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シンガポール:日本のアニメを共有するBitTorrentユーザに3000ドル超の賠償金を請求

シンガポールにおいて、日本のアニメコンテンツを配信する企業が、同社がライセンス契約しているコンテンツをBitTorrentを利用して、違法に共有しているユーザを特定することに成功し、それぞれのユーザに対して、訴訟に発展させたくなければ、3,285ドル超(約40万円弱)を支払え、という警告状を送付しているよ、というお話。その数、1000人以上に上るらしい。これは当ブログでも何度かレポートした、RIAAの大学生に対する前訴訟的和解戦略の手法を踏襲したやり方といえる。となれば、その問題点は必然的に重なる部分があるだろう。一企業が個人に対して、訴訟の脅威をちらつかせながら、嫌なら黙って金を払えというやり方を、私は認めたくない。

原典:TorrentFreak
原題:BitTorrent Anime Downloaders Identified, $3,500 Bill in the Mail
著者:enigmax
日付:August 16, 2007
URL:http://torrentfreak.com/bittorrent-anime-downloaders-identified-
3000-bill-in-the-mail/

日本のアニメーションを配信する企業が、数千のBitTorrentユーザが同社の著作権を侵害したとして訴えるために、ユーザたちを追跡し、彼らのISPに対して、ユーザの個人情報を開示することを首尾よく強制した。次のステップ-脅迫状『3,500ドル支払え、さもなくば』。

Odex Pt. Ltd は、東南アジアでアニメを配信する、シンガポールを拠点とした企業である。1998年に設立され、2000年よりアニメの配信を行っている。同社の扱うタイトルは、たとえばブリーチ、鋼の錬金術師、機動戦士ガンダム、クロノクルセイドなどがある。

2007年、同社はこの2年間でセールスが60-70%も減少したとし、BitTorrentを介して彼らのコンテンツを共有する人々をターゲットとすることを決定した。ファイル共有ユーザのIPアドレスを収集するために、トラッキングシステムを利用した後、彼らはISPのStarHubに、著作権侵害に関わったとされる1000人ものBitTorrentユーザの身元を明らかにする情報を開示させることに首尾よく成功した。同社は以前にも、ISPのSingNetにそのユーザの情報を開示するよう強制した。

公平に見て、StarHubは、同社のユーザのプライバシーを守るために戦った。しかし、それはほとんど意味を成さなかった。StarHubスポークスマン、Michael Simによると、同社は当初「私たちの顧客情報を保護する義務」を持つと主張したものの、法廷からのプレッシャーはあまりに強大なものであった。下級裁判所での、StarHabに同社の顧客の身元情報を提出するよう命じた裁判所命令は、密室での審議によって下された。

「Odexのケースでは、彼らは情報の必要性に関して、裁判所の要求を満たしたのです。従って、私たちは裁判所命令に対応します。」とSimは言う。

Odexの次のステップは、ファイル共有ユーザに対するおなじみのものだ。彼らはStarHubから提出された名前のリストを使用し、脅迫状を送りつける。その内容は、アニメ(たとえば非常に人気のある「ブリーチ」)を共有したことを特定したと断言し、法廷に連れて行かれたくなければ、3000ドル+を支払うよう要求する、というものである。脅迫状を送りつけられたユーザには、次のステップについて考える時間をほとんど与えられてはない。Odexがほのめかした法的措置までに、同社はおよそ9日間の猶予を与えている。

Odexのディレクター、Stephen Singによると、シンガポールの「ダウンロード状況」は非常に悪い、という。「私たちは、シンガポールにおける違法ダウンロードを追跡するために取り組んできました。比率的に、日本のアニメーションに関して言えば、世界でもトップクラスの違法ダウンロードが行われています。」という。

興味深いことに、Stephen Singは、シンガポールのアンチビデオ海賊行為協会AVPASのディレクターでもある。そして、それはとてもとても嫌われている。OdexのアンチBitTorrentキャンペーンが行われた直後、Sing氏は彼がどれくらいの数のファイル共有ユーザを相手取って訴訟を起こしたか、についての冗談を言うために、オンラインフォーラムを利用するという過ちを犯した。HardwareZoneの面々は、同フォーラムにて彼ら専用の(公式)Anti-Odex Clubを介して、彼を追跡した。

Sing氏は、「シンガポールのアニメコミュニティで最も嫌われている人物」と呼ばれている。アニメファンたちは、彼の写真や個人情報をインターネット上に上げ、彼のウォンテッドポスターを製作した。。また彼の妻の写真をインターネット上に投稿したり、彼に対して暴力的な脅迫をしたり、家を放火してやると予告したりした。この時点で、Singは警察に訴えでている。

Odexのヒットリストにのった次のISPは、Pacific Internetである。もし、彼らが勝利を収めるのであれば、さらに1000人のBitTorrentユーザが脅迫状を送付され、3000ドルを要求することになる。つまり、トータル3000人のユーザに対して脅迫状を送りつけることとなる。

もし、全ての人が支払いをするのであれば、Odexは900万ドル(約10.5億円)もの大金を徴収することになる。死の脅迫をもってしてもSing氏を阻止し得ないのも不思議な話ではない。

個人的な意見だけれど、これは単なる著作権法を利用したビジネスに過ぎないだろう。この件を報じているForbesの記事によると、請求金額は5,000シンガポールドル(3,285ドル、約40万円弱)以上の金額となるようだ。この種の戦略を見るにつけ、いつも疑問に感じていることではあるが、それたを以下に纏めてみる。

  • 1ユーザに対して要求する3,285ドル)の賠償金は、果たして当該のユーザによって発生した実際の損害を反映しているのか
  • Odexの行った調査は、違法ファイル共有ユーザを特定するために、どの程度信頼に足るものであるのか
  • Odexの収益の減少は違法ファイル共有の影響によるものか

まぁ、疑問形で書いてはいるけれど、否定文と捉えてもらってかまわない。彼らの思惑としては、「普通の人」は裁判という言葉を出されれば、容易に屈するだろう、というところだろうか。もちろん、その大半が著作権侵害を行っているのであり、その責任を問われるのは道理ではあるが、彼らへの懲罰を求めるのであれば、刑事手続きに則るべきであり、補償を求めるのであれば、ここのユーザが発生させた損害に見合った適当な補償を求めるべきであろう。

RIAAが行っている大学生に対する前訴訟的和解戦略のときにも思ったのだが、本当に彼らが請求している金額が、真に損害を反映しているのだろうか、という疑問がある。確かに、P2Pファイル共有における著作権侵害は問題なのだが、個々のユーザが著作権団体やライツホルダーの主張するほどの損害を生み出しているとは思いがたい。もちろん、権利を侵害されたことに対しての賠償なのだろうが、権利が一人歩きしている現状にあっては、ほぼ言い値のようなものだろう。

今回の一件も、RIAAによる訴訟に拠らない和解戦略と同様に、和解に応じないのであれば訴訟を起こし、それ以上の金額を請求するぞ、という類のものなのだろう。

また、Odexの行った調査の妥当性、信頼性の問題に関しても、IPアドレスによる特定手法の問題が米国でもしばしば問題とされる。というのも、たとえ調査によってそのIPアドレスが収集されたとしても、それが本当に当該の行為を行った人物を特定できるか、ということとは別の問題となる。通常、回線は世帯ごとに契約されていることが一般的であり、回線契約者を特定できても、誰が当該の行為を行ったかについてはわからないままである。そのような状況で、回線契約者に対して、賠償金を支払うよう要求する警告状が送付される。

身に覚えがあるのであれば、支払う、支払わないは自らの判断によって行えるのであるが、そうではない場合には非常に複雑な事態となる。もちろん、回線契約者やその家族が嘘をついていることもあるだろうし、調査時の誤り、ISP照会時の誤りなど、さまざまな原因が考えられる。それでも、訴えられた人は、心当たりがないのであれば、真犯人を自ら見つけ出せ、というような要求をされることだろう。これはRIAAがDebbie Fosterに対して起こした訴訟の際にも見られているし、RIAAがKazaaユーザを一斉提訴した際にも、数多くの無関係な人々が巻き込まれている

さらに、Odexの収益の減少は何も違法ファイル共有にのみ由来するものではないとも思う。もちろん、その影響は皆無だというつもりもないが、ここ2年間を考えると、数多くのコンテンツ配信サービスが開始されている。要は競合相手が増えているということである。しかし、その一方で、ユーザがコンテンツに支払う額がそれと比例して増加するかといえば、そんなわけはない(もちろん、コンテンツ配信に対する支出は増えていくのだろうが、需要と供給が常にバランスの取れたものであるわけでない。供給過多になれば、必然的に個々のサービスが得る利益は減る)。コンテンツ配信ビジネス自体は右肩上がりかもしれないが、個々のサービスを見てみればそれほど安定した成長が保証されているわけでもないだろう。コンテンツ配信サービスはまだまだ過渡期にあり、新興サービスが次々に参入してくるのである。

私はこの手の、企業が個人に警告状を送付し、その主張の正当性よりも訴訟への脅威によって人々を脅すやり方に、強い不快感を抱いている。上記の考えは、そういう人の意見だ、ということにも留意して欲しい。おそらくそれは、TorrentFreakも同様かと。

ただ、だからといって暴力で脅迫したり、放火を予告したり、彼の家族まで巻き込むことまで、許されるべきではない。彼のウォンテッドポスターを製作することくらいは、多少のユーモアも感じられるし、彼に対する反発を示すものとして一定の理解を示せるものの(もちろん、いけないことだけどね)、それ以上にまでエスカレートすれば、訴訟の脅威を背景に脅迫する彼らのやり方と何一つ変わらない、むしろ、法にそむいている分、より太刀が悪い。

Trackback

シンガポール:日本のアニメを共有するBitTorrentユーザに3000ドル超の賠償金を請求
 シンガポール:日本のアニメを共有するBitTorrentユーザに3000ドル超の賠償金を請求(P2Pとかその辺のお話) 日本のアニメに字幕をつけたファンサブをP2Pなどに違法にアップロードしたグループに対してメーカーが警告を出したことはありますが、一個人ユーザー
2007.08.18 23:09 | 日本視覚文化研究会
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http://peer2peer.blog79.fc2.com/tb.php/660-17458296

Comment

げ | URL | 2007.08.17 22:37
シンガポールは誰かが『明るい北朝鮮だ』と言ったように、インターネットも国家の完全な統制にありますからね。
heatwave | URL | 2007.08.17 23:46 | Edit
げさま

コメントありがとうございます。

EUなどでは、このような情報開示請求に対して厳格な対応を迫る風潮が生まれてきていますが、世界的に見ればまだまだそれは萌芽程度なのでしょうね。
シンガ | URL | 2007.08.18 04:17
暴力で脅迫されたことって、ただ掲示板での冗談だけど、新聞に偏向報道されちゃった。
匿名のPeerさん | URL | 2007.08.19 00:18
同情する気にはなれないな

世の中タダのものはあまりない

自業自得だね
tokoro | URL | 2007.08.19 01:57 | Edit
別に罪のない人から奪取しようとしてるわけでもないし
違法DLして、当たり前のようにタダ見してる奴らだから
自業自得としか思えないね

こういう違法DLが横行してるおかげで
しわ寄せがちゃんと糞高い値段でDVDとか買ってるユーザーに
被るってわかってるのかね

違法DLしといて、それを責められたら殺すとか脅迫って
民度低すぎだろ・・・・
  | URL | 2007.08.19 02:15 | Edit
自分はしょうがないと思いますよ。
何より日本に限らずアニメのDVDとか高いっすよ。
日本のアニメDVDは他と比べて高いといわれますが海外の通販見たことアル方はわかると思いますが
3000円くらいしか差はありません。小さいとはいえませんが大きいと言えるほどの額ではないです。

単純に考えて1話約1600円くらいの価値はあると思いますよ
ネットで買うやつですと1話300円くらいですけどそういうのはほぼ古いやつですしね。
それに共有ソフトはダウンだけでなくアップもするものですので言い逃れはできないでしょう。
BTは完全にIPなどもオープンで匿名性は皆無ですので間違いはありえません。
どのユーザーがどのファイルをダウンやアップしてるかわかるような仕組みですのでね。
個人的には40万くらいは安いと考えます。しかし平均の所得などの差もあるのでむこうではかなりの高額なのかもわかりませんが。
匿名のPeerさん | URL | 2007.08.19 07:39
レンタル面で打撃をあたえてるのは確かだと思う。
  | URL | 2007.08.19 08:35
会社は違法配信を享受してるファンからの応援が無くなるだけで、
法的にも倫理的にも妥当な判断。fansubとか調子乗りすぎ。
匿名のPeerさん | URL | 2007.08.19 09:56
ファンサブ厨がいろいろほざいてるみたいだけど
権利者ガンバレ!
匿名のPeerさん | URL | 2007.08.19 10:33
賠償請求額が妥当かどうかの問題提起がありますが、通常は損害額の算定が難しいので損害額の推定条項が盛り込まれている場合が多いです。
シンガポールの法に同様の条項があり、権利者側がそれなりの根拠に基づいて算定してるのであれば問題はないと思います。
tokoro | URL | 2007.08.19 14:21
ファンサブって言葉が免罪符みたいな感じを与えてるよな

好きだから、もっとアニメを知って欲しいからやっただけで
罪の意識なんてないよ!!って言えるようにね

やってる事は海賊版やってる奴等と変わらないんだけどね
会社の大ダメージ与えてることは一緒
日本から権利買ってる向こうの会社だってボランティアでやってるわけでもないんだから・・・

既に日本のアニメがこんな広まってる時点で
もうファンサブが広告代わりとかいう言い訳は成り立たない
既に最新作をすぐにタダで見たいだけってのが99%だろ
1%くらいは本気でファンサブはアニメのタメだと思ってる奴いるかもしれないけど
シンガ | URL | 2007.08.19 21:25
> 既に日本のアニメがこんな広まってる時点で
> もうファンサブが広告代わりとかいう言い訳は成り立たない

いいえ、ファンサブじゃなかったら新しいアニメは見えない。それに、あるシリーズは人気になれるかどうか販売者も確認できない。ファンサブを見たらDVDDVDやグッスなどを買わないことわけではないし、逆に全然見たことないならを買わないこともある。

シンガポールの場合なら、アニメの広告はあまりない。アニメのイベントはファンたちが自分で組織して、オデックスと言う会社は宣伝活動でも今までかなりない。また、商品の質が低すぎるってファンたちも言ったけど(売ってるのはVCDフォマットが多い)、個人的な意見じゃないかとはねつけた。売上高を減らしたら、アニメの単に違法配信のせいじゃなく商品の問題はずだ。

> 違法DLしといて、それを責められたら殺すとか脅迫って
> 民度低すぎだろ・・・・

脅迫じゃなくて、掲示板での普通な冗談だけだ。Stephen Singが同情を取るためかどうか分からないけど、なんどか過剰な報道や誇大された。

ま、今はここオデックスの事件は違法DLのより、営業の倫理の問題になちゃったね。
   | URL | 2007.08.19 21:39
冗談?日本の掲示板で○○殺すって書いても冗談に受け止められてなく普通に逮捕されてるでしょ
冗談って言えばなんでも済まされるわけじゃないんだよ
シンガ | URL | 2007.08.19 21:58
> 冗談?日本の掲示板で○○殺すって書いても冗談に受け止められてなく普通に> 逮捕されてるでしょ

殺すってだれでも書いてないよ。
誰かが有名な香港映画のコミカルシーンを掲示板でポストしたことだ。悪意は全然感じていなかったら、脅迫されたってニューズが出た時たくさんの人も吃驚した。

全部英語でなんだけど、オデックスの事件に詳しくしりたいなら、このページを読んでください

http://www.darkmirage.com/2007/08/19/odex-having-your-cake-and-eating-it-too
heatwave | URL | 2007.08.20 04:08 | Edit
シンガ様

コメントありがとうございます。

シンガさんはシンガポールの方ですか?
Odexの事情について詳しいようですので、勉強になります。Wikipediaを見ても、OdexはVCDフォーマットと、DVDフォーマットでの販売を行っていたようですね。いまどきVCDフォーマットが多いのでは、不満が出るのもしょうがないかもしれないですね。

脅迫に関しては、行き過ぎた人もいたのではないか、とも思えますがどうなのでしょうか。もちろん、シンガさんの言うように香港映画を使った冗談を、脅迫だと騒ぎ立てた部分もあるでしょう。ただ、Singの妻の写真をポストしたり、家に火をつけるとポストしたと、上の記事には書かれています。そういったこともあったのではないですか?おそらく、Singがそれを利用したのでしょうが、一方で実際にそれを行っていたのであれば、ユーザの側にも問題があるのではないでしょうか?Singに、付け込まれたにしても、やりすぎではなかったのでしょうか?

また、シンガさんは、ファンサブがなければ、新しいアニメを見る機会がない、といっています。では、ファンサブ以外に、合法的に新しいアニメを見る機会が提供されれば、ファンサブは必要なくなると思いますか?たとえば、YouTubeやJoostのようなプラットフォームで。

シンガさんのポストしてくれた記事は、非常に興味深いですね。まだ、軽く読んだだけなのですが、Odexの件について、深く述べられていて面白いです。
heatwave | URL | 2007.08.20 04:23 | Edit
みなさま、コメントありがとうございます。

お一人お一人に返信させていただきたいのですが、数多くのコメントを頂きましたので、その中から少しかいつまみつつ、私の思うところを述べさせていただきたいと思います。


確かに違法ファイル共有ユーザとして自業自得な人はよいのですが、そうではない人もいるかもしれない、という点を私は上記エントリで指摘しています。当ブログはこれまで、罪のない人が苦しめられている様を何度も紹介してきましたし、著作権団体のやりようがいかにひどいものであるかを見てきましたので、その点について考えてしまうのです。上述の3つの点は、その過程で疑問に思ったことなのです。

>BTは完全にIPなどもオープンで匿名性は皆無ですので間違いはありえません。
>どのユーザーがどのファイルをダウンやアップしてるかわかるような仕組みですのでね。

この点については、BitTorrentに限らず、ほとんどのP2Pファイル共有ソフトは高い匿名性を持ってはいません。日本ではWinnyやShareなど匿名性が高いといわれるP2Pファイル共有ソフトがメインストリームにあるがゆえに勘違いされやすいのですが、海外で名の知れ渡ったP2Pファイル共有ソフトで匿名性が高いといわれるものはほとんどありません。Freenetくらいなものでしょうか。

一方で、IPアドレスがオープンであることと、匿名性の高さはそれほど関係していないと思います。P2Pファイル共有における匿名性は、そのデータが分散して保持されることによって担保されます。しかし、たとえ、データが分散して保持されようとも、個々のクライアントは常にIPアドレスを公開しています。私は、P2Pファイル共有における匿名性とはそのようなデータの分散による意図性の不透明さに依存しているのだと考えています。Winnyは、階層構造を持っていますが、1つのネットワークとして存在し、データを分散させることで、誰がそのデータを一次的に流したのかを特定しにくくし、誰が意図的にデータを流通させているのかを判断することを難しくしています。一方、BitTorrentはネットワークはSwarm単位で構成されますので、Winnyに比べれば、誰がどのファイルを流通させているか、ということは比較的判断しやすくなっています。ただ、その意図性をどう捉えるかという議論も存在します。ダウンロードとアップロードは同義であり、そこに意図性が存在するという人もいれば、システムがアップロードを強制する以上、それはユーザの意図ではないという人もいます。この点についてはより活発な議論が必要な点であり、そして裁判においてより明確にすべき点だと考えています。

また、しばしばIPアドレスは一意的だと考えられますが、一意的に割り振られているのはMACアドレスであり(完全にとはいいませんが)、IPアドレスは一意のものではありません。上記のエントリではその点について指摘しています。また、この議論に関しては専門家からの指摘もありますので、あわせてどうぞ。
http://www.ilrweb.com/viewILRPDF.asp?filename=arista_does1-11_070806DeclarationJaysonStreet

さらに、米国では著作権団体が行った独自の調査を証拠として採用してよいのかという批判もありますし、欧州では裁判所の承認を得ずに独自の調査を行ってもいいのか、という議論もあります。

賠償請求に関してですが、確かに法によって規定された条項によって算出されていると思います。ただ、私はそれが現実を反映しているのかどうか、という点に疑問を覚えるのです。たとえば、RIAAがニューヨークでAllofmp3を訴えた際、Allofmp3に対して200兆円の損害賠償を請求していますし、Mary Lindorの裁判では、楽曲1曲につき750ドルを請求されています。これらのケースでは、実際の侵害によって生じた損害から随分と逸脱しています。もちろん、これは一部のケースですが、これらの裁判を見るにつけ、法廷損害賠償規定がどれほど現実を反映しているのか、という点について疑問に思います。もちろん、法に則って算出しているのですから、法的に問題があるというわけではありません(Lindorのケースでは憲法違反だと指摘されていますが)。であれば、法やシステムに問題はないのか、というのが私のスタンスです。

また、今回の件に関しては、それが妥当な額であるかどうか、裁判によって明らかにされることもないのです。私は人々を訴えるな、といいたいのではないのです。むしろ、訴えろと思っています。その上で、適切な手続きを踏むことが重要だと考えています。裁判という社会的真実を判断する場を回避して、都合のいいようなやり方をすることを私は認めたくありません。さらに、このような民事訴訟における損害賠償請求が非常に懲罰的な意味合いを持っていることにも疑問を覚えます。私は懲罰を加えたいのであれば、刑事訴訟によるべきだと考えています(ある意味では残酷かもしれませんが)。英国おいてもそのような議論があります http://peer2peer.blog79.fc2.com/blog-entry-455.html。刑事訴訟の場で、真実を争うことこそ、P2Pファイル共有の持つ問題がより明確になるのではないでしょうか。少なくとも、大企業対個人という構図では、単に法廷強者である大企業が有利になるケースが非常に多いのですから。その辺については、Ray BeckermanのRecoding Industry vs The Peopleに多くのケースが載せられています。
http://recordingindustryvspeople.blogspot.com/

上記の点に関しては、私は違法ファイル共有の是非とは別個に考えています。もちろん、違法ファイル共有によって生じた問題ではあるのですが、悪いことをしたのだから、どう扱われてもいいとは思っていません。

では、違法ファイル共有に対するスタンスですが、これはどうやってもなくなるものではない、と考えています。P2Pに限らず、という意味でです。NewsgroupやFTP、アップローダ、を利用した広義のファイル共有もP2Pファイル共有が広まる前から存在していましたし、P2Pファイル共有ソフトの後には、ビデオ共有サイトが全盛を迎えています。これに関しては、いたちごっこですからもはやどうしようもありません。ただ、昨今のビデオ共有サイトやP2Pファイル共有に見られるような、大規模且つあからさまな違法共有行為は、もはや限度を超えているのだと考えてもいます。その点で、より効果的な抑制方法を考えていかなければならないと思うのですが、単に罰則を強化したり、法的脅威を高めるだけでは、決して解決できる問題ではないと考えています。違法ファイル共有ユーザが選択しうるオルタナティブがあればいい、と私は考えています。その上で、法的施行を行うことが重要ではないかと考えています(それ以外にもフィルタリングという方法もありますが)。

そういうと、海賊行為を抑制するために、身銭を切ってコンテンツを売り払えと聞こえるかもしれませんが、そうではありません。
>世の中タダのものはあまりない
>既に最新作をすぐにタダで見たいだけってのが99%だろ
というご意見もありますが、現実的には皆さんの視聴されているアニメの一次利用において、大半のものは視聴者の金銭的な面においてタダで提供されています(PPVやCSなどは除いて)。もちろん、CMを見るというコストは生じていますが。

しかし、そのようなモデルはテレビ(やラジオ)だけに当てはまるものでしょうか。近年、JoostやVeohTV、BitTorrent Inc.は広告モデルによる映像コンテンツのオンデマンド配信のテストを行ってます。そして、それに加わるコンテンツプロバイダーも数多くいます。彼らは決して伊達や酔狂、道楽で自社コンテンツを提供しているわけではありません。そこに明確な収益モデルを見ているからこそ、自社コンテンツをフリーで視聴させる、という判断を下しています。オールドモデルをベースにしたイノベーションという気の早い評価もありますが、私はそうなることを願っていますし、そうなる可能性が十分にあるものだと考えています。

また一方で、P2Pファイル共有やビデオ共有サイトにプロモーション効果があると指摘する声もあります。これはしばしば論争を巻き起こしますが、この議論を考える上で考慮しなくてはならないのは、その効果は一義的なものではないということです。1つには、それは0か1かの問題ではない、ということ。もう1つは、それが限定された文脈での効果であるということ。つまり、ある種の状況、コンテンツ特性、媒体という複数の要因によって、プロモーション効果が生まれることもあれば、購買抑制効果が生じるということもあるということです。

日本においては、このような発想にいたる企業は余りありませんが、角川はいち早くYouTubeと協調することを選択しています(なお、角川はJoostともコンテンツ提携を交わしています)。彼らの主張は至極明快で、メリットがある部分は採用したい、デメリットがあるのであればその点は改善を求めたい、というものです。メリットとはプロモーション効果や広告収入等でしょう。デメリットとは購買抑制となるでしょう。

そうなると、無料で視聴させるということが果たして損にしかならないのか、ということを考えてしまいます。もちろん、メリットとデメリットがどのような状況で生じるのか、についてはまだまだ議論が尽きないところがあるでしょう。ただ、角川の考えているように、少なからずメリットが存在している以上、なるべくデメリットが生じない形で運用していく、ということがベターなのかもしれません。最初から、メリットになるかデメリットになるか一か八かのラインを攻める必要はないのですから(もちろん、NettWerkのように何がメリットを生み出すのか、誰も知らないのだから、どんなサービスにでもコンテンツを提供する、というスタンスもありますが)ほぼメリットになるだろうというところからはじめてもいいでしょう。

そうした意味では、前述のJoostやBitTorrent Inc.のような、ある程度コントローラビリティを伴ったプラットフォームを利用するという手もあります。この場合、まずいなと思えばすぐさま取り下げることも出来るのですから、それほどの冒険にもならないでしょう。Joostなどはこれまでのオールドモデル(広告モデル)を踏襲したものですので、比較的テレビ業界からも支持を集めていますし、プロモーションのための利用としても、コントローラビリティがある程度ありますから、その点では利用しやすいかもしれません(角川側はもっとユーザの手に委ねるほうがいい場合もあると考えているようですが)。

もちろん、このようなコンテンツの二次利用は一次利用や他の二次利用との兼ね合いも考えなければなりませんが、ABCやCBSのように見逃し需要や、番組のプロモーションをかねて、放送した番組を一定期間、自社サイトで視聴可能にしているところもありますので、やりようによっては一次利用に対するデメリットを最小限にし(どうせWeb見れるのだから、テレビで見なくてもいいや、とは思わせない)、テレビ放送の一次利用に対してのメリットを生み出すことも不可能ではないと考えています。現在では、さまざまな事情から、インターネットを介したプラットフォームはその他の利用に大きな影響を与えるとは思っていません。というのも、Joostであっても画質の問題はありますし、YouTubeやBitTorrent Inc.のようなWebサイト上にエンベッドされたプレイヤーでの視聴となると、Joost以上に画質の劣化は否めないでしょう。画質やプラットフォーム、テレビ視聴習慣などを考えると、やはりPCでの視聴とテレビスクリーンでの視聴は別物だと考えたほうがいいかもしれません(もちろん、インターネット上のコンテンツをテレビスクリーンで視聴するという選択肢もありますが、そのようなことを可能にするSTBが一般的とも思えませんし、ホームネットワークを構築している過程もほとんどないことを考えると、そのような利用は一部であると考えられます)。

長くなりましたが、上述したようにライツホルダー側にも、メリットをもたらすオルタナティブが存在しうるのだと考えています。そして、そのような利用が活発になればなるほど、著作権侵害をしてまでコンテンツを手に入れるという行為が抑制されうるのではないかと思っています。もちろん、少なからずコントロールされる部分は出てきますので、完全に自由に利用できるP2Pファイル共有上の(違法な)コンテンツの利用に魅力を感じてしまうかもしれませんが、そのときにこそ、そのような誘惑を打ち消すものとして、法的措置の脅威が存在することに意味があるのだと考えています(個人的には、違法行為であるという感覚よりも、それがモラルに反している、という認識のほうが効果があると思いますが。もちろん、その辺は個人的な考えです)。
tokoro | URL | 2007.08.21 02:38
あなた達もタダで見てるでしょ?ってあるけどさ
俺はちゃんと気に入ったのはDVD買ってるし、ちゃんと代価は払ってるよ

向こうでもファンサブのおかげで日本アニメの売上げ伸びてるでしょ?って言いたいのかな
調べたらわかるけど
ここ最近はアニメの国外の売上げは大分落ちてるます

では、人気下がったのが売上げ不振では?
と思うけどファンサブの数は増えてDL数も増えてます

最近ニュースでも取り上げられるようになった
国外の日本アニメ関連のイベントは参加数は増えてます

つまり、ファンサブでアニメを見て楽しんでる人は増える一方で
アニメの売上げは下がる一方なんです

ファンサブでタダで見ちゃう人は、もうDVDでわざわざ買わずに
DLしたファイルをDVD-Rに焼いちゃってお終いなんですよ
値段だって日本に比べたら滅茶苦茶安いですよ、、、それなのに売れない
高い金出して現地で日本のDVD売ってる会社もかなりキツイのが現状です

ファンサブってのは最悪な行為だと認識させないといけない時期です
海外でアニメは大人気だ!って喜んでる時はもう終わりにしないと・・・
heatwave | URL | 2007.08.26 01:47 | Edit
tokoroさま

再度のコメントありがとうございます。
ご返信が遅くなりまして申し訳ありません。

>あなた達もタダで見てるでしょ?ってあるけどさ
>俺はちゃんと気に入ったのはDVD買ってるし、ちゃんと代価は払ってるよ

この点につきましては誤解があると思いますので、説明を。私が一次利用としたのは、テレビでの放送に関してです。テレビで放送されたコンテンツに金銭を支払う人はいません(支払うことも出来ませんが)。しかし、それでも可能となっているのはそこに明確な収益モデルが存在しているからです。であれば、それをインターネット上でも出来ないのか、という疑問があるということです。

このようなコンテンツの利用によって、気に入った物をDVDで購入して、代金を支払うことが出来ればよいことだとは思いませんか?

また、そのような利用によって利益を上げつつ、DVD販売などのプロモーションにも利用できれば、ということを先のコメントでは申し上げています。少なくとも、コンテンツを配信している日本では、そのコンテンツをテレビという媒体を通じて、DVD販売のプロモーションの効果も期待できるでしょう。しかし、そのような媒体の存在しない諸外国においては、何をもってプロモーションが可能となるのでしょうか。

>向こうでもファンサブのおかげで日本アニメの売上げ伸びてるでしょ?って言いたいのかな

とは言っていませんが、そのような箇所がありましたがご指摘いただけると幸いです。

ただ、上述の理由から少なくともプロモーション効果が存在していると考えています。少なくとも知る機会が無ければ、それを好きになることもありませんし、好きにならなければ購入することもありませんから。

ただ、ご指摘の通り、セールスが低下している要因として、販売抑制効果も存在すると考えられるでしょう。しかしそれは、購買促進効果よりも購買抑制効果のほうが効果サイズが大きいと考えるほうがベターでしょう。その点については是正しなければならないと考えています。しかし、ファンサブが増えて、売上不振になっていることをもって、プロモーション効果はないという答えの出し方としてはナンセンスです。

また、では単にファンサブを取り除けばいいかといえば、それも難しいかもしれません。少なくとも、ファンサブを介してそのコンテンツを知ることが出来る層もいますし、ファンサブ以外に強力なプロモーション効果を持った手段が存在しているわけではありません。ファンサブをなくしてしまうことで、プロモーションの媒体がなくなり、その人気が鈍化して、結局はファンサブを撲滅する以前よりも、セールスが低下してしまうかもしれません。

もちろんこれは、過剰なまでの極論です。しかし、そのプロモーション効果を考えると、程度の差はあれそのような影響を及ぼすでしょう。

というと、またファンサブを容認している、と誤解されそうですがそうではありません。先のコメントに記しているので、多くは述べませんが、ファンサブに代わる合法的なオルタナティブを提供し、それによってプロモーションと収益を得るというモデルを構築してはどうか、ということです。詳しくは、先のコメントを参照してください。

確かに、違法ファイル共有は抑制されなければなりません。しかし、みながそう思っても、現実的にはそれは難しいのです。

ところで、tokoroさんはニコニコ動画やYouTube上のアニメコンテンツをどう思われますか。私はファンサブ同様、著作権侵害はよろしくないと思うのですが、日本ではそれほどニコニコ動画に対する批判が高まってはいないように思えるのです。
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