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『なぜRIAAは非難されるのか』:RIAAとP2Pファイル共有訴訟のこれまで

RIAA RIAAはこれまで、数多くの人達を法廷に引きずり出し、潤沢な資金、優秀な弁護士チーム、そしてそれを専門に仕事とする人達のマンパワーを背景にして市民を合法的に脅迫してきたという印象を持っている。彼らのターゲットとなったごく普通の市民は、大企業に抵抗しうるだけの資金を持ちえず、弁護士を一人雇うだけで精一杯であり、しかも優秀な弁護士など雇えず、そして生活のために費やさなければならない時間を削り取られる。RIAAは人々が彼らがちらつかせる訴訟にあがなえないことを知りながら、それを元に人々を脅迫し、和解に持ち込ませる戦略をとり続けてきた。そう、たとえそれが誤認に基づくものであっても、その訴訟の恐怖から人々は和解を選択せざるを得ないケースも多々あったと見られている。また、たとえ誤認に基づかないものであったとしても、倫理的な観点から批判されることも多い。今回は、RIAAが続けている訴訟と、それに対する批判を見てみるよというお話。かなり長いお話になりますが、RIAAを批判する上で、必要不可欠な事実であり現実でもあるのです。この問題に興味のある方には、是非とも最後まで読んでいただきたいと思います。

まず、RIAAがP2Pファイル共有ユーザを相手取った最初の大きな動きとしては、2003年9月8日のKazaaユーザ261名の一斉提訴だろう。その後も2003年10月30日にはさらに80名2004年2月17日には531名2004年6月22日には482名2004年10月28日には750名と、Kazaaにユーザに対して行われた訴訟も、最初の1年だけでかなりの数に上る*1。RIAAによれば、これらのユーザは度を越した利用のために、訴えられることになったのだという。

これらの訴訟は、ほぼ間違いなく、訴訟によって白黒つけてやる、という目的ではなく、単に和解を求めるためだけのフェイクな訴訟であると考えられ る。まぁ、裁判という手段を用いること自体は間違いない。しかし、証拠がさほど明確にあるわけでもなく(そのために数多くの人が自分がファイル共有を行っ たわけでもないのに訴えられている)、裁判を闘うことへの恐怖、という状況の力によって人々を脅迫するという行為に至っては、それほど許されるべきではな い手法であるといえる。要は、RIAAとの訴訟を避けたい、という人々に和解を強制することの是非である。

RIAAが2003年9月8日に始まる訴訟キャンペーンにおいて、まずはじめに批判が集中したのは、初の和解相手である12歳の少女への訴訟であった。これは、訴訟によって和解を強制させる手法の有効性と、あまりに分別のないRIAAのやり方に対する非難を生み出すことになった。当時のRIAAのCEO、Mitch Bainwolは以下のように述べている*2

RIAAのチーフエグゼクティブMitch Bainwolは、声明の中で「我々は強いメッセージを送ろうとしている。PtoPのファイル交換に加わった人物の名前は特定できる。また、著作権で保護 された音楽を違法に配布することは、社会的に重大な問題だ」と語った。「今回の一件が示すように、親は自分の子供がコンピュータで何をしているのかを認識 しておく必要がある」(Bainwol)

この発言に対しては、確かに親が子供のPC利用状況を把握することの重要性は理解できるものの、それを強要するために子供を訴訟に巻き込むという倫理観の欠如を非難されることにもなった。

その数日後、当時、脂の乗り切っていた(そして、その後終焉を迎えることになる)P2Pファイル共有業界団体P2P United(Grokster、StreamCast Networks、Limewireなどによって構成される)は、この少女に代わって補償を申し出た母親に対して、その和解金を肩代わりすることを表明している*3

P2P Unitedの事務局長、Adam Eisgrauは、「著作権侵害を大目に見るわけではないが、財務的にも政治的にも膨大な資源を有する多国籍企業が、低所得者向けの公営住宅に住む12才 の少女とその家族の腕を捻り挙げて、彼らからお金を出させるという、今回の悲しいエピソードが伝えているようなやり方を許すシステムに対して、皆の関心を 集めるためにも、誰かがどこかで線引きをしなくてはならない」と語った。

しかし、現在に至っても、RIAAがこのような分別のない訴訟を繰り返していることはご承知の通り。Santangelo親子のケースでも、当初は子供たちの親を相手取って訴訟を行っていたが、それに失敗すると、その子供たちをターゲットに している(それも米国における訴訟制度を悪用して、子供たちの賠償責任を認めさせている)。また、Tanya Andersenのケースでは、1400曲分の違法共有について、1曲につき750ドルの損害賠償を請求されている(Tanyaは障害を持ち、社会保障障 害年金で生活している)。当初はTanyaを訴えていたものの、彼女がそれを認めないために、彼女の娘(当時7歳)が違法ダウンロードしていたかどうか はっきりさせるため、その当人である娘(当時7歳、現在10歳)を法廷で宣誓証言させろ、 と要求している。。当時7歳の子供がファイル共有を行っていたのではないか、法廷に呼び出せ、と言うとんでもない主張をRIAAがしている背景には、ファ イル共有を認めないTanyaに、暗に-子供を守りたいなら違法共有を認め、和解に応じろ-ということを要求しているとも解釈できる。

また、このような倫理的な欠如による批判以外にも、彼らの証拠収集やそれを基にした個人の特定手法にも批判がなされている。

はじめに、RIAAによるKazaaユーザ一斉訴訟キャンペーンにおいて、その問題が露呈したのは、ボストン在住の老婦人Sarah Wardに対して起こした訴訟である*4。 確かに、彼女は老婦人とはいえPCユーザであった。しかし、彼女の利用していたPCはKazaaを利用することのできないMacintoshであった(当時Mac版のFastTrackクライアントは存在していなかった)。RIAAはこれに対して、以下のように述べている。

これに対して、RIAAは、Wardが使用したISPのアカウントを割り出す際に間違いを犯したとは考えていないが、差し当たりこの訴訟を取り下げることにしたと、同協会の広報担当者は述べている。

「我々は可能な限り注意深くことを進めており、この件に関しては"疑わしきは罰せず"という道を選んだ。信頼に足る論証があれば、訴えを取り下げた上で、後に改めて質問を行う」(RIAA広報担当のAmy Weiss。)

と、彼らの行っている調査手法には誤りはなく、そして誤りを認めるわけではないが、訴訟は取り下げる、というスタンスである。RIAAは、 このKazaaユーザを対象としてこれらの訴訟は、「度を越した」ユーザをターゲットにしたと表明していた。しかし、その結果がこれである。

Wardに対する訴訟は、RIAAを批判する者たちが声高に主張する懸念を浮き彫りにしている。批判者らは、 RIAAがファイル交換ユーザー追求の過程で、そのうち無実のコンピュータユーザーを捕まえることになるだろうと、前々から予想していた。今回の事件が RIAAの法的取り組みにすぐさまダメージを与えることにはならないだろうが、しかしそれがRIAAの捜査手続きに対する信頼性に疑問を投げかけることに なったと、複数の弁護士が述べている。

Wardに対する訴訟は2週間前に起こされたものだ。RIAAはこの時、「度を外れた」ファイル交換利用者と同協会が見なした、合わせて261人のコン ピュータユーザーを相手取り、著作権侵害訴訟を起こした。だが、RIAAが描くファイル交換利用者のステレオタイプとはかけ離れたユーザーたちの話が、そ の後すぐに明らかになった。そのなかには、ニューヨークの低所得者向け公共住宅に暮らすBrianna Laharaっという名の12歳の少女や、テキサスで暮らす72歳になる老人のものも含まれていた。

Wardの弁護を勤めるEFFの弁護士、Cindy Cohnは以下のようにRIAAを非難している。

「Wardと電話で一言話せば、彼女がファイル交換をするような人間ではないと誰でもわかるだろう。RIAAが果敢に進める撲滅運動とやらが、いかに見境のないものであるかが、これでよくわかった」(Cohn)

さらに2週間後、新たにRIAAの誤認によって、誤った訴訟が行われていたことが明らかになった*5。誤ってRIAAの毒牙にかけられそうになった Ross Plankは以下のように語っている。

「インターネット・コンサルティング会社を軌道に乗せようとしているときだし、結婚も控えている。こんなことに関わっている場合ではない」とプランクさんは言う。

さらにプランクさんは、RIAAの「暴力団が使うような脅しの手口」を強く非難した。

「RIAAのような大きな組織が、高額な報酬を取る弁護士を雇って追いかけてきたら、やましいところがあってもなくても誰だって恐ろしくなるだろう」とプランクさん。

RIAAはISPに対してDMCAに基づいた召喚状を要求し、それによって得られた氏名、住所を提出させているのだけれども、 その手続きの中で誤りが存在することが明らかになった事例でもある。RIAAが誤ったのか、それともISPが誤ったのかは不明だが、それでもこの手法は誤 認の可能性を否定し得ないものであることが明らかになった。RIAAは未だになぜこのような誤りが生じたのかを明らかにはしていない。

現在、Recording Industry vs The Peopleというブログを立ち上げ、RIAAによる市民への訴訟を市民側にたって援護しているRay Beckermanは、以下のように語っている*7

「私の印象では、訴えられた人の大多数は無実だ。」

「実に腹立たしいのは、彼らの、あの嫌がらせのようなやり方だ。弱い者いじめは気に入らない。」

「(被告が)弁護人を雇う前に『和解支援センター』と話をすると、刑事告発や、信用の失墜、氏名の公表といった展開がありうると脅される。」

現在、彼のブログは、このようなRIAAのやり方が、市民を脅迫している、そしてその中には多数の無実の人達が含まれているということが、動機づけとなっているのだろう。また、Andersenの弁護を引き受けているLory R. Lybeck弁護士は、

「(RIAAは)『わざわざ調査をするほどあなたに手間をかけてはいられない』と言う」

「たとえ……向こうの過ちであっても、RIAAは謝罪する気も、調査する気もない――もう一度訴えるだけだ」

とRIAAを非難する*6。これらは、ファイル共有ユーザとされた側の人達から批判ではあるが、それでも現状を考えると、妥当な批判だと考えられる。RIAAはその強大な経済力、弁護能力、それに費やせる時間を背景に人々を脅し、それによって和解を引き出している。

一事が万事、RIAAは、私が記憶している限りでは、この手の訴訟に関して、たとえ誤認や行き過ぎがあったとしても、それを謝罪したことはない。そ れは既になくなっている人を違法ファイル共有ユーザだとして訴えたケースでもそう。これは正確にはその遺族を訴えているのだけれども、これに関しても数多 くの批判を浴びた。しかし、振り上げた拳をただでおろすわけにはいかないRIAAは、その落としどころとして、「我々の思いやりの深さから、この訴訟に関 わる和解の申し出を一時的に停止することに決めました。」という*8。決して、彼らの判断が間違っていた、とはいわない。(追記:訴訟ではなく、それ以外の手続き(DMCA通知)において、明らかな誤りが存在したときには、RIAAは謝罪をしている。)

また、彼らの主張する、損害額の算出方法についても、批判されている。米国著作権法では、著作権侵害につき750ドルから15万ドルの損害賠償を求 めることを認めている。RIAAはこれに基づいて、これらのファイル共有訴訟において、1曲ごとに著作権侵害がなされているとみなし、当該のユーザがリス トしている楽曲の数×750ドルという計算方法をもって、損害賠償額を算出している。たとえば、500曲共有していたとみなされたユーザには、 37,500ドル(約465万円)を請求する、といったように。さらに、この750ドルというのは下限であり、彼らは最高で1曲15万ドルの損害賠償請求 が可能であると主張したことすらある(とはいえ、確か15万ドルの請求は、当事者が商用目的に利用した場合だったと記憶しているが)。

このような、損害賠償額の算出についても、実態とはかけ離れすぎているとして批判されている*9。 実際に、この額と同様の損害を与えたのだとすると、膨大な数の転送が行われていなければならない。1曲99セント、その利益を約70セントとしたときに、 1,071回の転送が行われていなければこの額(750ドル)には達しない。500曲共有していたとすれば、53万5500回の転送。1曲5MBとする と、2.6TBもの転送を行っていたことになる。確かに、法律に則って算出されてはいる。しかし、それが現実にマッチしているかと問われれば、まったく もってそれは妥当とはいえない。ともすれば、民事訴訟に懲罰的な色合いをもたらす可能性だってある。なぜなら、現実に音楽産業はそこまでの損害を受けてい ないにもかかわらず、損害以上の額を請求しているのだから。

またこれに関して、RIAAが被った損害は、KazaaがRIAAに支払った和解金によって完全に補償されているはずだと主張されてもいる*10。さらに、この主張では、1曲につき750ドルの損害賠償を請求するのは憲法違反であり、損害の回復という観点からすれば、1曲につき得られていたであろう利益(70セント)の4倍の2.80ドルに制限されるべきである、とされている。この意見には非常に同意したい。

さて、ここまで述べれば、なぜ私がRIAAを批判的に見ているか、お分かりいただけただろう。確かにRIAAが違法ファイル共有ユーザに対 して、損害賠償を請求すること自体は否定しない。しかし、それが、正しく手法を用いて当該のユーザを正確に特定し、かつそのユーザへの訴訟が倫理的に妥当 であり、さらに請求される賠償金額が正しく損害額を反映しているとみなされる限りにおいて、である。現在のところ、RIAAはそれを満たしているとは思い がたい。そして、現在のような、妥当性にかけるやり方を進めることで、経済的、社会的理由によって、反論することすら許されない人達が不当に和解を結ばざ るを得ない状況に陥っているというのも、事実としてあるのだ。

ただし、思い違いをしてほしくないのは、全ての人たちがこのような不当なやり方の犠牲者というわけではないことだ。ここで挙げられた事例 がKazaaに関わる訴訟の中での一部に過ぎないことを留意してほしい。中には、Kazaaのヘビーユーザで、『度を越した』著作権侵害を引き起こした人 達もいただろう。その人達を擁護するつもりはない(ただし、その賠償金額の算出に関してはRIAA側の主張は不当だと感じているが)。

もちろん、一定の海賊行為はイノベーションの起爆剤ともなりうるとは考えている。そういった意味では、必要悪の一部だとも考えているが、しかし、それは社会に受容されるべき類のものではない。その行為に対する責任は全うすべきだろう。

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Comment

匿名のPeerさん | URL | 2007.07.12 10:15
よくまとまっていて参考になりました。
ありがとうございました。
heatwave | URL | 2007.07.12 23:44 | Edit
匿名様

コメントありがとうございます。

実は、まだまだ書き足りないことが山ほどありまして・・・。
(大学生に対する法的手続きを踏まない和解戦略など)
この問題ですら、氷山の一角なんですよね・・・。

このころの記事は当時のHotWiredに数多く掲載されていますので、
興味があれば、是非他にも調べてみてくださいね。
nobu | URL | 2007.10.25 14:21
大変参考になりました。マッカーシズムを連想しました。
nameless | URL | 2008.02.13 13:47
この問題がテレビでまったく放送されないのはどうしてでしょうか
こんなにも大きなことなのに

ひょっとして、知られるとまずいことなんですかね
匿名のPeerさん | URL | 2010.02.26 22:21
勉強になるなぁ
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