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『P2Pファイル共有』から利益を上げることはできるか

P2Pファイル共有を利用するユーザは数多く存在することは周知の通り。しかし、その大半は違法ファイル共有を行うためにそれを利用している。確かに違法である以上、抑制されなければならないのだけれども、それでもそのための有効な手段が見つからないでいる状況でもある。数多くのユーザがいる、そしてそのユーザアクティビティは非常に活発である、さらにそれはとどまるところを知らない、となれば、例え違法な活動が大半を占めていたとしても、それを有効に利用しないという手は無い。つまり、P2Pファイル共有から利益を上げるということである(もちろん、最終的には抑制されるべきだけれどもね)。

しかし、それは違法ファイル共有の抑制と同じように成功したアプローチというものは存在しない。確かに魅力的なネットワーク、コミュニティなのだけれども、そこから利益を上げるためには、超えなければならないハードルは数多く存在する。その辺のことを、これまでP2Pファイル共有から利益を上げようとしたアプローチを眺めながら考えてみるよ、というお話。あくまでも、『P2Pファイル共有』から利益をあげる、というお話なので、広義のP2Pから利益を上げる、というのとはまた別のお話です。

eDonkey、P2Pファイル共有ネットワーク上での有料コンテンツ配信

eDonkeyP2Pファイル共有をビジネスに利用する、そのことを強く主張していたのは、今は無きeDonkeyのSam Yaganであった。eDonkeyが人気を高めつつあった2004年、彼はP2Pファイル共有が配信サービスとしての選択肢でもあり、そのためにはエンターテインメント産業がそれに気付き、ライセンスを供与してもらう必要がある、と声高主張した。ただ、彼の主張を見ていると、当時のeDonkeyのファイル共有サービスを継続しつつ、それに有料コンテンツ配信サービスとしての機能を備えるというものであり、現在、LimeWireが主張するビジネスモデルに類似したものであると考えられる。

しかし、このようなビジネスモデルの問題点としては、そのP2Pファイル共有ネットワークにいるユーザには、当該の有料コンテンツを、ファイル共有ネットワークから無料でダウンロードできるという選択肢もある、ということ。金銭的なコストを補って余りあるメリットがあるのであればそれでもよいのだけれども、現状ではそのようなメリットが存在しているとは言いがたい。もちろん、法を犯すというリスクも存在してはいるが、法的脅威に晒される確率は非常に低いものであり、金銭的なコストと天秤にかけたときには、そのリスクが軽視されると考えられる。少なくとも、有料購入というオプションを付加するのであれば、違法ファイル共有とは切り離した形で行わなければならないだろう。それに成功しているのは、たとえばAzureusBitTorrent Inc.であるといえる。

なおその翌年の2005年、eDonkeyのSam Yaganは、多くのP2Pファイル共有企業と同じように、Grokster判決によって戦うか、負けを認めるか、はたまたサービスを売り払うか、の選択を迫られることになった。そして、eDonkeyの下した決断は、RIAAとの和解であり、eDonkey、eDonkey2000の配布停止であった。

iMesh、違法コンテンツを排除した有料ファイル共有サービス

iMesh2004年、eDonkeyがそのような主張を行っていた頃、ed2kネットワークもサポートしていたマルチプロトコルクライアントのiMeshは、より合法的なコンテンツのみを扱うクライアントの開発を続けていた。以前には、ユーザの違法ファイル共有活動を許していたiMeshではあったが、2004年7月には他のP2Pファイル共有企業より一足早く、RIAAとの410万ドルでの和解を済ませ、合法的な音楽産業と共に合法的な音楽ファイル共有サービスの展開を模索していた。

そうして2005年、iMeshは、Gnutella、iMeshネットワーク上から、大手レーベルやインディペンデントレーベルからライセンスを得た楽曲や、パブリックドメインの楽曲のみを扱うことで、合法的な有料ファイル共有サービスを開始した。また、その翌年の2006年にはBearShareを買収し、SNS機能、携帯音楽配信サービス「ToGo」へのアクセス機能を付加したバージョンを発表している

しかし、違法ファイル共有との絶縁を行うことで、iMeshが得たものは深刻なユーザ離れであった。確かにiMeshは月額6,95ドルと比較的利用しやすい価格設定のサブスクリプションサービスではあったが(一部、メジャーレーベルの楽曲はアラカルト購入)、それでも元々が違法ファイル共有になじんでいるユーザである。そうやすやすとは、有料サービスに移行するということは考えにくい。少なくとも、違法ファイル共有ユーザをダイレクトに購入へと駆り立てるというのは、それほど容易なことではない。

Altnet、Kazaaクライアント上の広告収入の分配

Altnetそんな2005年3月のこと、Kazaaクライアントに広告を掲載してたAltnetが、P2Pネットワークを介した音楽配信に合意したレコード会社に、広告収入を分配するという発表を行った。確かに、FastTrackネットワーク上でタダでコンテンツを流通させられるよりも、1セントでもそこから利益を上げられたほうがいいのかもしれない。しかし、このような提案に乗ることで、P2Pファイル共有ネットワーク上でのコンテンツの流通を認めることにもなる。

まぁ、このような提案というのは、ライツホルダーからすると非常に都合のいい話であって、広告収入の一部、というある意味では言い値のような額でコンテンツを好きに使わせろというのだから、さすがに強欲なコンテンツ産業でなくとも、飲める条件ではなかっただろう。少なくとも、コンテンツを提供するライツホルダーにとっては、それほどおいしい話ではない。結果として、このような提案に乗ったのは、一部のインディペンデントレーベルのみであり、メジャーレーベルが参加することはなかった。

また、このAltnetはKazaaやGroksterといったFastTrackクライアントの検索結果の上位に、広告や有料コンテンツを表示させてもいた。が、そのような広告表示による収益は、Altnetが主張するほどなかったようで、Altnetの親会社は財政的な苦境に立たされていたという。

このAltnetがKazaaクライアントに掲載している広告は、しばしばスパイウェアとして批判されており、多くのユーザはそのようなスパイウェアの含まれていないKazaa Liteを使用するようになっていた。そのような動きに対してKazaaを配布するSharman Networksは、Kazaa LiteはKazaaの広告収入、Kazaa Plusの売上に影響を及ぼすとして、GoogleにDMCAクレームを送付し、インデックスから削除するよう求めたりもしていたのだが、それでもこの流れを止めることは出来なかった。

そんなKazaaではあるが、その後はRIAAによるKazaaユーザへの(皮肉なことに)DMCAに基づく身元開示請求裁判や、それを元にした2003年から始まる一斉訴訟キャンペーンなどにより、次第にユーザを減らし、さらには2005年のGroster判決がとどめとなって、昨年音楽団体と和解を結び、1億1500万ドルの和解金、違法ファイル共有を不可能とする技術の導入を行うことを約束するに至っている。結局、Altnet、つまりはKazaa側からの広告収入の分配という提案は、確かにユーザエクスペリエンスを損ねるものではないが、多くのライツホルダーたちの利益を損ねると判断されるものであったのだろうと考えられる。

Gnutelligence、Gnutellaクライアントの検索結果に広告を表示

GnutelligenceAltnetがそのような提案をした3ヵ月後の2005年6月、Gnutelligenceという元LimeWire社員の運営する企業が、Gnutellaネットワーク内での検索ワードによって、クライアント上に広告を提示する、というサービスを打ち出したそのクライアントはLimeWireやBearShare、Gnutelligenceの開発したGnoozle、であったという。実際に、LimeWireやBearShareに広告が表示されていたかどうかはわからないけれど、このサービスも上述したAltnetと同様に、検索ワードにマッチした広告をクライアント上の検索結果に表示する。ユーザがその広告に興味を持ち、クリックすることでスポンサーのwebぺージをブラウズすることになる。

ただ、このような広告サービスは、Gnutellaクライアントと広告主にしか利益をもたらさない。そこで主にやり取りされているコンテンツのライツホルダーにとってはあまりに面白くない話ではある。少なくとも、コンテンツホルダーの側に利益が流れていくことはない、という点では、許容されがたいものであるのかもしれない。まぁ、まさにGroksterに判決が下される直前のサービスのアナウンスであり、その後のGrokster判決のことを考えると、ほとんどの広告主が魅力を感じないサービスとなったであろうことは、想像に難くない。

Skyrider、Gnutellaネットワークの検索結果に広告を表示

SkyriderそのようなP2Pファイル共有ネットワーク上の検索結果に、広告を表示させるというアプローチに乗り出す企業は多い。昨年の秋にはSkyriderという企業が同様のサービスを開始するとアナウンスしている。InternetWatchによると

  Skyriderの製品がどのようなものになるかは全く明らかになっていない。しかし同社の製品が世の中にどのような影響を与えるかについて3つの可能 性を示している。1つ目はキーワードベースのP2Pサーチ、2つ目はコンテンツへの無制限でよりダイナミックなアクセス、3つ目がP2Pアーキテクチャに 基づく新アプリケーションの爆発的な登場だとしている。

のだとか。まぁ、ありとあらゆるコンテンツが流れるP2Pファイル共有ネットワークにおいては、非常に効果的なキーワード関連広告を提示することが可能にはなるのだが、上述したように、そこに流れるコンテンツ自体に対価が支払われるわけではないため、同様の問題を抱えることになる。

その辺については、TechCrunchで指摘されているように、Skyriderは元々、著作権侵害防止システムを開発するCRight.Incという企業のようだ(URLも変更されていないみたいだし:http://www.cright.com/)。

システム上でやり取りされる違法なファイルを検出&ブロックするP2Pネットワーク対応ソフトを提供する会社、それがSkyRider、ということだろうか? それができるようになれば、今より多くの企業がもっと気軽にP2Pをビジネスに活用ようになることは間違いない。 Silicon Beat は、P2Pネットワークで合法っぽいコンテンツを検索する技術じゃないか、と踏んでいるし、 Om Malik は技術のことに関して同社は口が堅いけどもP2Pコンテンツを今のサイロ格納状態から救う企業になるかもしれない、と言う。

では、そのSkyriderが提供するサービスとは何なのだろうか。その詳細については2006年10月に明らかとなったが、どうもこのサービスもGnutellaネットワークをLimeWireなどで検索したときに、検索結果に広告を表示させるというもののようだ。また、CEOのEd Kozel曰く、このSkyriderの提供しているサービスは、パートナーシップを必要としない、という。つまりは、LimeWireなどのクライアントメーカーとのパートナーシップがなくとも、ネットワーク上で広告を表示させることが可能となる技術を有しているということ。その方法としては、Gnutellaクライアントに偽装したサーバをネットワークに接続し、当該のファイルのソースを非常に多いものであるかのように振舞う。それによって、検索結果の上位3つに表示させたいファイルを並べることが出来るのだとか。その辺は、VentureBeatにて図を交えて詳細な説明がなされているので参考にして欲しい(しかし、このようなハックともいえる広告表示に対して、対策を講じる動きもある)。

ただ、CEOのEd Kozelも認めるように、多くのユーザにとって、これはSPAMと認識しうるものであろう。確かに、P2Pファイル共有ネットワーク上には多くのユーザがいるのだけれども、その大半は無料であることに動機づけられている。そうしたユーザが、SPAMとも取られうる広告に直面し、更にその有料コンテンツに対して、対価を支払いうるかというとなかなか難しいだろう。

ユーザ、広告主、ライツホルダー、それぞれの利益

ここまで紹介してきた試みを見てみると、ユーザ、広告主、ライツホルダーを満足させるようなサービスはなかなかに難しいといえる。しかし、それを実現しない限りは、P2Pファイル共有から利益を上げる、という目標は達成できないだろう。

ただ、最近では、その三者に利益をもたらさんとする試みが少なからずなされている。そのような動きは、コンテンツ産業がP2Pファイル共有上の著作権侵害を抑制するために、P2Pファイル共有ネットワーク上にフェイクファイルをばら撒くFlood攻撃の副産物として始まった。

そのようなフェイクファイルは、P2Pファイル共有ユーザが違法にコンテンツをダウンロードするのを抑制するためにばら撒かれている。要はネットワーク内を偽のファイルだらけにして、お目当てのファイルに到達させないという試みである。ただ、そのようにしてばら撒かれるファイルが、単なる空のファイル、というのでは余りに不毛である。そこで、そのフェイクファイルを有効に活用する方法を模索してもいる。つまり、これまでファイル共有ネットワーク内でコンテンツを無断使用されてきたライツホルダーが、P2Pファイル共有ネットワークを利用して利益を得るような方向にシフトしてきたということである。

Mediadefender、違法ファイル共有を妨害するフェイクファイルをプロモーションに利用

MediaDefenderアンチ海賊行為企業のMediadefenderは、同社がその活動の一環として放流しているフェイクファイルに、広告、プロモーションのためのコンテンツを含ませた。

その試みの1つとして、Coca-Cola社のプロモーションが含まれているJay-Zのビデオクリップを、P2Pファイル共有ネットワーク内で、合法的に配布している。これはCoca-Cola社の要請によるものだが、当事者であるJay-Zも、違法ダウンローダーの多くが熱心な音楽ファンでもあり、そのようなリスナーにプロモーションすることは、長期的に見て望ましい結果が得られるだろう、と考えたようだ。

ただ、残念なことに、このようなクリップの配布は、フェイクファイルとして配布されており、それがユーザエクスペリエンスにどう影響を与えるかということを考えると、大成功とまではいかなかったと思われる。個人的には、デコイファイル、フェイクファイルとしてではなく、合法的に配信されたコンテンツとして流通させたほうが、ユーザの感情的な反発を生まずに済んだのではないかと思われる。少なくとも、騙されたと感じることが当該のコンテンツに対して、それを配布している企業やアーティストに対して、ネガティブな印象を引き起こすかもしれないし、P2Pファイル共有ネットワーク内にネガティブな影響を与えるものとして、クライアントメーカーやPeer Guardianによって弾かれてしまう、ということも考えられる。

また、同様の手法としては、Suretone Recordsがアーティストの楽曲/ビデオの一部分をBitTorrentを介して放流しており、その完全版のために同社のwebサイトに誘導する、というアプローチをとっている。ただ、このようなアプローチは、上述したJay-Zの一件以上に、ネットワークスパム扱いされ、ネガティブエクスペリエンスを引き起こすものだ、と批判されてもいる。このようなネガティブエクスペリエンスはユーザにとって望ましくない、というよりは、ユーザに望ましくないと思われることで、結局のところ、広告としてもプロモーションとしても機能する見込みを減じるというものであろう。

ただ、ユーザのネガティブエクスペリエンスを生み出す可能性があるとはいえ、それでも広告主、コンテンツホルダーの両者にメリットをもたらすという方向性が得られたことは前進であろう。

Skyrider、分散P2P動画ファイルへのターゲット広告挿入サービス

Skyriderそのような前進を更に後押ししてくれそうなサービスとしては、先述したSkyriderの提供する、分散P2P動画ファイルへのターゲット広告挿入サービスがある。その仕組みは、まずコンテンツホルダーが、P2Pファイル共有ネットワークに広告つきで配布するコンテンツをSkyriderに提出し、先述したような手法を用いて、検索結果に表示させる。そして、そのコンテンツをダウンロードする際に、そのユーザの居住地に基づいて最適な広告が挿入され、当該のコンテンツと同時にダウンロードされることになる。そうして、そのコンテンツの視聴の際に広告も表示される、という。また、このようにして配布されたコンテンツと広告データは、Skyriderによって集計され、コンテンツホルダーは、そのダウンロード回数や視聴回数、地域ごとの視聴回数などのデータを分析することができ、マーケティングにも活用できるようだ。

ただ、そこまでくると、ユーザのプライバシーの問題や、コンテンツコントロールに対する不快感などが生じる可能性があり、全てのユーザにとって有益なサービスとはいいがたいかもしれない。それでもコンテンツを提供してくれるのであれば、というユーザにとっては魅力的なサービスとも言える。実際に、そのようなユーザデータの収集やコンテンツコントロールは、日常利用している多くのサービスでも行われているわけだしね。

YuMe Networks、BitTorrent配信コンテンツに動的に広告を挿入

YuMe NetworksこのSkyriderのサービスを更に高機能化したものとして、YuMe Networksが4月に発表した動的な広告挿入サービスがある。これはBitTorrentを利用して配布したコンテンツに、広告を動的に付加するというもの。ITmediaによると

広告はターゲットを地域で絞ったり、リアルタイムでカスタマイズしたり、ダウンロード済みのコンテンツ内の広告メッセージを更新したりすることが可能という。

また、そのプレスリリース(PDF)によると、このような広告はダウンロード済みのコンテンツ内で、ストリーミング表示されるようだ。このサービスでも、Skyriderのものと同様に、コンテンツプロバイダーは広告の表示に関する情報のフィードバックを受けることができる。また、この技術に関してはAzureusとの提携も行っており、どちらかといえば、BitTorrentなどを利用したコントロールされたファイル共有ネットワーク上での配布、というアプローチとなるのだろう。

ただ、主にBitTorrentで利用されているとはいえ、コンテンツのコントローラビリティを担保した状態で動的に広告を挿入することが出来ることを考えると、BitTorrent以外のP2Pファイル共有ネットワーク内での配布も可能であろう。

MediaDefender、アートワークにブランドロゴを施した楽曲ファイルを配布

MediaDefender2007年7月、MediaDefenderは、無料で楽曲を配信し、その楽曲のアートワーク部分にブランドロゴを表示させる、という方法でブランド戦略の一環としての広告アプローチを展開している。これは、広告主であるテレコム企業SprintがAtrantic Recordsから配信およびブランドロゴを挿入する権利を購入し、それをMediaDefenderがP2Pファイル共有ネットワーク上で、配信するというものであった。ただ、その手法は、著作権侵害と抑制するための試みとも並行して行われていたため、一部ではスパムだと批判をされてもいる。

このアプローチによって、レコードレーベルは広告収入を得ることができ、広告主は自社ブランドとアーティストを結びつけるというブランド戦略が可能となり、更にはスパム的な手法によって著作権侵害も防げるという。個人的には、スパム的手法によって海賊行為を抑制したとしても、それによってユーザがネガティブエクスペリエンスを経験することは、(アーティスト、広告主双方の)ブランド戦略においてもネガティブな効果をもたらすかもしれないと考えてしまう。よりP2Pファイル共有ユーザにとってポジティブな提供方法であればそれは解決するのだろうが、現状では著作権侵害を妨害するアプローチと並行して行われているために、なかなかに難しいという側面がある。

ただ、MediaDefenderも、このようなアプローチによって生じるユーザのネガティブエクスペリエンスが、広告主に対してもネガティブな効果を生み出しうることを理解してはきている

 

これまで見てきたように、徐々にではあるが、ユーザ、ライツホルダー、広告主を満足させうるアプローチを模索する方向の進みつつあるようにも思える。もちろん、Mediadefenderのようなアンチ海賊行為企業が展開するサービスには、少なからず違法ファイル共有の抑制というアプローチが含まれることになるが、それでもこのようなアプローチが、よりユーザにとってポジティブなものとして次第に浸透してくれれば、P2Pファイル共有のもつコンセプトが変わっていくのではないかと思う。

現在のP2Pファイル共有に対して、人々が主に抱いているコンセプトは、残念なことに『違法ファイル共有のためのツール』である。もちろん、有益且つ合法的な利用のためのコンセプトも含まれてはいるのだが、残念なことにそれはほんのわずかな部分に過ぎない。

しかし、MediaDefender、YuMe、Skyriderの行っているようなアプローチは、違法ファイル共有のために流通しているコンテンツから利益を上げるというアプローチではない。エンターテインメントコンテンツを求める人が集うP2Pファイル共有ネットワークに、その需要に合致したファイルを放流することで利益を上げるというものになるだろう。そこにいる人達は、エンターテイメントコンテンツに対する、高い需要を伴った人達である。その多くは無料でコンテンツを楽しみたい、という人達なのだろうが、それでも潜在的な消費者でもある。

より多くの人にコンテンツを提示することによって利益を上げる、それは何も新しい試みではない。少なくとも、テレビやラジオ、雑誌などこれまでの広告ビジネスの延長線上にある。無論、P2Pファイル共有ネットワーク上でのそのような利用が進んでいないのは、1つのは違法ファイル共有に対する需要が最も高いということが考えられる。それによって、広告を挿入したコンテンツへの需要がさほど無いのではないか、という指摘もごもっともである。さらに、わざわざ違法ファイル共有で溢れかえっている現状のP2Pファイル共有ネットワークを利用せずとも、それらを駆逐した後に、新たなアプローチを考えればよいでは無いか、という意見があるのも承知してはいる。

しかし、良くも悪くも現在のP2Pファイル共有ネットワークは非常に多くの人々を抱えており、そこでのコンテンツの流通は、世界規模で見ても最大級のものであることは疑いない。そして、それを抑止するための効果的な術は存在しないのである。といっても、違法ファイル共有に目をつぶれ、ということではなく、違法ファイル共有に対しては法的措置などを含めた何らかの対処が必要である、という観点に立って、それと同時に違法ファイル共有のオルタナティブを提供することが必要だ、ということだ。

そうしたオルタナティブを提供すること、それこそがP2Pファイル共有のコンセプトを変えるのだと思う。もちろん、劇的に変えるなどということは不可能であろう。それでも、徐々にでもそのようなアプローチが浸透していくことが、最終的にはP2Pファイル共有の『違法ファイル共有のためのツール』というコンセプトから脱却するために必要となると考えている。

広告主に最大の広告効果をもたらし、ライツホルダーにとって適切な利益をもたらし、ユーザにとってポジティブなユーザエクスペリエンスをもたらすオルタナティブなアプローチ、それによってP2Pファイル共有の人々の中にあるコンセプトを変えること、それが違法ファイル共有を抑制することにも繋がると思うのだけれどもね。法的措置だけでは、違法ファイル共有が抑制されるには至ってはいないのだから。

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