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著作権とQWERTYキーボード:経路依存が狭める未来

以下の文章は、TorrentFreakの「Copyright Is Like QWERTY: Locked-In and Retrospective」という記事を翻訳したものである。

原典:TorrentFreak
原題:Copyright Is Like QWERTY: Locked-In and Retrospective
著者:Stefan Larsson
日付:April 24, 2011
ライセンス:CC BY

『経路依存』は、技術的標準の進展と、技術的標準がいかにして所与の技術的ソリューションを『ロックしてしまうか(lock in)』を説明する用語として、一般的に使われている。経路依存の例として、QWERTYキーボードがしばしば用いられるが、これはキーボードをより望ましく、効率的なソリューションに変えるためのコストが、変化を阻害しているためである。同様のことが、今日の著作権法制についても言える。プライバシーやその他の権利を犠牲にして。

QWERTYキーボードを製造、販売する企業が、現在の規格を変えたがらないのは当然のことである。標準規格を変更すれば、市場における優位性が損なわれる。同様に、著作権をどのようにして制御すべきかという法的ソリューションの多くも、経路依存となり、狭められている。

たとえ、もっと望ましいソリューションがあったとしても、著作権法は『コピー』され続ける。著作権に頼る産業は変化を嫌う。それまで持っていた権威や権力を失い、そして収益を失いかねないからである。こうした「経路依存」の最悪の結末は、万人のプライバシーを犠牲にして、著作権に関わる利害が維持されることである。

どうしてそうなってしまうのか

著作権の本質的な経路依存を把握するためには、広く、複雑な展開について理解しなければならない。ご存じのように、インターネット上の振る舞いと著作権による制限との間には、多くの矛盾がある。EUの「情報社会指令」がより多くの行為を違法化したことも、知財権執行に関する指令がインターネットユーザのプライバシーを弱めたことも、著作権侵害者に対するスリーストライク法が欧州各地で議論されていることも、いずれも強い傾向、すなわち『経路』が選択されていることを意味している。

法律は、さまざまな面で歴史を反映する。しかし、歴史的かつ時代遅れの概念や原則は、以降の法律の方向性を狭める経路を作り出す傾向にある。法律が、社会の重要な変化を捉えきれない過去のやり方に最適化されている場合、問題が生じる。たとえば、インターネットやデジタル化がそうだ。法律はしばしば、『新たな時代』に適応しうるオルタナティブを考慮できないほどにロックされる。

この点に関して、著作権は実に興味深い。結果として、社会的規範と法的規範との克服しがたい葛藤に終わっている。いやが上にも、この経路依存分析を重要なものとする。上述したように、欧州著作権政策の経路依存は、その保護によって利益を得る人々にとっての強い根拠として用いられる。

エンターテイメント産業は変化を嫌う。制度を社会に調和させることは、彼らの利益にはならず、よって産業はより厳格な著作権法を望む。著作権保護期間の更なる長期化、より強力な保護、著作権侵害を発見するための侵入的な手段を求める。彼らは、自分たちの独占のために戦っている。しかし、産業が実行力を有するに至った理由は、(訳註:現在の)法制度の確立や成熟が、インターネットが登場する以前になされたためであることを忘れてはならない。

いま、そこにある問題

こうした調和を欠く現実の法律は、様々な問題を抱えている。第一に、著作権の特別利益が、たとえばテロリズム対策法など、さまざまな他の領域にかかる法律と絡み合っていることがある。その結果苦しめられるのは、ファイル共有ユーザや著作権侵害者だけではない。万人のインターネットトラフィックが監視されることになる。

第二に、ISPなどの中立の仲介者が、著作権の抱える『葛藤』において、どちらにつくかを選ぶよう、標的にされてきていることがある。これに関する欧州の展開は、執行指令(Enforcemnet Directive)やテレコム改革パッケージ(Telecom Reform Package)に見ることができる。最近まで交渉が続けられてきた模造品・海賊版拡散防止条約(ACTA)も、同様のことが世界規模で生じた事例と言えよう。先日、欧州委員会が公表した報告書(PDF7ページ)では、「オンラインの知的財産権侵害」と効果的に戦うための法的措置ないし法律によらない措置は不十分であるとして、ISPはデータキャリアとしての責任を果たすべきであると結論づけられている。

第三に、ISPの役割が我々の知るインターネットの基盤に大きな影響をもたらすことがある。古い著作権の原則が、インターネットとは何かを定義するために用いられている。これは、著作権の発展が、広範囲にわたって、トレーサビリティやアクセシビリティ(ゲーテッド・コミュニティ)のみならず、大規模な監視に関する法執行の再構築を意味する。

全市民を対象にした監視の発達は、軽々しく扱える問題ではなく、精査されることなくして通過させてはならないものであることは理解しておかねばならない。

要約すると、著作権経路が再生産(コピー)され、様々な法的措置において強化されうる。欧州著作権の経路依存は、その維持により利益を得るものによって強力な根拠として用いられ、その背後に強固な権力構造があることを暗示する。その結果、著作権は、プライバシー権や場合によっては財産権などの他の権利よりも、優先されることになる。

著作権の経路依存は、利害関係者間の大きな不均衡に繋がる。エンターテイメント産業や著作権から利益を得る人々は、市民が何をして良いか、何をしてはいけないかを、広く定めることができ、著作権の利益は、万人のプライバシーを犠牲にして得られることになる。それが真に望ましいことであるのかどうか、私たちはよく考えなければならない。

--

ステファン・ラーションは、ランド大学サイバーノーム研究グループの法社会学者。最近では、The Pirate Bayのファイル共有調査プロジェクトを行っている。

ステファンがエジンバラ法科大学院のジャーナルScriptEdで発表した欧州著作権の経路依存に関する論文は、こちらで全文参照できる

議論のテーマに比して、文章が短いということもあってか、やや抽象的な感があるけれども、大筋としては同意したい。いまの状況を見て、著作権などいらないとは思わないけれども、結果としてパッチを当て続けることでしか対応できておらず、そのパッチも過去のあり方から、今の、これからのあり方を規定するかたちで当てられ続けている。

さらに、市民の声よりもロビイストの声の方が通りやすいというのもあって、プライバシーのような基本的な市民権が軽視される傾向もあるのかなと思ったり。

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