2007年04月18日
今年初め、Gartner社は、モバイル向け着メロ市場*1の推移および予測を含むレポートを発表した。以下にその概要を記す。
*1 ringtoneを着メロ、ringbacktoneを呼出音(呼出中に登録した音楽を流すサービス)、realtoneを着うたとする。着うたはSMEの登録商標であるけれども、ここでは便宜上用いることにする
2005年から2010年までのモバイル向けトータルセールスの推移および予測(単位:億ドル)
2005 |
2006 |
2007 |
2008 |
2009 |
2010 |
|
| 着うたおよび呼び出し音 | 17.37 |
30.07 |
65.88 |
122.88 |
195.82 |
260.92 |
| 単音および和音の着メロ | 43.80 |
60.44 |
71.32 |
69.18 |
65.73 |
61.12 |
この増加の原因としては、1つには自己表現の形態として定着していること、もう1つは携帯電話自体がミュージックプレーヤーとしての機能が充実してきたことによる。後者に関しては、フルトラックのダウンロードを促進しているようだ。
この状況は、特にアジア太平洋地域で強くみられ、現時点では北アメリカの2倍の約41%のシェアを占める。2010年までにはこのシェアを落とすことも予測されているが、それでも最大の消費地域のままであると予測されている。また、二番手としては西ヨーロッパ地域があり、こちらは2010年には91億ドルの売上が予測される。また、北米は71億ドル。
また、上記の表に見られるとおり、着メロの売上は2007年をピークに減少を続ける。これはこの市場の停滞を示すのではなく、着うたや呼出音への移行によるものであり、市場は依然成長を続けることが予測されている。現在でも、この着うたは「ドル箱」であり、北米では全体の65%、西ヨーロッパでは70%を占める。
さらに、モバイルでのフルトラックダウンロード(着うたフル)は、日本や韓国などで盛んで、増加傾向も著しい。一方、北米では逆の傾向が示されており、フルトラックのダウンロードではなく、PCからの転送(Sideload)が行われている。
また、ユーザ生成コンテンツは携帯電話向けにも存在し、携帯キャリアがデジタル権利の問題を回避するのに役立っている。
これまでも述べてきたとおり、人々が娯楽に費やせる額が飛躍的に増加することはありえない。同業者との競争もあるが、他のエンターテインメント産業との競争でもある。そして、このような音楽サービスの利用が進んだとき、最も影響を受けるのが他ならぬ音楽産業となるだろう。特にフルトラックのダウンロードの利用が本格化してくれば、その影響は避けられないと思われる。
日本での傾向を見てみよう。RIAJの発表している2006年度「音楽メディアユーザ実態調査」から以下にいくつかの表とグラフを引用する。

男女共に若い世代に非常に利用されている。中学生でも4割が着うたを2割が着うたフル・着モーションを利用している。高校生に至っては、男女合わせて7割以上が着うたを、着うたフルに至っては5割が利用している。

平均ダウンロード曲数を見ても、やはり若い世代が多い。中学生男子が突出しており、多少注意が必要な値だとは思うが、それでも非常に多くの曲をダウンロードしている。ちなみに、着うたは1曲105円から、着うたフルは1曲210〜420円である。平均すると、それぞれの利用者は半年で着メロ8.3曲、着うた9.9曲、着うたフル10.9曲をダウンロードしており、相当な額を費やしていることになる。
個人的に思うところとしては、中高生のお小遣いは飛躍的に増えるわけでもなく、そして自由になるわけでもなく、このような音楽への出費は別のコンテンツ購入に対して影響を及ぼすと考えられる(一部は親が支払いをしているかもしれないけれど)。そうなった場合、音楽の購入にかける金額がどの程度影響されるのかが気になるのだけれども、この調査からは読み取れなかった。
一部、近い項目はあったが、ダウンロードした着メロ、着うたと同じ曲を購入したかを聞いているだけであり、あまり当てにならない調査である。調査ではそれをもって、このようなサービスが購買を促進/抑制していると結論付けているわけではないが、お気に入りだからこそ着メロ、着うたとして購入しているのであり、着メロ、着うたを購入することが楽曲の購入を促進しているわけではないという方が妥当かと思われる。むしろ、1つの楽曲に何度もお金を支払うことが、他の楽曲の購入を抑制することにも繋がりかねない。むしろ、多くの楽曲を購入し、それによって音楽の幅や創造性を広げることのほうが、音楽産業全体の活性化に繋がると思うのだけれどね。

また、利用目的についての項目もあり、気になったところとしては着うたフルの「好きな曲を聴くため」という理由が突出していること。個人的には音楽はちゃんと聞きたいほうなので、携帯電話で聞きたいとは思わないけどなぁ。おそらくはこれらのサービスを利用している人達は、比較的ライトリスナーが大半なのだろうと推測できる。つか、ヘビーリスナーを満足させられるようなカタログはまず無理だろうしね。Todd Rundgren's UtopiaのUtopia Themeなんかがあれば利用したいけど。ちなみに
それはさておき、このような着メロ、着うた、着うたフルの利用者数の増加の背景には、携帯電話のパケット定額制の影響が強くある。 携帯だけでも基本料、通話料、パケット代とかかるところに着うたなどの有料サービスである。そりゃ、中高生はCD買うお金もないって。また、お気に入りの楽曲に対して、CDを購入し、これらのサービスを利用しで、またお金がなくなる。一部の曲から利益を上げるってんならそれでもいいのだろうけれど、それが音楽全体にとってどのような影響を及ぼすのだろうか。たぶん、B'zファンのような偏った人達を生むのだろう。
また、このような傾向が音楽配信サービスにも影響を及ぼすと思う。着メロ、着うたユーザに限った話じゃないってことでね。以下にRIAJの公表している2006年有料音楽配信実績を引用しよう。
| 2006年 有料音楽配信売上実績(年間) 単位 数量:千回 金額:百万円 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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この表で注目したいところは、インターネットダウンロード(所謂オンライン音楽配信サービス)におけるシングルトラックとアルバムの比率である。もちろん、アルバムに含まれている曲であっても、全ての曲がダウンロードされなければ、それぞれシングルトラックでの購入となるのだろうけれども、それでもこれまでシングルの販売枚数を大きく上回っていたアルバムのインパクトが低下していることが推測される(CD販売でのシングル:アルバム比はこちらを参照のこと)。
このような傾向は、今でも問題視されているし、今後音楽配信が普及するにつれて問題になってくると思われる。つまり、アルバムからのcherry-pick(つまみ食い)である。 これまでは選択肢がなかったがゆえに、疑問も考えもなくアルバムを購入してきた人達が、新たに選択肢を得て、自らの望むような利用が可能になる。そんな人たちの中には、これまでのアルバムという形態を抱き合わせ的な目で見るかもしれない。そうなれば、これまで音楽産業を支えてきたビジネスモデルが根底から揺らぐ可能性もある。
このような着うたの流行や、ダウンロードにおけるシングルの優位をみるにつけ、ここに音楽リスナーの現実があるのだと思えてならない。音楽配信は音楽業界の未来の一部だとポジティブに考えている人達もいるだろうけれど(IFPIの中の人とか)、音楽配信によって彼らが育て上げた音楽リスナーと向き合うことにもなる。彼らの戦略が作り上げたのは、単なるCherry-Pickerでしかないのかもしれない。それはそれで売ることだけを考えてきたツケを支払うだけのことでもあるのだけれどね。Appleなんかは、コンプリートオプションとかいうのを導入して、アルバムの購入を促しているみたいだけれども、どこまで効果があるかは微妙だなぁ。
まぁ、そんなチェリーピッカーのような人達が着メロ、着うたの利益を支えているのだから、音楽業界は彼らと付き合い、彼らに支えてもらい続けなければならないのだろう。こんな記事を見てそう思ったわけで。くだらん。



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