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「違法ダウンロードで100万人以上が失業の可能性」?ウソこけ!

以下の文章は、TorrentFreakの「Bogus Piracy Report Misleads EU Legislators」という記事を翻訳したものである。ITMediaの記事「『違法ダウンロードで100万人以上が失業の可能性』――欧州調査」も合わせて読んでおくとおもしろいかもしれない。なお、文章中にでてくる「失われたセールス」というのは、違法ダウンロードが行なわれたために購入されなかった場合の損害、といったところ。

原典:TorrentFreak
原題:Bogus Piracy Report Misleads EU Legislators
著者:Ernesto
日付:March 18, 2010
ライセンス:CC by-sa

クリエイティブ産業の依頼を受けて行なわれた調査によると、海賊行為による失われたセールス(lost sales)は2015年までに2,400億ユーロに達し、120万人が仕事を失う可能性があるという。ロビイストたちは、情報の選択的使用やリサーチ・テクニックを駆使して、この結果をより強力なアンチパイラシー法につなげたいのだろう。

エンターテイメント産業は、ロビイング工作を有利に進めるために、調査や研究を委託するのはよく知られている。昨日、「デジタル・エコノミーの構築」なる調査報告書が発表された。この調査も、海賊行為が欧州クリエイティブ産業に与える影響を調査したものであるが、それに金を出していたのも当のエンターテイメント産業であった。

調査の結果は察しの通りエンターテイメント産業は壊滅的な打撃を受けるのだという。今から5年間のうちに、産業に従事する120万人が失業し、同時に失われたセールスも2,400億ユーロにまで激増するんだとか。この調査は即座に、BPIやIFPIなどのアンチパイラシー団体からの称賛を受けた。彼らはこの結果を政治的ロビイ活動に利用するのだろう。

この調査報告書を時間をかけてよく精査してみると、やはりそこにはこれらの乱暴な主張に繋がる推測や統計的なトリックが見つかる。そのいくつかをこれから議論してみよう。同じソースを用いても、エンターテイメント産業とは真逆の主張をすることができることもお見せしようじゃないか。

- 報告書では、インターネット・トラフィックの増加と失業との直接の相関があることが示唆されている。つまり、インターネット・トラフィックが増えれば増えるほど、より多くのお金が失われることになる。報告書によると、この相関係数は1、インターネット・トラフィックとパイラシーが全く同じ割合で増えていくと仮定しているのである。

- この報告書ではもう1つ、馬鹿げた仮定が行なわれている。トラフィックの増大は、パイラシーの増加を意味している、つまり損失も増えるのだ、という論法だ。しかし、人々がより高品質な(つまり、ファイルサイズのより大きな)ファイルを入手するようになるだろう、ということを説明できるものではない。予測は完全に帯域に基づいて行なわれており、海賊行為の件数に基づいてはいない。

- 報告書では、海賊行為がセールスを減少させることを示唆した学術論文をいくつか引用している。それとは真逆の影響、または無関連であることを報告した研究については、全く触れられていない。この報告書は結論ありきのバイアスがかかったものだということだろう。もし彼らが、ポジティブな影響を示す研究を引用していたら、今後数年間で仕事が激増したという結果になっていただろう。

- この報告書では、固定の置換率が用いられている。彼らは、10回のアルバムダウンロードにつき1回分が失われたセールスになると仮定しているが、予測されたパイラシーの増加に応じた調整を行なってはいない。消費者のエンターテイメントにかける費用に上限があることを考えると、パイラシーの増加に伴って置換率は下がると考えるのが当然なのだが。

- 上記の点に関連して、産業は2015年までに2,400億ユーロ以上の収益を失うとしているが、それは消費者の手元に別の使い道にあてられるお金が残るということでもある。そのお金の使い道によっては、エンターテイメント産業が失うという以上の職を送出する可能性もある。昨年、オランダ政府の委託調査によって示されたように、パイラシーは経済に対して全体としては、実はポジティブな影響をもたらすのかもしれない。

- さらに詳細を見ていくと、ますますおかしなところが見つかる。2008年の英国では、消費者はオーディオビジュアル機器に6,300億ユーロを費やしている。この傾向が続くのであれば、パイラシーによって「失われた」セールスは実際の収益を上回ることになる。つまり、音楽、映画産業は最終的に彼らの製品がパイレートされることに対して、消費者にお金を支払わなければならなくなる。

- 最後に、研究者たちはこの報告書をまとめるのに大変な苦労をしたのだろう。とはいえ、重要な図に致命的な間違いをしては全てが台無し。この図では、「file-sharing」と「global internet traffic」の棒が真逆になっている。報告書に載った他の統計についても懐疑的に見ざるをえない。

信じられないミス、研究上の問題などまだまだ指摘し尽くしてはいないが、キリがないのでこの辺にしておこう。残念なことに、多くの大手ニュースサイトは報告書を読むだけの時間を割けずにいるようで、このソースを精査することなしに、掲載された数字をそのまま伝えている。

英国海賊党やオープン・ライツ・グループ(Open Rights Group)は、この報告書の一方的かつ、プロパガンダ的な点を批判している。

オープン・ライツ・グループの事務局長ジム・キルロックは、「言論の自由、プライバシー、公正な裁判を受ける権利などへの侵害行為を正当化するための企業側のプロパガンダを気化されるのにはうんざりしています。」とこのレポートについてコメントしている。

英国海賊党の代表アンドリュー・ロビンソンは、「英国一世帯につき1,200ポンド(約17万円)の損害だなんて、あまりに馬鹿げていますよ。海賊行為のおかげで、その浮いた1,200ポンドが誰の手元に行くのかはわかりませんがね。」と語った。

とはいえ、エンターテイメント産業のロビイ活動は既に複数の欧州議会議員からの支持をとりつけており、より強力なアンチ・パイラシー法の導入を正当化するために、この報告書が利用されることだろう。政治家たちが、こうした誤解を狙った論理展開、インチキな数字を真に受けないことを祈らずにはいられない。

だから、海賊行為の影響はないんだよ、というわけにはならないんだが、この手の調査はハナっからこうしたバイアスがかかっている。だから、多少は手法などに難はあってもインパクトのある数字を、というのは往々にしてあるわけで。この報告書がそうだ、とは言い切れないものの、正直なところ指摘されている点については、結構初歩的というか、本人もわかっててやってるんじゃないの?というくらいの話でもある。

TorrentFreakの指摘もかなり辛辣だったり、強引だったりするところもあるけど、毒を喰らわば皿まで、ってところなんだろね。

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Comment

匿名希望 | URL | 2010.04.02 10:06
実は、意見の誘導って、論文で顕著ですよね。
どの分野でも、論文内では反対意見を記載しないのが一般的ですし。
まして、有意差ついてなくても、「可能性が示唆された」っていう魔法の言葉が使える。
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