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デジタル時代の私的複製を考える:低迷の原因を考えず、どうしたら搾り取れるかを考える音楽産業

JASRACが2006年度の事業報告説明会を開催し、著作権使用料の徴収額について報告しているよ、というお話。まぁ、内容を見るまでもなく、衰退しているのは明らかなのだけれども、そこでの報告では、音楽産業の衰退をどうするかではなく、現状でどこからさらに搾り取れるか、ということが主張されたようだ。結局のところ、音楽ファンから絞りとるのではなく、音楽の利用を拡大、促進することで利益を上げなければジリ貧にしかならないのだけれども、それを理解できる頭はないようだ。具体的にはiPodをはじめとする携帯音楽プレーヤーへの私的複製補償金の課金と、著作権保護期間の70年への延長を主張している。

原典:InternetWatch
原題:2006年度の音楽著作権使用料は1,110億円、CD低迷で減少~JASRAC  iPod課金の必要性や著作権保護期間延長を訴える
著者:増田 覚
日付:2007/05/16
URL:http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/05/16/15724.html

JASRACの2006年度事業報告説明会によると、同年度の音楽著作権使用料の徴収学派1,110億9,800万円で、前年から24億9,100万円(2.4%)減であった。JASRACの加藤衛常任理事によると、コレは音楽CDなどのオーディオディスク分野が伸び悩んでいることを最大の原因としてあげており、今年度の徴収額も減少傾向にあることを予測している。

  • オーディオディスク部門(CDなど):242億5,200億円(前年比6.9%減)
  • ビデオグラム部門(音楽DVDなど):142億2,200万円(前年比3.2%減)
  • インタラクティブ部門(着うたなど):76億9,900万円(前年比16.4%減)

だそうで。注釈を入れるとすると、インタラクティブ部門では、着うた、着うたフルが増加している一方で、徴収額の半分を占める着メロが前年比46%減。まぁ、これも着うた、着うたフルへの移行を考えると当然かと。また、Napsterなどの定額音楽配信サービスはこの内訳には含まれていない。この部門については、大幅な減少を示しているように見えて、実際には着実に成長著しいと見ているようだ。

  • 私的録音補償金分野:39億円(前年比22.8%減)
  • 私的録画補償金分野:25億6,000万円(前年比8.5%)

これについては、iPod等携帯音楽プレーヤーが対象になっていないことを問題視している。JASRAC泉川昇樹専務理事によると、仮にこれらが私的複製補償金の対象になった場合、「1曲あたり8.5円」で携帯音楽プレーヤー1台あたりの平均収録楽曲数から算出すると約110億円になるのだという。これに対して、泉川は以下のように発言している。

「私的録音録画補償金による徴収額は、ドイツでは233億3,000万円、フランスでは266億3,200万円。両国ではiPodの類が補償金制度の対象になっていることから考えると、補償金対象の範囲の違いによって、日本との徴収額の差が出ているといえる。日本では、肝心の携帯音楽プレーヤーが補償金制度の対象外で、補償金制度は機能不全の状態。諸外国の現状を踏まえると、日本も携帯音楽プレーヤーを補償金対象として、補償金のレベルも調和を図るべき。」

おそらくわかっていて発言しているのだろうけれど、もはや諸外国もそうしている、以外の理由がないんじゃなかろうか。そもそも私的複製補償金の対象とするにしても、そもそも携帯音楽プレーヤー自体が、1次的に音楽を再生する媒体となるということが起こりうるわけで、それを指して私的複製というのはあまりにおかしい。それが妥当であるなら、CDに私的複製補償金をかけているようなものだろう。オリジナルがあってこその複製なのだけれども、この場合の、「携帯音楽プレーヤーで再生される楽曲のオリジナル」はどこにあるのか、について言及されることはない。

もはや私的複製補償金などというもの自体が、ナンセンスで自己矛盾をはらんでいるのかもしれない。そもそもデジタル配信自体が媒体を定めないデータの購入であることを考えると、全ての行為が複製とみなすことができる。しかし、その複製もDRMによって制限されているわけである。全く複製ができないわけではないが、その複製は彼らの定める範囲内に限定される。

しかし、その「複製の範囲」はユーザが購入したライセンスだともいえないだろうか。そもそも、デジタル配信で購入した楽曲は、そのような意図で購入されることも無視できるほど少なくはないわけで。そう考えると、たとえばiTSで購入した楽曲をiPodに転送するまでは私的複製にならないのではないかとすら思える。

と考えを進めていくと、デジタル時代の私的複製とは何か、というところにたどり着く。私個人の考えでは、DRM等の技術で複製が制限されている範囲外への複製こそ、私的複製ではないかと考える。このように考えてしまうのも、現時点でDRMによって私的複製が制限されているわけで、その上で私的複製に課金するなどということは、あまりに感覚がずれているとしか思えないのだ。我々の許す範囲でだけ私的複製を許可する、その代わり金はもらう、でも我々の許可する範囲外であれば、私的複製であっても許さない、ではあまりにご都合主義もいいところだろう。

まぁ、彼らが私的複製補償金にこだわりたいのも無理はない。このやり方によって、ユーザに気づかれることなく、そして不可避な方法で利益を上げることができるのだから。それは実態を把握できないからこそ、一律の課金が可能だったわけだ。そう、その時点で問題があったのである。要は、ある私的複製補償金のかけられている媒体を購入した人が、それを私的複製に利用しなかった場合、いわば不当にその人から私的複製補償金を徴収したということになる。ただ、個々の実態を把握できないからこそ、それが許されてきた部分があるのだろう。

しかし、今はデジタルなご時勢である。私的複製の実態を完全に把握することは不可能にしても、それを把握する可能性は出てきたのである。転送時に課金する、そうした制度だって可能になりつつある。しかし、彼らはそれが可能になったとしても、そうしたいとは思わないだろう。それはユーザに気づかれてしまうから。できるだけこっそり掠め取りたい、それが本心だろう。しかし、それはあまりにフェアではない。

ここまではデジタル音楽配信を中心に話を進めてきたけれど(もちろん、それ以外でも通じる話もあるが)、CDの私的複製に関して言えば、当てはまらない部分も出てくるかもしれない。しかし、これまで考えてきたように、我々の環境のデジタル化が著しく、私的複製の範囲が曖昧になりつつある今(少なくとも私の中では)、本当に私的複製補償金が必要であるかどうかをもう一度考えてみるべきだろう。

さて、ここまで私的複製に重点を置いてみてきたけれども、話を最初に戻そう。JASRACの報告によると、2006年度の音楽著作権使用料の徴収額が減少しており、その傾向は今後も続くと予測している。しかし、これまでの流れを見るにつけ、その減少するであろう徴収額をどこから補うことができるかという皮算用はしても、いかにして音楽を人々の手元に届けるという音楽ビジネスの基本に立ち返って省みてはいない。もちろん、この減少の最大の原因を音楽CD等オーディオディスク分野の伸び悩みだとしているが、であればそれをどうするのか、どう捉えるのかについて考えるべきだろう。

原因の1つには、メディアシフトによるものも考えられる。音楽CDの購入から、音楽配信からの購入が進めば、一時的には相当な打撃を受けることになる。それは、これまで何もしなくてもアルバムであれば抱き合わせで12曲程度販売できたものが、リスナーが自己選択できるようになったのだ。アルバムのつまみ食い(Cherry Pick)といってもいい。音楽配信の普及が進むにつれてアルバムという虎の子を失うことになる。

もう1つの原因としては、音楽CDにかけられる金額が減少しているということもあるだろう。以前の状況と大きく異なることとして、携帯電話のパケット代の定額サービスの利用者が増えており、人々は月にCD1.5枚分以上の出費があるといっていいだろう。少なくとも、娯楽の分野で確定した出費が消費者にあるのである。そうなれば、よりお金がかけられなくなるのも道理だろう。

私が考える最後の要因、そして最大の原因は人々が音楽自体に魅力を感じなくなったことだろう。特に利益の大半を占めるドメスティックなアーティストの劣化は著しく(まぁ、劣化すらしえないほどに酷いかもしれないけど)、また万人にとって魅力的なアーティストも限られている。さらに言えば、コアな音楽ファンがレコメンドしたくなるようなアーティストもそれほどいない。いたとしても(実際には少数ながら要るけど)、そんな彼らを商業ラインに乗せようという気もないのだろう。

もちろん、これは著作権管理団体であるJASRACの事業報告なのだから、音楽業界自体の改善を提案するというのも、それはそれで違うのだろうけれど、とはいえ、音楽業界全体を考えても、音楽市場の衰退を何とかしようというときには、JASRACのように単純に権利ビジネスから考えてしまうという傾向が感じられる。それこそが、音楽の衰退をもたらす全ての根源であると思うのだけれどもね。著作権は文化の保護に必要なものであるけれども、著作権ビジネスは文化を破壊する可能性があるということを、よく考えるべきときなのかもしれない。

私的複製補償金の拡大、著作権保護期間の20年延長、もしそれが成功すれば、一時的には収益は増えるのかもしれない。しかし、まだ搾取できる部分があるうちはそれでいい。でも、それすらなくなったら?ということを考えやしないのだろうか。

この記事には、JASRACによる著作権保護期間の延長の主張もあわせて紹介されており、それについては次エントリで考えてみたい。考えてみたいといっても、まともに考えられるほどに論理性があるわけでもないが。

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