スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

それでもレコードレーベルは必要だ、少なくとも今は

前回のエントリでは、レコードレーベルに拠らずに成功しうる可能性が示されつつあるよ、という記事に対して、それでもレコードレーベルのアドバンテージもあるし、その領域においてはまだまだ重要な役割があるというお話をしてみた。ただ、時代の変化と共に、音楽を独占的に支配してきた既存の音楽産業に対して、それとは別のルートが示されたということは、音楽産業にとっての潜在的な脅威となりうる存在でもある。しかし、そのようなルートは音楽産業とて利用可能なものである。でも、いつまでも既存の音楽の流通にこだわり続け、オールドモデルの延命ばかり図るようでは、レコードレーベルの存在意義が薄れていってしまうのではないかな、というお話。

原典:ars technica
原題:Radiohead still needs major label to let world see its “Rainbows”
著者:Eric Bangeman
日付:October 11, 2007
URL:http://arstechnica.com/news.ars/post/20071011-radiohead-still-needs
-major-label-to-let-world-to-see-its-rainbows.html

Radioheadには、Nine Inch Nailsに続いて、レコードレーベルとの縁を切った人生を送るほどの準備を整えてはいない。彼らは、ファンが決めた価格で、ニューアルバム『In Rainbows』をWebサイトからダウンロード可能にしたが、そのアルバムはCDで、そしておそらく、4大メジャーからリリースされることになるだろう。

Toronto Starによると、バンドのマネージャーは、Music Weekのインタビューで、大多数の人々に彼らの楽曲を届けるためには、CDやレコードレーベルを依然として必要していると述べている。「私たちはCDを届けるために、CDを配布するためのインフラを持ったレコード会社を必要としているのです。」

レーベルからCDを出すメリットというのは今の時代においても存在している。少なくともレーベルは多くの人々にリーチしうるだけのリソースを有しており、それによってアーティストは音楽をリリースする最良の機会を得る。また、デジタルディストリビューションにて楽曲を入手する人たちだけがすべてというわけではないし、オーディオマニアなどはMP3のようなフォーマットを好みはしないだろう。さらに良くも悪くも既存の商業ラインに乗らなければ、エアプレイしてもらいにくいというところもある。

ただ、そうした状況はあるとしても一部の「既に」成功している人にとっては、新たな手法を選択するだけの余裕が存在する。

しかし、既に成功している人たち、たとえばRadiohead、Nine Inch Nails、Madonna(Wall Street Journalによると、彼女はWarner Musicに別れを告げ、コンサートプロモーションフィルムの契約によって得られる1億2000万ドルを選んだ)は、彼らのファンに音楽を届けるための新たな方法を模索するだけの余裕がある。

ただ、新人アーティストには当てはまらない。彼らがビッグになるためには、アーティストたちは依然として、レーベルのプロモーション、CDのプレスや流通、ラジオでのエアプレイなど、レーベルが得意とするところに頼らざるを得ない。Alicia KeysやNickelbackといった「新しい」アーティストたちが、現在のレコードレーベルなしに、iTunes Storeの『Top Songs』の座を勝ち取ることができた、成功することができたとは考えにくい。

この辺の指摘は重要だろう。現実を考えるとこうした選択を積極的にできるのは、すでに影響力を持ち合わせている人たちに限られており、それ以外のアーティストにとってはなかなか採用し難い選択肢でもある。個人的には、新人アーティストの中でもインディペンデントのアーティストなどはレーベルの力を借りずに積極的にこうした選択肢を採用しているようにも思える。一番つらいのは、中堅どころのアーティストではないかな、と思えるのだが。

レーベルはまだまだ多くのアーティストにとって必要な存在であるのだけれども、それでも変化の可能性もある。インターネットによって、パフォーマーがーオーディエンスと直接繋がることがここ数年にわたって増大を続けているし、それは留まることを知らない。また、経済的なインセンティブも理由として挙げられる。たとえばマドンナ。彼女は過去にリリースした4枚のCDを米国内で1040万枚売った。これに対して、Journalによると、過去3回のツアーによるチケット収入は、なんと3億8500万ドルであったという。

それでも、新たなアーティストたちが、レコード会社の援助無しに、それと同様の露出と人気を達成することができるようになるまで、レーベルが果たす重要な役割がなくなることはないだろう。ただ、これまでとの違いは、そのような状況がいつまでも続くことをレーベルが期待できなくなったということだろう。

確かに、ニューカマー達にとってレコードレーベルのプッシュは、その成功のための鍵となっている部分もある。しかし、現在の問題は、そのプッシュされるニューカマーが非常に限定されているということだ。前回のエントリで紹介したNew Context Conference 2007のビデオでも言われていたが、本人が望んだとしても自らの楽曲を人々に聴いてもらう機会を活かすことができない、というジレンマを抱えたアーティストがいたり、Demonoidを奪われたカナダのファイル共有ユーザが嘆いているように、たとえレーベルにサインしたとしても、プロモーションをかけてすらもらえない飼い殺し状態のアーティストだっている。

レーベルにはプロモーションをかけてもらえず、ネット上のリソースを使ってセルフプロモーションをかけようとしてもレーベルにとめられ、そうして人々に音楽を届けることができないままに、くすぶり続けているアーティスト。レーベルは「売れる(と見込んだ)」アーティストを売ろうと躍起になっている。しかし、彼らが売りに出そうしているアーティストこそがリスナーに受け入れられるという保証はどこにもない。ならば、より多くの音楽をリスナーに届け、可能な限りリスナーにアプローチするというのも音楽ビジネスにとって必要なことになるだろう。

もちろん、音楽レーベルがよりオープンになって、アーティストのプロモーションを促進したからといって、誰しもがスターダムになるわけでもないし、Web上で注目を集めるチャンスが廻ってくるわけではない。ただ、少なくともその可能性を担保することも必要になるのではないだろうか。

arsの記事で指摘しているように、レコードレーベルの重要性が維持されるのは、レコードレーベルのプッシュが最も効果を持つ、という存在でいられる間のことでしかなくなりつつある。もちろん、その役割は、確実に他のサービスやルートに引き継がれるというものでもないのだろうが、一方でその役割は既存のレコードレーベルでなくてもかまわないことにもなるかもしれない。

まだまだ音楽産業の側にアドバンテージは多くある。それを活かせるかどうかは、音楽産業次第なのだろうね。

RadioheadのギタリストJonny Greenwoodは彼らがWebサイトで販売している『In Rainbow』についてこのように語っている。

アルバムのダウンロード版の販売がスタートした今、その音質(160 kbps)が悪いという非難の声も上がっているが、ジョニーは同サイト(引用注:RollingStone.com)に対し、「僕らはiTunesよりちょっと良くしようって決めたんだ。CDの音質にはしないよ。そのためにCDがあるんだからね」と語っている。

Trackback

Trackback URL
http://peer2peer.blog79.fc2.com/tb.php/777-2e5dc2b9

Comment

Ripple | URL | 2007.10.13 02:14
レコード会社なんてもう要らない!という意見は米国に限らず日本でも見られるになってきた意見ですね。個人的には、レコード会社を通さずにRadioheadやNIN、Princeらという存在たちを産み出していかない限りはとても言えたもんじゃないと思います。

iPodやiTunes、MySpaceやYouTubeがどれだけ叫ばれても、未だCDに中核を握られ続けています。勿論、変化はテクノロジーな方面も含め現在進行形で進んでいるのでいずれは…、でしょう。そうして変化なのか? いや、レコード会社が業界にとって都合のいい単位や枠だったことを考えると、レコード会社みたいなものはCDが無くなっても延々と必要され存在し続けるのではないかと自分は思います。音楽配信で問屋がなくなるのかと思えばデジタル問屋が出てきた様に。

前回の記事の最後の文、レーベルに問う~への自分なりの考えとしては「そういうこともある」としか。隣の芝が青いと喚いても、自分の芝が隣の芝に代替し得たかは分かりません。プロセスを同じくすれば…なんて甘い世界ではない。そしてフォーカスを広げて現れる、広大な枯れた芝もしっかりと見るべきです。まぁレコード会社に身を寄せようが寄せまいが成功する人は成功します。前者の割合が高いだけでして、とどのつまり就職活動における学歴や資格みたいなもんでしょうか。もし身を寄せてなければそれこそ親がコネのある人間だとかじゃないと成功は厳しいですよ。自分の錆びた経験則ですが。

ま、誰もがビッグになりたい訳じゃないんですから、時代が変化していく中、マイペース派?に明るい可能性が開けたことは大変喜ばしいこと。ビッグ派含め、うまーく適材適所化してくれれば。

決して音楽業界はオールドモデル主義ではなく、ニューモデルにもなろうとしてると思いますよ。ただリスナーも含めて業界全体での歩調のズレが致命的ですね。目先の自分の利益しか考えてないことばかりの現在です。デジタル技術の光と闇でしょうか。ともかく、それらのズレを上手く結び付け、清浄正常化する為のヴィジョン、皆々が集う宣言みたいなものが出てくるといいのですがねぇ。
heatwave | URL | 2007.10.13 20:50 | Edit
Rippleさま

たびたびのコメントありがとうございます。

ほぼ同意です。更にいえば、たとえレコード会社を通さずに継続して大成功を収めるアーティストが存在するようになったとしても、レコード会社なんて要らなくなることはないのでしょうね(もちろん、存在意義は薄れるのでしょうが)。

少なくとも、崩壊すべきはレコードレーベルの独裁者スタイルであって、その流通やプロモーション、管理に関してのノウハウというのはやはり必要とされるでしょう(その中で必要とされる制限というのもあるのでしょうが)。ただ、現状を見る限りでは、時代の流れについてこれていないかなという感もあります。

「芝」のたとえですが、個人的なイメージとしては、その青く見える芝はレコードレーベルと契約したアーティストであっても、庭に持っているのだと考えています。ただ、アーティストがその芝生に寝転びたいと思っても、レーベル側がその周りに鉄柵を敷いているというイメージでしょうか。レーベルがそれを許さないのであれば、引っ越せ、という選択肢ではなく、レーベルに鉄柵を外してくれと要求しろ、という選択肢をとるべきだと私は考えています。特に、ニューカマーの場合は、どのようなチャンスであれ、貪欲に求めているでしょうから。

音楽産業は変化を遂げつつあるのは認められるのですが、その中で、オールドモデルに沿ったニューモデルを構築せんとしているようにも思えます。もちろん、既存の音楽産業なりの良さが存在しているのも事実ですが、それ以上に目先の自分達の利益を最優先にしているように思えてなりません。

音楽ビジネスの基本である「聴く、好きになる、購入する」の3ステップを考えると、音楽産業は、セールスの減少を「聴く」ことから利益を上げることで何とかまかなおうとしているようにも思えます。その一方で、一部のアーティスト達は、より多くの人に聴いてもらい、好きになってもらい、そしてCDではなく、チケットやファングッズを購入してもらう、という選択を取りつつあります。ズレが拡大していけば、音楽産業の負う痛手はますますもって大きなものになるのかもしれませんね。
Comment Form
公開設定

プロフィール
heatwave Author
:heatwave

RSS Jamendo twitter tumblr Creative Commons Attribution 2.1 Japan
ブログ内検索
記事リスト
最新の記事
全記事一覧
他所で書いてるブログ

P2Pとかその辺のお話@はてな

アーカイブ

カテゴリー
最近のコメント
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。