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欧州:ISPへの違法ファイル共有ユーザ特定要請は認められない?

EUスペインの音楽産業協会Promusicaeが、欧州司法裁判所においてスペインISPのTelefonicaに対して起こしていた違法ファイル共有ユーザの個人情報の開示を求めていた裁判で、欧州司法裁判所の法務官(裁判におけるアドバイザー)は、民事訴訟における個人データの提出は、EU法においては認められないという勧告を行っているよ、というお話。裁判官の多く(80%)はこの勧告を支持しており、判決は今年の後半に下されるようだ。一部では、これがファイル共有ユーザの勝利だ!と主張されているのだけれども、果たしてそうなのかどうかを考えてみたい。

原典:Slyck.com
原題:European File-Sharers May Find Identities Safe
著者:Thomas Mennecke
日付:July 18, 2007
URL:http://www.slyck.com/news.php?story=1542

欧州のファイル共有ユーザ、少なくともEU圏内の国に住むファイル共有ユーザは、権力者に対する勝利のときを迎えてようとしている。法務官Juliane Kokottは、スペインの著作物トラフィック監視団体Promusicaeが、著作権侵害容疑がかけられたP2Pユーザの身元を特定することを認めない、という彼女の意見を欧州司法裁判所に提出した。

Promisicaeは、Kazaa P2Pプラットフォームを利用していたアップローダーに圧力をかけ、一方で、スペインのISP Telefonicaに、ユーザの個人情報を開示するよう強要した。Telephonicaは、ユーザの個人情報を明かすことを拒否した。現在、その抵抗が成果を挙げたようである。

欧州司法裁判所に対するJuliane Kokott法務官の勧告は、強制力を持つものではない。しかし、それは強い影響を及ぼす。実際、欧州裁判所における判断の圧倒的多数は、法務官の勧告に従うものであった。今回のケースでJuliane Kokottは、これが民事の問題であり刑事ではないため、Promusicaeが侵害容疑者の個人情報を得ることができないということは、欧州法と矛盾がない、と忠告した。

欧州司法裁判所がKokottの勧告に従うのであれば、これは、EU全体の著作権当局に影響を及ぼすことになる。彼らの大多数の訴訟が民事であることを考えると、Promusicaeのような団体は、侵害容疑をかけられたファイル共有ユーザを追跡することがひどく難しくなるだろう。

このような欧州司法裁判所の判決をファイル共有ユーザの勝利とするのも理由があって、欧州司法裁判所の決定はEU圏内での最高裁判所に値し、その判決はEU圏内における統一的な法の解釈とされるため、のようだ(参考:wikipedia)。まぁ、EU圏内の法体系についてはあんまりよく知らないので、どこまで拘束力のある判決なのかは判断しかねるけど・・・。

上記のSlyck.comの記事と同様に、多くのP2Pファイル共有ニュースサイトが一斉にこのニュースをトピックにしている。

多くのブログが、このSlyck.comと同じように、この判決(の見込み)は欧州P2Pファイル共有ユーザの勝利だ、と考えているのだけれども、P2P Blogの考えはこれとは異なる。そして、この考えは私の考えに近い。

つまり、今回のこの勧告は、「民事訴訟において、個人情報をISPに提出させることを認めない」、というものであり、このことは刑事訴訟には当てはまらない。そして、刑事訴訟も実際に行われているのである。確かに、これまでライツホルダーは民事訴訟を好んで行ってきた。これは、単純に和解に持ち込むことが用意であったためである(だからこそ、気軽に、明確な証拠がなくても訴えてきたという部分もあるのだが)。

一方で、その訴えられた人たちは、戦うことよりも、和解することを望む傾向が強い。これは実際の訴訟の内容如何にかかわらず、訴訟に直面するという事実のみによって、和解を強要されたという部分が強い。私はこれまでに幾度もそれを批判してきた。そして、その中で私が擁護してきたのは、本当は争いたいのだけれども経済的、時間的、社会的な余裕が存在しないために泣き寝入りさせられてきた人たち、そうなりそうだった人たちである。実際に違法なファイル共有を行い、それによって訴えられてきた人に関しては、それほど擁護してきたつもりはない(ただし、私の主張の範囲内に、違法ファイル共有ユーザが含まれる部分もあったことは認めるが)。

今回の件、確かに民事訴訟では個人情報は保護されることになったが、そうなれば著作権団体の戦略は、必然的に民事ではなく刑事でのアクションに移行することになる。この移行に関わる2つのことを考えてみる。

1つは、刑事手続きによって冤罪や、曖昧な訴訟が(これまでに比べると)避けられるだろうということ。RIAAを始めとするP2Pファイル共有ユーザに対する訴訟では、実際の被告を断定しないまま、見切り発車で訴訟を開始し、その後につじつまが合わなくなっても、無理やりに負けを認めさせようとしてきたという部分がある(もちろん、今回の件はEC内だけの話のなのでRIAAには影響しないが)。完全にそれがなくなるとも言いがたいが、それでもそのような訴訟は確実に減ることは間違いない。これはなかなかいいことだと思う。

もう1つは、これによって、P2Pファイル共有ネットワーク上での明確な著作権侵害の証拠を握られたユーザは、刑事手続きによって処罰されることになる、ということ。まぁ、当然その後には民事訴訟が待っている。となると、和解だけで済んでいた以前のほうがまだよかった・・・なんてことになりかねなかったりもする(逆に、冤罪で訴えられた場合の災難がこれまで以上に深刻にもなるのだが)。

また、それ以外の点について、P2P BlogのJankoが指摘しているように、ドイツでは数多くの刑事訴訟が、民事訴訟を起こすための個人情報を得る目的で起こされており、たとえ民事訴訟において個人情報をISPから得られなくなったとしても、別の方法が存在する、ということもある。結局のところ、EU内でもこのような戦略が可能な地域においては、民事訴訟だけではない方法で、ユーザの個人情報を取得することができるのである。

さらに、P2P Blogでは、他のブログにおいて、欧州圏のファイル共有ユーザの未来が明るいとしていることに対して、欧州評議会でのEU著作権管理の最近の動向をあげている。これは、商業的な海賊行為とファイル共有ユーザを同列に扱い、ファイル共有ユーザに対する罰則をより厳しい商業海賊行為に合わせようとしている動きであり、欧州のファイル共有の未来は必ずしもよい方向には向かってはいない、と指摘している。確かにそうなんだよねぇ。

個人的には、全ての違法ファイル共有ユーザが著作権侵害の罪で訴えられるべきだ!などと極端なことは思わないけれど、それでも著作権侵害をしても全く訴えられない、というのも社会として不健全かなと思う。もちろん、過剰なまでにファイル共有ユーザを追い詰めたり、善良な市民を誤って訴えたり、はたまた、刑事訴訟を悪用してユーザの個人情報を取得したり、というのも、不健全なんだけどね。お互いに毒を食らわば皿まで、毒を持って毒を制す、の状態になっているのかもしれない。

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