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映画盗撮防止法を全力で批判してみる

映画盗撮防止法が去る8月30日に施行されたのだが、このようなブログを書いている私としては、非常に気に喰わない話だ。簡単にこの法律を説明すれば、映画海賊行為を防止するために、私的複製の範囲を狭めるというもの。

まず、簡単にこの法律が成立するに至った経緯から。

映画の海賊版は海賊業者による物理メディアでの販売、P2Pファイル共有等での流通など、広く出回っている。そのソースとなっているのが、映画館での盗撮行為なのだけれども、これまでの著作権法ではそれを取り締まることができなかった。というもの、著作権上許されていた「私的複製」のための録画だと言い張られれば、たとえ海賊業者の一味であろうと、インターネットに流してやろうという輩でも、その時点では犯罪として立証することはできず、みすみす見逃さざるを得ない状況であった。

ただ、ここで1つ明記しておきたいこととしては、映画館側がそれを犯罪として立証することができなかっただけで、施設の管理権限を行使して、撮影を止めさせる、追い出す、撮影を禁止するということは可能であった。

まぁ、それはとりあえず置いといて、「私的複製」を悪用した言い逃れによって、これまで取り締まることのできなかった映画盗撮。しかし、この法律によって、映画館で行われる映画の撮影行為を一律「映画盗撮」とし、その行為自体を違法とすることで取締りを可能にした。悪意をもって表現するならば、映画館での私的複製行為を違法とした、というところ。

そのような映画盗撮を取り締まらなければならなくなった理由として、映画産業側は深刻な経済的な損失をあげている。これに関しては、以下のような議論が、第166回国会 経済産業委員会 第10号(平成19年5月9日(水曜日)) にて行われている(発言部の太字は引用者による)。

太田(和)委員  民主党の太田和美でございます。

(中略)

  まず、立法事実に関してでありますが、盗撮された影像をもとに年間にどのくらいの海賊版映画DVDが生産、販売されているのか、また、これによって我が国の映画産業はどれぐらいの被害を受けているのか、お願いをいたします。

肥塚政府参考人  年間の海賊版DVDの生産ですとか販売枚数については、海賊版という違法行為の性格 上、正確に把握できておりませんけれども、海賊版が日本の映画産業に与えた損失につきましては、全米映画協会の調査がございまして、二〇〇五年で年間約八 百二十億円というふうに推定されております。ちなみに、全世界では、たしか十八ビリオンぐらいという計算をしていたと記憶しております。

  このうち、盗撮が原因と思われるものの損失は約二百億というふうに推定されております。これは、映画劇場主の損害にDVDその他のものが、百八十億に乗 りまして二百億というふうに推定されております。昨年は、「ダ・ヴィンチ・コード」あるいは「硫黄島からの手紙」、「ゲド戦記」、「武士の一分」といった 主要な作品について日本の映画館で盗撮が行われた、それで映画業界に大きな被害をもたらしているというふうに聞いております。

太田(和)委員  私の個人的な感じですが、海賊版DVDの中には本物と見まがうような鮮明な画像のもの も最近はあるようです。しかし一方で、盗み撮りするわけですから、ピントが合っていなかったり、画面サイズがスクリーンと合っていなかったりするものもあ るそうです。また、人のシルエットが映り込んでいたりするものもあるそうです。つまり、ちゃんとした鑑賞にたえられる影像かどうかでまだまだ購入の際にリ スクがあるのが海賊版ではないでしょうか。これを、映画館に足を運ぶ映画が好きな人がどの程度買うのでしょうか。さらに、海賊版を見たからもう映画館には 足を運ばないという人がどの程度いるのか。一方、映画が好きで、映画は大画面で見るのに限る、家で幾ら四十インチの画面で見てもつまらないという人は、そ もそも海賊版には目を向けないでしょう。

  ですから、映画産業の被害というのは、海賊版を買うことによって本来映画館に足を運ぶはずの人が足を運ばなくなる数、そして、海賊版を買うことによって 本来正規のDVDを買うはずだったのが買わなくなった数、この合計だと思います。これはなかなか把握できないと思います。しかし、それにしても、先ほど示 された被害額には一体どのような算出根拠があるのか、お願いをいたします。

肥塚政府参考人  先ほど申し上げましたように、全米映画協会の調査というもの、そういう数字として私ど も承知しておりますけれども、日本の劇場興行主の海賊版による損失額が二〇〇五年で約百八十億円というふうに推定されている、これはほぼ盗撮による被害と いうふうに考えられております。それからまた、ビデオ、DVDの販売あるいはレンタル等でも大きな被害が出ているということで、約六百四十億というふうに 推定されておりまして、この中にも盗撮に由来するものがあるということで、これらを合わせて二百億円以上の損失というふうに推定しています

  調査内容は、詳細は公表されていないようでありますけれども、アメリカ、イギリス、スペイン、ドイツ、フランスといった二十二カ国で同じような調査が行われているというふうに承知しております。

太田(和)委員  大きな被害が出ているだろうということは想像できるんです。ただ、これは後ほど質問い たしますが、盗撮防止法案は、十年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金またはこれらの併科と、大変重い罰則を科しております。これからは、映画館に入る のに持ち物チェックを受け、暗視カメラをつけた監視員に見張られながら映画を見るということになるかもしれません。映画の愛好者に納得して受け入れていた だくためにも、私は、映画産業が受ける被害、法律の立法事実、これはもう少し正確に示す努力が必要だったのではないか、これは指摘だけさせていただきま す。

と、何とも歯切れが悪い。確かに損失を生んでいることは間違いないが、その一方で、その算出方法は流出している海賊版を市場価値に換算しただけのものであるがゆえに、過剰に評価されているという側面もある。なので、太田議員の指摘している本来の被害額とは異なるものと考えてよいだろう。

さて、上記のことに絡んで、私が非常に疑問に思うことを述べると、では「日本において盗撮された映画によって、どの程度の経済的被害を生んでいるのか」ということ。少なくとも上記の被害額は、日本以外の国で盗撮された映画によるを数多く含んでいる。もちろんその中には、邦画等の日本で盗撮された映画も含まれるだろう。しかし、現実にはその大半が海外で盗撮された映画に、日本語字幕をつけたものなのである。

しかし、上記の説明では、日本において行われている映画盗撮によってどの程度被害を被っているのかは全くわからない。にもかかわらず、例え海賊行為に関わっていないとしても、劇場での映画の撮影は私的複製ではなく違法行為とされ、最大で懲役10年、罰金1000万円が科せられる可能性がある。

上記委員会において、民主党の川内博史議員は、この法律を「高校生等があるいは中学生等が、軽い気持ちで名場面を、自分が気に入っている場面を携帯電話のムービー機能でぽっと撮りました、そうすると犯罪者にされてしまうという法案」と指摘し、「著作権は、本来、私権を定めているものであり、映画業界がもし仮に大変な被害をこうむっているのだということをおっしゃるのであれば、その被害の防止のためには、本来、権利者が自主的な努力をまずすべきであって、いきなり警察に通報して逮捕してもらう、何かガードマンがわりに警察を使うというようなことがあってはならないというふうに」思うと述べている。

その点に関して、甘利経済産業大臣は以下のように述べている。

甘利国務大臣  

  まず、いきなり携帯電話で十秒撮ったら逮捕されちゃうと。しかし、法律というのは全体で構成要件をなしていますから、この一条の目的を読む限り、委員長 が御提案のこの法律を読む限り、一条で、「映画の複製物が作成され、これが多数流通して映画産業に多大な被害が発生していることにかんがみ、」つまり、映 画の作品として流れていることにかんがみと。十秒間撮ったものが作品として流れるとは思えない。ですから、全体の法律構成で、それは当然、そんなところで 逮捕したら不当逮捕と言われるに決まっているのであります

(中略)

これからも、間違っても、高校生がちょっと撮ったのをいきなり逮捕するぞというようなことがないように指導はしてまいります。

一足先に、いかなる映画の撮影をも盗撮として違法化した米国はどうなっているかというと、

川内議員が例に出したようなことが、実際に逮捕にまで至っている。いかに指導を徹底したところで、親告罪であるため映画館側が頑なに告訴するといえば逮捕されてしまうわけだ。甘利大臣が述べているように、当然逮捕に対しては不当逮捕だと言われているのだけれども、現実には「不当逮捕だと言われている」だけで逮捕されていることには変わりない。

 

もちろん、個人的には、たとえ私的複製目的であったとしても、映画を撮影するのは控えたほうがいいと思ってはいる。これは違法だから、という理由ではなくモラル、マナーの問題としてね。軽い気持ちで映画を撮る、という行為は大抵、携帯電話やデジカメのビデオ機能を利用してのものだろう。少なくともそうした行為は他のお客さんの迷惑になる。だから、控えるべきだとは思うけどね。

この映画盗撮防止法に関して、非常にクリティカルな指摘をしているブログエントリがあるのでご紹介。

誰が作ったんだこんな法律。 - 企業法務戦士の雑感

非常に素晴らしい論考がなされているので、是非とも読んでいただきたい。

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Comment

もにゅりんこ伝説 | URL | 2007.09.04 04:48 | Edit
結局のところ、これまで声高に叫ばれてる"著作権"っていうのは金儲けに関することだけなんだよね。
映画の盗撮とはいうけど、撮影した映画を個人で楽しむ分には問題がないなら販売している人間を逮捕して根絶すればいいわけで・・・

たかが金儲けのためだけに法律を作る必要があるのかどうかって話になるような気がする。
もにゅりんこ伝説 | URL | 2007.09.04 04:52
極端な話でたとえるならコーラが売れないから毎日1本買うことを国民に義務付ける法律を作るのと根本的には同じだと思うなー
まず業界で努力をしていただくべきかと

キャラグッズの海賊版には法律作ってもらえないのにね

やっぱお金で法律ってできるのかなあ
匿名のPeerさん | URL | 2007.09.04 23:30 | Edit
また、警察利権の温床の裁量法ですか。全く学習しない国ですね、日本と言うのは。
全国津々浦々まで、パチンコという民営ギャンブルが蔓延ってるのは、
在日朝鮮人云々よりも、警察利権となっているのが理由なんですが。
確信的にやっている可能性もありますが、ウンザリするほど頭が悪い。
こんにちわ | URL | 2007.09.07 12:39 | Edit
映画って制作費が馬鹿高いです。ご存知のことと思いますが、そのために映画の著作権の保護は70年と保護期間が長いわけです。

アメリカの超大作ともなると、海外に輸出して始めてようやく利益が出るようです。
ですから、公開前に盗撮されたり、勝手にDVD頒布されたりすると、収入が減って採算が取れなくなっちゃうわけで・・。だから、この点は、しょうがないんじゃないかと思います。ボランティアで映画作ってるわけじゃないですしね。

それよりも、「ダウンロード違法化/iPodの補償金対象化」がほぼ決定した事の方が私的複製の範囲を狭める重大事だと思います。条文になるのはまだ先でしょうが、このままだと、RIAAの採った手法が近いうち日本でも見られるようになりますよ。

なんとしても、これを全力で阻止しなければ!なんとしても。

http://xtc.bz/
匿名のPeerさん | URL | 2007.09.07 21:53 | Edit
儲からないから法律で規制して貰おうというのは、
儲からないから談合を黙認してくれというのと同義。
heatwave | URL | 2007.09.14 06:16 | Edit
もにゅりんこ伝説さま
コメントありがとうございます。

何とも業界本位な感じはしますよね。
正当にお金を払ってくれるお客さんを大事にしてくれるならまだしも、そんな人たちの利便性を損ねたり、制限したりすることで、本当に産業は発展するのか?と思ってしまいます。最終的には、自分達に返ってくると思うんですけどね。

米3さま
まぁ、どっちかというと今回のケースで言えば、訴えられれば警察も嫌とはいえないわけですから…。馬鹿馬鹿しいと思っても、訴えがあればそれに従わざるを得ないと思いますよ。むしろ、警察を私的利益のために用心棒代わりに使うことに問題があるのでは、と考えてしまいます。もちろん、法がある以上正当なのですけれどもね。ただ、感覚としてそうだということです。

こんにちはさま

確かに映画の製作費を考えると、利益に関してシビアになるのも理解できますが、あまりにシビアになりすぎで、一般の観客にまで悪影響を及ぼすということまでは、理解しかねます。海賊行為に対して、ピンポイントで抑制できる手段があればいいのですけども…。

それはそうと、私的複製に関連したエントリを2つ立ててみました。ご満足いただけましたかしら?

本当に、阻止しなければならんことだと思います。

米5さま

現状では、クリエイターがパブリッシュするのに、必ずしも大企業の下でなければならないという時代ではなくなりつつありますので、文化保護の名目の下に大企業の過剰保護を促進されるのは、ちょっとどうなんだろうと思ったりもします。守られるべきはクリエイター・アーティストであって、企業の利益ではないと思っているのですが…。その点で、現行の著作権というのは、産業保護に傾斜しすぎていると思っています。
mint | URL | 2009.10.01 23:31
ストーカーとかに追われてる人とか、恨みを買う仕事の人は、外出中常にICレコーダーを回してたりするんですよ。
最近はデジタル技術の進歩で映像まで撮れる携帯用監視カメラもでてきています。
そういうのが一切使えなくなるわけですから、そういう状況の人にとっては不便ですね。
個人用監視カメラは、痴漢冤罪に対する対策として注目していたのですが、これではどうも……

そもそも複製が容易になった時代に法律でそれを規制するのは、保護産業だと言ってるに等しいです。
法律がなければ潰れるような保護産業は、本来潰れるべきですし。
これまでの数十年間に、何万本もの映画が作られてるんですから、これから一切映画が作られなくなっても普通の人は困らないと思います。
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