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MP3圧縮を嘆く音楽プロデューサー:MP3は味気ないファストフードのようなもの

CDからMP3にエンコードしたとき、たとえそれを最高音質にしたとしても、その過程でロスが生じる。一度、MP3にエンコードされた音楽ファイルは、多かれ少なかれ、部分的なもの、ということになる。一方で可逆圧縮を可能にしたFLACというフォーマットも存在するが、やはり一般的にはMP3が優勢であろう。そのようなMP3の再生に対して、音楽プロデューサーや研究者たちから、MP3が音楽のリスニングに与える負の影響を述べているよ、というお話。個人的には音楽は聞きこんで欲しいなぁとは思っているけれど(聞き込めるような音楽を作ってほしいなとも思っているけれど)、それと音質がどの程度関係しているか、についてはちょっと疑問に思う点もある。でも、結論を言っちゃえば、どう音楽を楽しむか、の違いでしかないよね。

原典:seattlepi.com
原題:Producers howl over sound cut out by MP3 compression
著者:Joel Selvin
日付:August 13, 2007
URL:http://seattlepi.nwsource.com/business/327319_mp3sound13.html

あなたがそれを知っているかどうかにかかわらず、MP3プレイヤーにCDをコピーしたとしても、それは部分的なものとなる。

録音された音楽を聞くための手段が、CDそのものを扱うものから、携帯MP3プレイヤーなどのメディアファイルを扱うものへと移行している。それに伴い、MP3が音楽を聞くための主要な方法として急速に広まりつつある。Appleはすでに1億台のiPodを販売しているし、インターネット上では月に10億ものMP3ファイルが交換されている。

しかし、これらのコンピュータファイルとしての音楽は、CD上のオリジナルの音楽に比べると10%未満に過ぎない。CDからMP3プレイヤーへの旅の途中に、音楽は、不要な部分と考えられる箇所をコンピュータ解析され、データを除去することによって圧縮される。それはインターネット回線に見合うだけの容量にまできつく搾られる。

CDの容量をフルに埋めたとしても、レコーディングの際にスタジオハードディスクに保存される情報の半分しか入れられないというのだから、これらの圧縮されたMP3では、実際のレコーディングのほんのわずかな部分しか含まれないことになる。これは純粋主義者にとって、レコーデッドサウンドの暗黒時代であろう。

レコードプロデューサーのPhil Ramoneはこう述べている。「あなたはひどいものに慣れることができます。あなたは何1つ味わうことはないのです。ファストフードでもそうしているでしょう?。」

Frank SinatraからRolling Stonesまで数多くのアーティストのレコーディングを手がけるRamoneは、ジュリアード音楽院を16歳で卒業した音楽の天才である。1965年、彼はクラシックアルバム"Getz/Gilberto"で9つの部門でグラミー賞を始めて獲得した。たとえ、数百万ドルを費やしたハイテクなデジタルレコーディングスタジオが造られているとしても、スタジオにいてオーディオの劣化を批判するのは彼1人ではない。

 「私たちは、私たちが創り出すものにかなり満足しています。」とエンジニアAl Schmittは言う。これはHenry ManciniやDiana Krallといったアーティストのレコーディングによって15のグラミー賞を受賞している。「問題が起こるのはその後です。そして私たちはそれに対して何一つコントロールすることは出来ないのです。」

彼らスタジオプロフェッショナルたちは、彼らの経験や、高価かつ最新のテクノロジーを用いて、作品を創りあげる。彼らは良心的であり、そして気難しい。その後、彼らは自身の作品が、iPodから小型のプラスチックイヤホンを通って再生されていることを耳にした。MP3で彼の作品が聞かれていることをどう思うかをRamoneに聞いてみた。彼は遠慮なくこう言い放つ。

「それはあまりにつらいことです。」

MP3はその音質ではなく、テクノロジーによってフォーマット戦争を勝ち抜いた。「それはスクリーンドア越しに聴くようなものです。」とMcGill大学神経科学者のDaniel Levintinは言う。彼は「This is Your Brain on Music」の著者でもある。

しかし、劣ったオーディオクオリティの価値とはなんだろう?貧弱なオーディオは、素晴らしいサウンドと同じように深く心に響くものだろうか?カリフォルニア州バークレーのMeyer Sound Labsで世界最高のスピーカーをデザイン、製作しているJohn Meyerは、そうは思わない、という。

「それはあなたを観察者に変えてしまうのです。それは脳を休みなくそれ(訳注:失われた部分)を解決するために機能することを困難にします。全ての圧縮システムは、データを捨てることが出来るという考えに基づいています。しかし、私たちは脳がいかにして機能するのかについてはよくわかりません。それゆえに、より慎重になることが必要だということです。」

実際、MP3がアナログレコードとは全く異なる経路で私たちの脳の受容器(レセプター)に達するということ示唆されている。その違いは、音楽がどちらの脳半球が処理するか、という原理と関連しているかもしれない。

「貧弱-忠実な音楽は、異なる経路で脳を刺激します。」とカリフォルニア大学サンフランシスコ校聴覚科学学科学科長のRobert Sweetow博士は言う。「異なるニューロン、おそらくはより小さなニューロンが刺激されることで、感情が保存されている辺縁系に繋がる皮質ニューロンがより少なくなります。」

しかし、 Sweetowはまた、歌詞つきの音楽が、インストゥルメンタルとは異なる脳のレベルにおいて全く異なった振る舞いをすることも指摘する。「言葉は感情を喚起します。しかし、それらの言葉が、必ずしも忠実な音楽によって影響を受けるというわけではありません。 」

確かに、50年代、60年代のティーンは、古いロックンロールレコードのメッセージを、安いプラスチックトランジスタラジオで聞いていた。LevitinもまさにそのiPodの原型ともいえるポータブルラジオで、Sly & The Family Stoneの"Hot Fun in the Summertime"を聴いていたことを思い出す。「それは非常にひどいものでした。しかし、そのサウンドは素晴らしかったです。」と彼は言う。「重要なのは、それが1インチ半のスピーカーから聞こえてきたということです。」

Levitinはまた、Enrico CarusoやBillie Holidayは、忠実な音源によるMichael Bolton、Mariah Careyなどより彼の心を揺さぶるだろうという。

彼は映画を比喩に用いてこう言う。「もし、映画に物語性がなければ、単に映画撮影技術を見るだけのことです。」

今年初め、EMI Recordsは、わずかにビットレートの高い、そしてより高額のダウンロードの提供をアナウンスした。しかし、その違いを見分けるのは、難しい。Levitinは「非常に耳のよい人でも、おそらく区別することは出来ないでしょう。」と言う。

デジタルオーディオが大幅に改善するためには、複数の大きな技術的ハードルをクリアしなければならない。ファイルは、より高サンプリングレート、高ビットレートで保存されなければならない。演算能力は向上しなければならない。新たな再生機器が導入されなければならない。(Ramoneは、HDテレビが『HDオーディオ』のモデルとなるかもしれないと考えている。)そして、インターネットが将来音楽の主要な伝達システムとなるのであれば、インターネット帯域幅もまたその要因に挙げられるだろう。

MP3などの非可逆圧縮形式のオーディオフォーマットの話、になるのかな。とりあえず、簡単なオーディオフォーマットの概略を。

非可逆圧縮に分類されるのはMP3やOggなど。これらの基本的な考えとしては、上記の記事にもあるように、主に意識的に人の知覚しえない部分などのデータを欠損させる代わりに、高い圧縮効率を得るというもの。それでも圧縮率を高めていくと、意識的に知覚できる程度にまで圧縮されることになる。この場合、圧縮時に欠損したデータは復号しても圧縮前のデータに戻ることはない(その意味で非可逆と呼ばれる)。

一方で可逆圧縮という形式もある。これはデータの欠損を一切認めない形式となる。その代わりに、特定のデータ文字列に対して、短い符号を与えることで圧縮を加えることになる。ただ、その分、圧縮効率は非常に低くなるが、圧縮前のデータが維持されることになる。たとえば、WinRARのような圧縮ソフトで圧縮したデータは、解凍しても同じデータが復元されるというのは、この可逆圧縮ゆえである。代表的なフォーマットとしてはFLACやMonkey’s Audio がある。

この議論、確かに興味深くはあるのだけれども、結論としては、どんな音楽を聴くか、または、音楽に何を求めるか、によって環境を変える必要があるよ、ということだろうか。もちろん、音質の違いが生み出す効果はさまざまあるだろうけれど、しかしそれも一様ではないことは、インストの曲と歌ありの曲との違いが指摘されていることからも明らかだろう。

このようなフォーマット論争は、それなりに歴史があり、未だにそれは続いているのであろうが、音楽に、そしてその環境に何を求めるかによって、議論の質は変わってくる。なので、単純により高ビットレートのMP3にすればいい、とか、可逆圧縮のFLACにすればいいとかいう問題ではないだろう。

たとえば、クラシックやジャズなどのような繊細なものであれば、音質は非常に重要になるだろう。それゆえにそのファンの中には数多くのオーディオオタクが含まれる。このような人達は効率度外視でより高品質の音を求める。そんなに人達に、圧縮効率がいいのですよ、といっても通じるはずもない。圧縮効率が悪かろうが何だろうが、より高音質のものを彼らは求めるのだろう。SACDやDVDオーディオなどの供給もその辺の人向けだったりする。

一方で、ポピュラーミュージックはどうだろうか。もちろん、この中にもクラシック、ジャズファン同様に音質にこだわりを持つ人も多い。ただ、ポピュラーミュージックを好む人達全体で見れば、少数派に過ぎない。ほとんどの人は、ある程度聞こえればいい、というところだろう。ある程度の品質が保証されているのであれば、その他の効率、たとえば伝送効率や保存効率を高めるための、より高い圧縮率が求められることになる。

結局は、どの程度、どのように音楽をしゃぶりつくしたいか、の違いでしかないかもしれない。

また、このような求める音質の違いは、リスニングスタイルやその環境にもあるのだろう。オーディオ雑誌を買い、コンセントを取替え、数万/mのオーディオ、スピーカーケーブルを購入するような人達と、量販店でオーディオ機器を購入する人達とでは確実に鳴らせる音質が異なる。ましてや、PCやiPodで再生するというのであれば、言わずもがなである。そうなれば、リスニングスタイルというのも異なり、前者はがっちり聴きたい人と、後者は何かのついでに聞きたい人、という違いがでてくるだろう。

また、CD対コンピュータファイルというのも、デジタルな世界での論争にしか過ぎず、世の中にはアナログマニアという人達もいて、その人達はデジタルじゃダメだアナログじゃなきゃ、といっていたりもする。

結局のところ、それぞれの環境が異なるのだから、如何に音質をあげたところで、ボトルネックは別に存在することになる。もちろん、CDで聴くほうがMP3プレイヤーで聞くよりもより高品質の音が楽しめるのだろうけれども、結局はどこかで限界を迎えることになる。まぁ、その限界をある程度認識した上で、人々は自分のリスニング環境を構築しているのだろうから、少なくとも自らが満足できる環境にいることになる。

それでも音楽を楽しむという行為自体は音楽に何を求めていても、どんなリスニング環境であっても変わらない。どう楽しむか、が違うだけでね。音楽は人の感情を刺激するものだと思う。音楽が感情を刺激する経路というのは1つではない。高音質であることは人の心を動かすための十分条件とはなりえても、必要条件ではないだろう。

取り留めのつかない文章になってしまったが、こうなってしまった原因というのは、決してMP3プレイヤーが爆発的にヒットしたから、とか、PCで扱われているオーディオフォーマットが主流になったから、とか、インターネットを介しての転送のために圧縮する必要があったから、という理由だけではなく、音質にこだわるべきだと思われるような楽曲が減りつつあるということもあるだろうね。とりあえず、聞ければいいみたいな。

その良し悪しは判断のつかないところではあるけれど、それでも人々が音楽を消費するのではなく、それと共に暮らしていく、というような世界こそが音楽にとって望ましいのだろうね。もちろん、商売にしている側としては、どんどん消費して新しいものを買って欲しいのだろうけれど。

最後に、ちょっと気になったこと。記事中には、CDをもってしてもレコーディングスタジオで録音された全ての音を収めることが出来ない、とある。もちろん、機器的な問題もあるのだろうが、インターネットを介した配信であれば、受け手のディスク容量の問題もあるが、容量無制限での伝達が可能となる。となれば、CDというデバイスの限界を超えることが出来るのではないのだろうか。もちろん、SACDやDVDオーディオのようなより音質を向上させたフォーマットもあるけれどもね。

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Comment

げ | URL | 2007.08.20 23:08
>Rhil Ramone

Phil Ramoneの間違えですよね。
heatwave | URL | 2007.08.26 01:49 | Edit
げさま

ご指摘㌧クスです。
修正させてもらいました。

ご返信が遅くなって本当にごめんなさい。
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