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ACTAガイド パート1: これまでの流れ

カナダ オタワ大学の法学者マイケル・ガイスト教授によるACTA(模倣品・海賊版拡散防止条約(Anti-Counterfeiting Trade Agreement) 」)に関する一連のシリーズの第1回。

以下の文章は、Michael Geist Blogの「The ACTA Guide, Part One: The Talks To-Date」という記事を翻訳したものである。

原典:Michael Geist Blog
原題:The ACTA Guide, Part One: The Talks To-Date
著者:Michael Geist
日付:January 25, 2010
ライセンス:CC BY

模造品・海賊版拡散防止条約(ACTA)の第7回交渉が、明日、メキシコのグアダラハラで開始される。この交渉ラウンドは3日半と現在までで最も長い日程が組まれ、民事エンフォースメント、 税関取り締まり、インターネット規定、透明性(1時間)について話し合われる。これから5日間、ACTAに関わる多数の議論、リークされた文書へのリンク、透明性問題についての情報、ACTAに言及した人々など、5部にわたるACTAガイドを掲載しようと思う。

今日はまず、ACTAについてよく知らない人のために、そして最近の進展を理解するために、これまでの長きにわたるACTAの背景的説明から始めよう。ACTAについて理解を深める方法はいくつもある。最近のGoogleによる議論は、特に透明性の問題に関して、非常に有益であった。ワシントンポスト ( Copyright Overreach Takes a World Tour , Q & A on ACTA ) やアイリッシュタイムズ ( Secret agreement may have poisonous effect on the net ) などの主流メディアによる報道もなされている。The Command Lineはこの問題を扱ったポッドキャストを流しているし、Search EngineCBCのAs It HappensからはACTAに関するインタビューを受けた(訳注: いずれも音声)。また、昨年、私はACTAの進展を追跡するタイムラインを作成し、さらに昨年11月には主要な展開を強調した20分間の講演を公開した(以下にエンベッド)。

これまでの進展の詳細について以下に記す。

2006年10月 カナダ、アメリカからACTA提案を受ける。コメントのため省庁内にて回覧される。

2007年2月 米国、EU、日本、カナダ、スイスがジュネーブにて会合を開く(TRIPSの限界について)。ここからACTA提案へと発展したものもあった。

2007年10月 米国、EU、日本、韓国、メキシコ、ニュージーランド、スイス、カナダがACTA交渉計画をアナウンス。

2008年3月 交渉国、ACTAの予備会合を開く。ここでACTAの6つの主要な章立てをアウトラインとすることが確認される。(1)最初の規定と定義、(2)知的財産権のエンフォースメント、(3)国際協力、(4)エンフォースメントの実務、(5)機構に関する取り決め、(6)最後の規定。知的財産権のエンフォースメントは、民事的エンフォースメント、税関取り締まり、刑事的エンフォースメント、インターネットの4つの節を伴う。

2008年6月 6月3、4日にジュネーブにて最初の交渉が行われた。この会合に関するカナダ政府の文書はこちら。参加国はオーストラリア、カナダ、EC、EU議長国(スロヴェニア)、日本、韓国、メキシコ、モロッコ、ニュージーランド、アラブ首長国連邦、米国。この会合では、USTR(米国通商代表部)が議長をつとめ、ジュネーブの米国大使館が司会した。

カナダは機構に関する取り決め(ACTA第4章)と手続き的な問題についての2つの「準備ペーパー(訳注: non-paper/叩き台)」を提出。この機構に関する取り決めのペーパーでは、実施、効果的なエンフォースメント、ACTAへの加入を検討する各国への支援等を毎年議論する会合「ACTA Oversight Council」の設立が求められた。

米国と日本は、税関取り締まりの節についての草案を提出。この提案では、当局が権利者側の明示的な主張のみを根拠に、知的財産権侵害商品のリリースを最低でも1年間停止する権限を与える規定が求められた。税関は、権利者からの情報により、自主的に貨物の運び込みを止めることができるようになる。また製品が知財権を侵害するものである場合、処罰する権限を有する。さらに米国は、権利者が知財権侵害商品の押収、破壊に対していかなる経済的負担をも負わないという規定を強く求めた。また、代表団は情報の公表に関する規定の見通しについても言及している。

知的財産権が個人情報、商業・産業的機密、職務・経営上の守秘性を保護する国内規定および国内法のもとで侵害されているか否かを立証することを目的として、所轄官庁は知財権侵害製品の持ち込みを差止め、当該権利者に送り主、輸入業者、輸出業者、荷受け人の氏名・住所を通知し、当該製品とその品質、知り得た場合には生産国、当該製品の製造者の住所、氏名についての詳細を説明する。

多数の国が最低基準規則の見直し、特定条項の破棄などの改正を提案。さらにEUは、税関が手荷物検査でiPodの中身まで調べるといった懸念を払拭するため、非営利が妥当と考えられる製品を含む個人の手荷物の除外を求める特定の規定を提案した。

「免税限度の範囲内にある非営利的性質を持つ旅行者個人の手荷物で、その製品の商業的輸送を明示するものがない場合、各当事国はそうした製品、またはその一部をこの節の例外にすることが妥当だと考えるだろう。」

2008年7月 7月29-31日、ワシントンDCにて第二回交渉が開催。参加国はオーストラリア、カナダ、EC、EU議長国(フランス)、日本、韓国、メキシコ、モロッコ、ニュージーランド、スイス、シンガポール、米国(公式プレスリリースはこちら)。ここでは、税関取り締まり(2回目)、民事的エンフォースメント(初回)を集中的に議論、また機構の問題、国際協力は準備ペーパーとして提出された。

米国と日本は民事的エンフォースメント規定の草案を提出。両国は、全ての知的財産権についてエンフォースメントを可能にする民事訴訟手続きを求めている。一部の国では、これが著作権と商標権に限られているためである。条約加盟国は、著作権および商標権侵害に対する法定損害賠償(一部の国はこれを任意のものにしたいと考えているが、米国は特許権侵害に対する法定損害賠償にまで拡大したいと考えている)や訴訟費用請求などの手続きの実施を求められることになる。法定損害賠償規定は以下のものを含んでいる。

1. 各当事国は、民事訴訟手続きを提供する。被害者からの申し立てを受けた司法当局は、侵害の事実を知りつつ、または知るに足る合理的な理由がありながら知的財産権の侵害を行った者に対し、侵害の結果として権利者が被った実際の損害を十分に補償するよう命じる権限を有する。その額は、適当と考えられる全ての側面、とりわけ、利益損失、市場価格から判断される侵害された製品やサービスの価値、提案された小売価格、不当利益や、経済的要因や権利者から提出された法的価値以外の要素などが考慮される。

2. 第1項に代わる方法として、各当事国は以下のものを提供するシステムを構築、または維持し、
(a) あらかじめ定められた損害賠償
(b) 損害賠償額を決定するための推定
侵害に起因する損害について権利者に十分に(米国オプション:完全に)補償する。

更に、侵害製品を補償なしに破棄する命令なども提案されている。またこの提案は、侵害を疑われる個人に対し、どのような形でも侵害に関わった全ての個人、第三者について情報を開示するよう命令する強い権限を要求してもいる。その規定は以下の通り。

各当事国は、知的財産権のエンフォースメントに関する民事訴訟手続きにおいて、司法当局が侵害者に対し、証拠の収集を目的として(日本オプション: 関係法令で規定された形で)、侵害者が所有または管理するいかなる情報についても権利者または司法当局に提供するよう命じる権限を与えなければならない。そうした情報には、侵害の全ての側面に関わった個人に関する情報、侵害製品・サービスの製造販売、またはその流通経路に関わった第三者の個人情報を含む当該の製品またはサービスの製造手段、流通経路に関する情報が含まれる。

2008年10月 10月8-9日、東京にて第三回交渉が開催(当初は2日半を予定していたが早期に終了した)(公式プレスリリースはこちら)。参加国は、オーストラリア、EU、韓国、メキシコ、モロッコ、ニュージーランド、シンガポール、スイス、米国、日本、カナダ。各国は2008年内に更に2回の会合を開催するのは難しいとして、年内に長めの会合を1回開催することを決定。

1日目は刑事的エンフォースメントに焦点が置かれた。米国と日本が刑事的エンフォースメント規定の草案を提出。(1) 商業的性質を持つケース、(2) 金銭的利益に直接的または間接的に動機づけられてはいない場合でも重大かつ意図的な著作権・商標権侵害のケース 2つについて刑事的エンフォースメントの拡張が提案された。これは各国に、将来的な侵害行為を抑止するのに十分な、懲役刑を含む刑罰の詳細な規定を設けることを求めている(専門用語を用いれば「侵害者の金銭的誘因を排除するという方針に一致した、将来的な侵害行為を抑止するに十分足る罰金刑および懲役刑の刑罰を含む」)

さらに、映画や音楽の模造品の輸送が犯罪行為になる。無許諾の映画盗撮もここに含まれる。模造品規定については以下の通り。

各当事国は、意図的な商標偽造または著作権・隣接権の侵害でなかった場合においても、以下のものの輸送であることを認識しているケースにおいては、刑事手続きおよび適用される罰則を設けなければならない。

(a) 以下の貼付け、巻付け、添付された、または貼付け、巻付け、添付されるようデザインされた模倣ラベル
 (i)  表音文字
 (ii) コンピュータプログラムまたはその他の文芸作品のコピー
 (iii) 映画またはその他の視聴覚作品のコピー
 (iv) 上記品目のための文書またはパッケージ
(b)サブパラグラフ(a)にあげられた品目の文書またはパッケージの模倣
(c)サブパラグラフ(a)にあげられた品目の貼付け、巻付け、添付された、または貼付け、巻付け、添付されるようデザインされた違法なラベル

反映画盗撮については以下の通り。

各当事国は、著作権者または隣接権者の許諾なく、視聴覚記録装置を利用して、一般に公開されている映画上映施設において上映される映画またはその他の視聴覚作品、またはその一部のコピーを作成、または公共への送信を意図的に行った個人に対する刑事的手続きおよび適用される刑罰を定めなければならない。

2日目は、民事的エンフォースメント(第2回目)について議論された。

2008年11月 カナダ政府はACTA協議を再開し、それを現在進行中の扱いとした。マリー-ルーシー・モリーン国際貿易副大臣(当時: 現在はスティーブン・ハーバー首相の国家安全保障担当補佐官)は、ストックウェル・デイ国際貿易大臣に対し、「ACTA草案の公開に関して、ACTA交渉国間でのコンセンサスが取れていない。ACTAプロセスの不透明性を懸念するカナダ国内関係者の懸念を払拭するためにも、同省は早急に手を打つ必要がある。」と警告。

2008年12月 12月15-18日、フランス パリにて第4回交渉が開催(公式プレスリリースはこちら)。参加国は、オーストラリア、カナダ、EC、EU議長国(フランス)、日本、韓国、メキシコ、モロッコ、ニュージーランド、シンガポール、スイス、米国。カナダは、機構に関する取り決めの章の草案を提出。1日目午前中はこれについて議論された。午後には、刑事的エンフォースメントについて議論された(第1回は10月東京にて)。2日目午前は引き続き刑事的エンフォースメントについての議論、午後に入って機構の協力、エンフォースメントの実務について議論。

3日目はインターネット問題に焦点が当てられた。米国はインターネット問題の節の「準備ペーパー」と、参加各国に配った国内法の状況に関する質問の回答を提出。ペーパーでは、インターネット著作権規定、インターネットサービスプロバイダの責任、デジタルロック(訳注: DRMなど)の法的保護について議論され、賠償額の裁定、コンテンツのホスティング・保存に対する責任、米国のアプローチ(訳注: DMCA)を反映した反回避規定の範囲についての質問が提起された。

2009年3月 外務省、ACTAに関して初となる公開会合を開催。ACTAは主要国を排除した不公正な取引によってWIPOが国際社会において無力化されないことを目指していることが明言された。全ての当事国による初となる公式概要文書が公開(訳注: 経産省によるリリース)。

2009年6月 参加国によるACTA交渉継続のアナウンス。米国の政権交代により若干の遅れ。

2009年7月 7月16-17日、モロッコ ラバトにて、第7回会合が開催(公式プレスリリースはこちら)。主に国際協力、エンフォースメントの実務、機構の問題について議論。次回会合にてインターネット規定について議論することが決められた。

2009年11月 11月4-6日、韓国 ソウルにて、第6回会合が開催(公式プレスリリースはこちら)。主に、刑事規定とインターネット規定について議論。インターネット規定については、会合の前日にリークされた。米国の提案には以下の7つの提案が含まれていた。

パラグラフ 1 - 一般的義務  これらは、侵害の拡大を防ぐ迅速な措置としての「効果的エンフォースメント手続き」に重点を置く。この言い回しはTRIPs協定第41条に類似しているが、EUはこれが国際条約規定とは異なり、手続きが公平、公正 および/または適正でなければならないとは言及されていない点に注意している。言い換えれば、既存の条約におけるバランスを崩さんとするものとして注意している。

パラグラフ 2 - 第三者責任  第三者の責任既定は著作権を重視しているが、EUは、商標やその他の知財権侵害に拡張すべき(しなければならない)であると記している。 このセクションの目的は、一部加盟国が「著作権侵害の助長」と呼ぶ問題に関する最低限の国際的統一ルールを作り出すことにある。米国提案には、米国Grokster裁判において確立された「誘因(inducement)」が持ち込まれている。 こうしたルールは米国以外にはほとんど存在しない。これは多くの国々(カナダを含む)の国内法に大幅な変更をもたらすと考えられ、EUにおいても、現在のEU法の範囲を超えるものとなる。

パラグラフ 3 - 第三者責任の制限  このセクションは、前セクションで規定されたISPの責任においてセーフハーバールールが適用される条件について説明している。ここには、キャッシングなどの技術的プロセスの除外が含まれている。以前に報告されたように、ACTAはノーティス・アンド・テイクダウンを必須とすることを求めており、これはカナダ法の範囲を超えるものである(現行のEU法についても同様)。さらに、 ACTAは明らかにスリーストライク・アウトモデルへの道筋を念頭に置いている 。EUの文書では以下のようにある。

EU は、脚注6が、保護された対象の無許諾の保存、転送に対する合理的なポリシーの一例を提示するものと理解する。しかしながら、サブスクリプションまたはアカウントの剥奪の問題は、複数の加盟国で大きな議論を呼ぶ問題ともなっている。さらに、法廷の判断なしにサブスクリプションまたはアカウントを剥奪される 問題は、欧州理事会と欧州議会との電気通信パッケージ交渉においても懸念としてあげられている。

パラグラフ 4 - 反回避規定 ACTAは技術的保護手段の反回避規定(デジタル・ロックに対する法的保護)について民事および刑事上の罰則を求めている 。 EUは、これがインターネット関連WIPO条約の要件ならびに、「加盟国の合理的判断の余地を残す」とするEU法の範囲を超えるものであると明記してい る。さらにEUは、技術的保護手段の反回避規定と著作権の例外との関連について言及されていないことを強調している。米国の提案は、(複製よりはむしろ) 単にコンテンツへのアクセスを保護するだけのTPMについても反回避規定を適用することを求めている。これは、DVDのリージョンコードのような技術の回避に対する保護を含む現在のEU法の範囲すら超えるものである。また、これはカナダ国内法にはない。先ほども推測したが、国際的なDMCAを確立しようと していることは明らかである。

パラグラフ 5 - 反回避の民事、刑事エンフォースメント   このセクションは、反回避ルールにおける民事・刑事規定を求めるものとなっている。インターネット関連WIPO条約にこうした規定はない。反回避規定はさ らに、各国がインターオペラビリティ要件(たとえば消費者が購入した楽曲を異なるデバイスでも再生できるようにすること)を確立することを阻害するようデ ザインされてもいる。これについてEUは、「異なるシステムにおける相互互換性とインターオペラビリティが推奨されなければならない」とするEU法と矛盾 すると注意している。そもそもなぜACTAにこのような規定が盛り込まれるのか?と疑問に思うのも当然のことだろ う。

パラグラフ 6 - ライツマネジメント(権利管理)情報の保護  このセクションは、ライツ・マネジメント情報に関する民事・刑事規定についてのもの。

パラグラフ 7 - ライツマネジメント(権利管理)情報の保護の制限

2010年1月 1月26-29日、メキシコ グアダラハラで、第7回会合か開催予定。

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