同じことのようだ。多数のISPがBitTorrentトラフィックを規制しており、それによって利用が困難なユーザも多数存在する。それに対抗して、BitTorrentクライアントの中には、暗号化を施すことでそれらの規制をかいくぐることを可能にしている。この暗号化に関しては、その是非が分かれており、TorrentFreakの記事は賛成派として意見を述べている。
原典:TorrentFreak
原題:Why Encrypting BitTorrent Traffic Is Good
著者:Ernesto
日付:December 24, 2006
URL:http://torrentfreak.com/why-encrypting-bittorrent-traffic-is-good/
最近、Wired NewsのライターMichael Galoreによって、トラフィック制御とBitTorrent暗号化の話題が再燃した。最新の投稿では、彼はBitTorrentトラフィックを暗号化することはまずいと説明している。しかし、これは本当なのだろうか?タイトルには是非、と書いたけれど、今回は賛成意見のみ。
Wired blogのMonkey Businessの投稿によると、暗号化ではほとんどのISPをだますことはできない、そしてそれはISPによるトラフィック制御を回避するのには陳腐な方法であると結論づけている。私は、これには賛同しかねる。
まず第一に、暗号化は、BitTorrentトラフィックを抑制しているISPを回避する唯一の方法である。確かに、BitTorrentトラフィックを暗号化することはISPの視点からすれば具合が悪いだろう、しかし、トラフィック制御を行っているISPに加入しているほとんどのBitTorrentユーザには、他のいかなる選択肢も存在しない。
それでは、暗号化がまずいものであるという主張を支持する議論を眺めてみよう。これらの議論の大部分は、Bram Cohenの投稿したブログの記事によるものである。このブログはBramが今年の初めに書いたものである。
1.大容量の双方向ファイル転送は、それが暗号化されていたとしても、監視者や抑制者からは明らかに双方向のファイル転送であると見抜かれる。ISPがそれをBitTorrentトラフィックであると推測するには、それほど技術を必要としない。
さて、この議論は、もしあなたのISPがBitTorrentトラフィックの抑制を行っているのであれば、あなたが少なくとも暗号化を試みるべきではない理由について本当の意味で説明をしていない。この議論は、暗号化の効果について述べているのである。しかし、パケット制御を行っているISPに直面している私の友人たちに聞いてみたところ、暗号化が彼らほとんどにとってすばらしく機能するという。更に言えば、より膨大な双方向の転送はBitTorrentトラフィックだけではない。たとえばVoIPとか?
2.混乱は、暗号化クライアントと非暗号化クライアントの不適合性を生み出す結果に終わる。
それは事実だろう。しかし、DHTもそうである−DHTはBram Cohenによって公式のBitTorrentクライアントに導入され、まもなく他のクライアントにも実装された。あなたは、暗号化の緩やかな形として、(互換性を確実にした)常に非暗号化クライアントとの送受信接続を許すことが可能である。主なクライアントの最新バージョンが、現在この暗号化をサポートしているので、Bram Cohenでさえ、それがそれほど悪いものではないことを理解した。
3.暗号化は、ISPによって行われるBitTorrentデータのキャッシングにダメージを与える。
私は、BitTorrentトラフィックの制御とキャッシングを同時に行っているISPなど聞いたことがない。キャッシングは基本的にはダウンロードを助けるものであるので、ISPがBitTorrentトラフィックのキャッシングをすることが、そのトラフィックの抑制に繋がるとも思えない。
4.BitTorrent転送の暗号化を行うことは、まさにISPに敵対的だということである。全ての設備に乏しいISPがお涙頂戴というわけには行かないだろうが、しかし、そのことはISPをより憤慨させるだけである。
ISPがBitTorrentトラフィックを抑制し始めるなら、ISPは彼らの顧客に対して敵対的であるといえる。しかも、ときにはその通知さえないのだから。確かに、暗号化は両者によって最善の解決方法ではない。しかし、ISPがBitTorrentのダウンロード速度を10KB/sに制限するのであれば、他の選択肢はなくなってしまう。
BitTorrentの暗号化は、現在、以下のBitTorrentクライアントでサポートされている。BitTorrentトラフィックを暗号化する方法についての詳細な情報はここで見ることができる。
Clients supporting encryption:
Azureus: Windows - Linux - Mac OSX
Bitcomet: Windows
BitTorrent mainline: Windows - Linux - Mac OSX
KTorrent: Linux
rTorrent: Linux - Mac OSX
uTorrent : Windows
BitTornado (in v0.3.18): Windows
私は、ISPにBitTorrentが生み出している莫大な量のトラフィックを管理するよりよい方法を模索することを求める。一部のISPは、この問題を帯域幅だけの問題であるというかもしれないが、実際には多くの人が背負わなければならない問題ではなく、単にお金に問題なのである。外部からのトラフィックは、ISPに多くの費用を課する。1つの解決可能性としては、主なクライアントに最近実装されたCache Discovery Protocolである。
「Cache Discovery Protocol」は、ISPがもっとも人気のあるtorrentを発見し、データをキャッシュし、それをseedするというものである。ISPにとってはこの解決方法がよいかもしれない。なぜなら、内部のネットワークだけを利用するほうが、外部のトラフィックを使うよりも非常に安く済むからである。
しかし、現段階では私はこう言いたい:暗号化しよう!
個人的には、ISPによるトラフィック規制の仕方には反対だったりする。確かに、P2Pファイル共有によって発生するトラフィックの増加に頭を悩ませているISPがほとんどだろうけれど、単にトラフィック制御によって問題を先延ばしするだけでは、どうしようもないと思う。単純に、現在ではP2Pファイル共有が違法な目的で使われることが多いというだけで、それを免罪符にしている感すらある。
もちろん、それを口実にしているわけではなく、膨大なトラフィックによって、帯域が占有されているから規制するとしてはいる。しかし、それができるのも、違法ファイル共有がメインであるという現状があるからだろう。文句を言ってくるのは大半が違法ファイル共有ユーザ、苦情ははねつけられるし、退会しても別にかまわないとタカをくくっている部分があると思う。でも、これがVoIPといったサービスだったら、こうはいかなかっただろう。
違法な用途での使われ方が主となっている現状を否定することはできないけれど、かといって無制限にトラフィック規制をするというのには賛成できない。確かに、生み出されるトラフィックは莫大なものであり、それ以外の帯域を圧迫してしまうということもあるだろう。個人的には、それなら増強しろよと思うけれども、現実問題として、小手先のアップグレードでは対処できないくらいのトラフィックであることも理解はできる。
しかし、全面規制によってほぼ利用が不可能な状態にあるもの事実である。たまにBitTorrentを利用して映画をダウンロードしているけれど、torrentが非常にHealthyな状態であっても8時間〜半日、そうでなければ数日から数週間かかってしまう。もちろん、規制されていなくても、状態が悪ければ相当な時間がかかるのも事実ではあるが、それにしてもあまりに時間がかかるというものだ。
それで思うのだけれども、私のようなユーザがどれだけISPの負担になるのだろうか。たまに、週に1度か2度くらい映画をダウンロードしたり、ソフトウェアをダウンロードするだけのユーザが。まぁ、そのような人ばかりではBitTorrentプロトコル自体が役に立たなくなりそうではあるけれど、少なくとも帯域を占有しているのは、ヘビーユーザだろう。本当に帯域制限をすべきはそのようなユーザに対してのみ許されるべきであって、全てのユーザが利用できないという状況が許されていること自体がどうなんだろうと思う。その辺も、どうせ違法ユーザなんだからどう扱ってもいいという感じに見える。
ただ、建前上は接続を遮断することはできないというだけで、実質上はP2P技術の意味を成さなくしている。私の契約しているniftyなどは確か、50KB/sの帯域制限をかけていたと思う。実際にそれ以上出ることはないし、だいたい30-40KBの間に収まっている。一応は使わせているんだから、権利を奪っているわけではないよと言うところだろうか。一時期はFTTHなのにISDN速度、というくらいに制限をかけたくせにと思ってしまう。FTTHの意味がまったくないだろと。
制限については絶対ダメなどというわけではないし、ユーザの利用状況に応じた段階的な制限であればまだ受け入れられる。たとえば、一定期間の転送量によって段階的に制限していくといった感じ。でも、現在のところ、そのような配慮をしているISPは多くはない。単純に決められた速度以上の速度を出させないようにしている。そうすれば、使わなくなるだろうとでも思っているのだろう。結局はリソースの配分もへったくれもない。ただ、使わせないようにしているだけである。
" niftyの帯域制限についてのサポートに記載されている情報を見てみると、
ファイル交換ソフト利用時の通信速度の制限について
当社では、多くのお客様へインターネットを快適な状態・環境で利用していただくために、4月28日(金)より、ファイル交換ソフト(Winnyなど)利用時の通信速度の制限を順次拡大いたします。
本制限は、一部のお客様による、連続的且つ長時間に渡り大量のデータをやり取りするソフトウエアからの通信により、多くのお客様の通信速度低下を招く状況を解消するために実施するものです。
なお、特定のお客様の通信速度を制限するものではなく、メールの送受信やホームページの閲覧、データのアップロード・ダウンロードには影響ございません。
その上、Q&Aにこのような記述まで載せている。
Q:ファイル交換の速度が落ちたのは、帯域制御が原因ですか?
A:帯域制御のみが原因とは断定できません。
多くのファイル交換ソフトウエアにおいては、一度に複数の箇所と通信をするものや、直接ファイル交換をせずにほかのパソコンを中継してファイル交換するものなどがあるため、それらの通信先の状況により、実効上の速度が低下することがあります。また、多くの通信が一度に行われるような状況においても、実効上の通信速度が低下することがあります。そのため、帯域制御のみが原因とは断定できません。
ISPがP2Pソフトを規制しましたと発表したとして、ユーザがちなみにSkypeは規制されてるの?どう規制しているの?と質問したときにそれにはお答えできませんなどというつもりだろうか。P2Pファイル共有ユーザは無視してもよい、多少は乱暴に扱っても許される存在だと言うことなんだろう。
ちなみにこちらも現状と照らし合わせると理解しかねる回答である。
Q:どうして帯域の制限を行うのですか?
A:通信速度の低下、通信品質の悪化を改善するためです。
詳細:多くの帯域を占有している場合、他の通信に影響を及ぼす可能性があります。そのため、通信が滞りなく流れるように調整すること(トラフィック・コントロール強化)を目的としております。
このような現状を考えると、P2Pファイル共有ソフトの暗号化は許されてもいいんじゃないかなと思ったりする。
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> 帯域制御のみが原因とは断定できません。
これは事実として正しいと思います。
> 何に対して、どのような制御を行っているのかを全く明言していないにもかかわらず、
それを開示すると、当然ながらP2Pソフトの開発者に「こうすれば回避できますよ」といっているようなものですから、詳細を開示しないのはISP側の対応としては当然だと思います。
現実に極少数のP2Pヘビーユーザーに帯域を食われて迷惑している大多数の一般ユーザーがいるわけですから、ISPとしても対策を採らないわけにはいかないでしょう。帯域制限はしているものの、某ISPのように完全に遮断しないだけまだマシだともいえます。
| 通りすがりB | 2006/12/29 11:16 | URL | ≫ EDIT