スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ブートレグとアーティストと著作権と

Bootleg: The Secret History of the Other Recording Industry ブートレグ、直訳すると海賊盤なのだけれども多くの場合、この言葉が指すものは、アーティストのライブのオーディエンスの隠し撮りやサウンドボードからの流出、スタジオレコーディングの際のアウトテイクなど、コアなファン向けのコレクターアイテムである。一部のアーティストはそのようなライブの録音を嫌うが、一部のアーティストはそれを称賛する。確かに、著作権者の許諾を得ずにそのコピーが流布することになるた、著作権侵害となるケースがほとんどなのだが、それを聞くことでライブへの欲求が高まったり、アーティストへの関心が高められたりすることもあり、それはアーティストの利益に繋がっている部分もある。今回は、アーティストとブートレグについてのお話。

原典:570News
原題:New technology allows music lovers to gorge on bootleg concert recordings
著者:STEVE LAMBERT
日付:July 11, 2007
URL:http://www.570news.com/news/entertainment/
article.jsp?content=e071132A

シンガーソングライターのSerena Ryderは、彼女のライブパフォーマンスを大胆にも無許可でブートレグ(録音)しているファンを最初に捕まえたとき、それは懸念からではなく、好奇心からであったという。

その観客は、マイクを彼の帽子につけ、そこからTシャツの内側にコードを通して、隠し持った録音デバイスに接続していたようだ、と彼女はいう。「パフォーマンスを終えて(販売)ブースに来てみたら、まさにその彼がそこにいたの。」とRyder(オンタリオ州ミルブルック出身)。彼女は、オリリアのMariposa Festivalで演奏を行っていた。

「私はこんな感じで話しかけたの。『それ何?』」

「彼は『うううう・・・・』」

「私はこういってあげたの。『怖がらなくていいのよ、ただそれを見てみたいだけよ!』」

「私はそれをクールだと思ったわ。」

最近、一部の人々は、インターネット上にあるライブのブートレグを手にしている。魅力的なコンサートに再び行きたいと願うファン、チャート上位のアーティストたちがどんなライブを行っているのかを聴いてみたいというファンたちは、コンピュータ上でそんなに手間なくそれを手に入れることができる。

録音機器の小型化が進み、帯域幅がますます高速化し、BitTorrentのような即座のダウンロードを可能にするソフトウェアの出現、これらのものは、ライブ終了後、数時間のうちにネット上にそれらの高品質のコピーがあふれることを促した。

Joe Breslinのような音楽コレクターにとって、ブートレグサイトは「天国にいる」ようだという。

「私のような一部の人々は、強迫観念的なレベルでそうしてるのかもしれません。」とBreslinはemailで答えた。彼はテキサス州ダラスに住む30歳の音楽コレクターである。

「私は、Radioheadの全ての録音されたパフォーマンスを手に入れようとしています。同じライブでも複数のソースを持っていますし。」

最も人気のあるブートレグサイトとしては、Dime(www.dimeadozen.org)がある。ここには、1日平均100以上のブートレグがアップロードされる。そのカタログは、過去の時代の最高のパフォーマンス、現代の激アツなアーティストなどが含まれる。たとえば、Jazzの巨人、John Coltraneの1957年のニューヨークでのパフォーマンス、Led Zeppelinの1972年、ウィスコンシンでのライブ、White StripesのEdmonton and Saskatoonへの出演など、1日のうちにこれだけ広範囲のものがアップロードされる。

その他のサイトは、特定の趣味の人たちを満たしてくれる。

Jam to This(www.jamtothis.com)は、ヘビーメタルバンドが、ビッグヘアーとスパンデックスを身に着けたファンを抱えていたころの数多くのコンサートを提供している。The International Echoes Hub(www.echoeshub.com)は、Pink Floydファンに、ロックレジェンドが行った、ほぼ全てのトリッピーなコンサートをダウンロードする機会を提供する。

たいていの場合、ブートレグ録音物は無料である。ただ、eBayのようなオークションサイトでの入札競争の結果、法外な値段になる事もある。

「現在、アーティストのファンが、もはや正気とは思えないくらいの量のブートレグを手に入れ、愛するアーティストをより理解することが可能になったんです。」と年季の入った英国の音楽コレクターKeir Hardie(36)はemailで答えてくれた。

ブートレグにアクセスするためには、ファンは無料のBitTorrentをインストールする必要がある。一般的なファイルサイズとしては400MBだが、ものによっては1GBほどもあるものがある。

ブートレグのトレードは、1960年代、70年代といった遥か昔から連綿と続いている。その当時、コレクターたちは専門のレコード店や、音楽雑誌の後ろの項目別の小さな広告から、ほんのわずかのビニールレコードを探さなければならなかった。

それらのブートレグレコードは高価で、しばしば非常に音質に悪いものであった。それは主に、当時の録音装置の問題に由来する。当時、録音は挑戦でもあった。こっそりと仕掛けたオープンリールやカセットマシンがしばしば他の観客に見つけられてしまうからである。70年代を通じて有名であったブートレガー、ロサンゼルスのMike Millarは、録音機器を隠すため、車椅子を使用したくらいだ。

現代のブートレガーは、録音のために小型のデジタルレコーダーをシャツや財布に詰め込むだけでいい。

「ここまで小型化が進んだマシンのおかげで、セキュリティを抜けるためにそんなに苦労しなくて済んでいます。」とペンシルバニアのMile Simpson(35)はいう。彼はRadioheadの音楽を専門とするRadiohubの共同設立者である。

「ライブを録音したい、という人なら誰しもがそうできる時代になっているでしょう。」

しかし、それには、2,3のルールがある。

多くのブートレグサイトは、音質が悪いとしてMP3ファイルの共有を禁じている。その代わりに可逆圧縮のFLACやSHNといったフリーのフォーマットを好む。また、大部分のサイトは、レコード会社から公式にリリースされるライブCDの共有を禁じている。いずれにしても、それは多くの国で違法である。

多くの法域(法の及ぶ範囲においてブートレグは違法ではない-それは単に、録音装置を禁止するコンサート会場の規則の違反でしかない。

カナダの刑法には、ライブパフォーマンスの録音に対する条文は盛り込まれてはいない。

アーティストの反応はさまざまである。ある人は、それを無料のプロモーションだと考え、ある人はそれを泥棒であると考えている。

Led Zeppelinの悪名高く短気なマネージャ、Peter Grantは1971年 、バンクーバーでのライブで観客が機材で録音しているのを見つけ、それを破壊した。しかしそれは録音ではなく、ライブの音量レベルをモニタリングしていた市役所職員であったことが後に判明している。

それとは全く対照的に、Pearl JamやDave Matthews Bandは、ライブに来たファンに録音機器の持込を許し、金銭が関わらないのであれば、その交換を認めるとしている。

Ryderは、彼女のフォークフェスティバルのブートレグによって音楽ファンが彼女のコンサートをチェックするよう促してくれるなら、その行為になんら問題はない、という。

「(ブートレグ)はお金を必要とする人から、お金を奪い去るかもしれない」、もし、インターネットからタダで入手することに満足して、ライブに行かないということになれば。

「でも、そんなことはなくて、音楽がそこにあれば、人々にライブに行ってみたいって思うはず。」と彼女はいう。

「どうやっても、本物のライブをマネることなんてできっこないわ。ライブサウンドが好きだって人なら、その人たちは1つでも多くのライブを見に行きたいって思うものよ。」

余談だけれども、上述のLed ZeppelinのギタリストJimmy Pageは自身のブートレグコレクターでもある。まぁ、好きで集めているのか、摘発の一環としてなのかはわからないが、来日時にはブート屋に行って自身のブート盤を大量に持ち去る(金も払わずに)のだとか。の割には店主とツーショットの写真を撮ったりと、いいのか悪いのか未だにはっきりしないらしい(インタビューなんかじゃ嫌ってる風でもあるが)。

もし、ブートレグを悪だとするのなら、それは必要悪とも考えられる。確かにネガティブな側面もある。多くのアーティストがブートレグを嫌っているという事実はぬぐいようもないし、著作権侵害がまかり通っているということも否めない。しかし、ブートレグを嫌うアーティストの多くはブートレグ対策のためのライブ盤をリリースしており(まぁ、アーティストの意向がどの程度かは怪しいところだが)、ある意味ではブートレグのおかげで、ファンは公式ライブ盤を手にすることができるという影響もある。まぁ、それは結果的にはありがたいことだったりするのだが。

逆に、この記事でフューチャーされているSerena Ryderのように、ブートレグがライブの魅力を伝え関心を高めてくれるものだ、と考えたり、ファンコミュニティの活性化になると考えるアーティストもいる。かつてはその代表格として、Greatful DeadやPhishというバンドがいた。彼らは、自らのライブの録音を認め、それをファン同士で(金銭の関わらない形での)交換することを許した(Internet ArchiveにはGreatful Deadのライブが2,862点もコレクションされている)。そのような行為は、熱心なファンをより熱心なファンにかえた。もちろん、彼らがライブバンドであったことにも由来するが、彼らのライブには多くの人達が詰めかけ、Phishの解散ライブにいたっては、11万人の人々がそのライブに参加することを望んだ(結果、米国千以上の劇場で生中継されることとなった)。日本においてはクラムボンが同様の試みを行っているが、著作権管理の問題もあり、自身の楽曲を録音させることができず、ジャムを録音させるにとどまっている。

ブートレグというと、海賊盤と訳されることもあり、単に違法な複製品と思われるかもしれないが、ブートレグ市場で主にやり取りされているものは、原盤権を有する録音物というよりは、ライブの音をオーディエンスが録音したものやライブのサウンドボードから録音されたものが一般的である。もちろん、そこで演奏されている楽曲は著作物であり、ほとんどのケースで許諾を得て販売してはいないため、厳密には著作権侵害にあたる。ただ、このようなブートレグはコアなファン向けのコレクターアイテムという色合いが強く、路上での海賊版販売などに比べると摘発されることはそれほど多くない(もちろん、取締りはあるが)。その理由としては、レコードレーベルが販売するCD等の音源と競合しない、利益を損なわないためであると推測される。

個人的には、利益を損なわない(如何にブートコレクターであっても、オリジナルトラックを購入しないなんてことはない)以上に、そのアーティストへの熱狂を増す効果もあるのだろうと思う。海外のアーティストは、3,4年アルバムを出さないことはざらにあるし、人によっては10年以上空くこともある。そうしたアーティストの熱狂的なファンはその間、ブートレグで欲求を満たすことになる。そうして、そのアーティストへの情熱が継続される。また、アーティストによっては、スタジオレコーディングよりもライブパフォーマンスの方が評価されることもある。そうしたアーティストの場合、ブートレグの存在は、彼らのライブパフォーマンスを示すいい材料ともなる。

もちろん、これがアーティスト(やそれを取り巻く人達)の経済的な利益を損ねるのであれば問題なのだが、実際にはそのライブパフォーマンスがCDとして販売されるわけでもないし、ブートレグを購入することでライブから足が遠のくということもない。むしろ、優れたパフォーマンスをする人達はよりブート人気が高まり、それを聞くことでよりライブに足を運ぶ人達が増えることだろう。

しかし、商業的なブートレグの販売は無許可で行われていることが多く、その点では取締りの対象となることもある。まぁ、権利者にしてみれば、如何に自らの利益に直接関係しないとしても、勝手に自分たちの売り物で商売されては気持ちのいいものではない、ということもあるのだろう。ただ、個人的にはブートレグで販売されなければ、その音源の二次利用がなされることはなく、必ずしも損害を与えるものではないと思うので(ブートがあるからライブに行かなくなるということはないだろう)、ブートレグ対策をするのであれば、積極的にライブ音源を配信する、という方向にシフトするほうが利益に繋がるだろう。CDという形態をとらずにすむ時代なのだから、それほど売れないにしても低コストで多少の利益を上げることはできる。そして、彼らの嫌うブートレグ対策もできるのだ。

上記の例は商業ブートレグの話になるが、一方でファンコミュニティに許される金銭に関わらないブートレグも、Greatful DeadやPhishを見る限りでもファンコミュニティの結束を固め、さらなるファンを増やし、そして彼らを熱狂的なファンに変えていく。そうした意味では、まさにアーティストにとってブートレグはクールな存在だ、というのは間違いない。(まぁ、商用ブートと、非商用ブートとの間の確執もあるのだが、今回はその辺は割愛。)

じゃあ、アーティストが商用であれ、ファンベースであれ、ブートレグを許せばいいではないかというと問題はそう簡単なことではない。1つの問題は、アーティスト本人が著作権を有してない、つまり譲渡しているケースが多いことにある。また、著作権管理団体に著作権管理を委託している場合、その管理契約に従った形でしか運用できないということもある(場合によっては、ブートを勧めることが違法行為を助長していることにもなる)。クラムボンが彼らの楽曲を録音させることができない理由はその辺にあるのだろう。また、もう1つの問題として、レコーディングの際の専属実演家契約がある。原盤権を有するレコード会社との契約に際して、多くのケースでそのレコード会社以外において当該の楽曲の新たなレコーディングを行うことを禁じるという条項が設けられる。こうなれば、如何にアーティストが望もうともレコード会社の意向に従わなければならなくなる。まぁ、保守的なレコード会社はおそらく、ライブレコーディングの乱発はスタジオレコーディングの価値を下げるとみなして反対するだろう。

そういう事情もあいまって、商業的であれ、ファンベースであれ、ブートレグはダメよ、ということになる。後者に関しては、ファンのライブへの欲求を更に高めるものとして、アーティストにとっての利益に直結するものなのだけれども、著作権を譲渡された音楽出版社、原盤権を有するレコード会社にとってはさほど実りのないものであるために、許可されないのだろう。

アーティストのために、著作権の保護期間を延長しよう、などと吹聴して廻るのはいいが、そんなこと以上に本当にアーティストのためになることは山ほどあるのだけれどもね。クリエイター自身への直接的な利益に繋がらないことばかりにクリエーターの利益を持ち出し、肝心の直接的な利益に関しては簒奪の限りを尽くす。誰のための著作権なのだろうね。

Trackback

Trackback URL
http://peer2peer.blog79.fc2.com/tb.php/625-97ff7d59

Comment

mace | URL | 2007.08.04 00:21 | Edit
かなり勉強になりました、ありがとうございました!
heatwave | URL | 2007.08.07 19:52 | Edit
maceさま

コメントありがとうございます。

mace様のお役に立てたのでしたら、何よりです。
今回のエントリでは触れられなかったのですが、ブートレグにも、Greatful DeadやPhishが推奨していた無償のブート、アーティスト等に認められていないけれどもファンが隠し撮りしたブートのローカル/オンラインでの交換、隠し撮りや流出によって得られた音源を元にした商用ブートなどなど、ブートレグといってもさまざまなレベルのものを指します。それぞれにメリットも考えられますが、デメリットもあります。

著作権法や著作権の運用は現在、1つのターニングポイントを迎えていると思います。それを考える上で、1つの材料となってくれれば、と思っています。
Comment Form
公開設定

プロフィール
heatwave Author
:heatwave

RSS Jamendo twitter tumblr Creative Commons Attribution 2.1 Japan
ブログ内検索
記事リスト
最新の記事
全記事一覧
他所で書いてるブログ

P2Pとかその辺のお話@はてな

アーカイブ

カテゴリー
最近のコメント
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。