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着うた配信から考える音楽のこれから(2/2)

今の音楽産業に必要なものは、人々が音楽に再び目を向けてくれるよう努力することであって、過渡期であったからこそ成立したものにいつまでも期待し、それに依存した未来を描くことなどではない。

着うたを利用する人たちの多くは、同じ楽曲に対して別のデバイスで再生するためにお金を支払っている。 RIAJの発表している 2006年度「音楽メディアユーザ実態調査」 によると、 着うた利用者の6割近くが着うたとは別に、同じコンテンツに対してお金を払っている。もちろん、アルバム購入やレンタルなども多く、一概に全く同じコンテンツにお金を支払っているとはいいがたい部分もあるし、どちらが先か、という点も言及されていないので、判断しがたい部分もあるが、それでも1つのコンテンツに対して支払う額が増しているのは事実だろう。そうして特定の楽曲、アーティストにお金が流れることで、その楽曲やアーティストから無数に張り巡らされている音楽の糸を手繰る、という行為が抑制されうる(既存の売れ線の人たちにその音楽の糸を感じさせるものが少ないのもあるが)。

特定の楽曲、特定のアーティストから、いかに多くのお金を搾り取ることができるか、ということにこだわっていては、音楽産業にとって未来は暗いものとなるのではないだろうか。そのような消費財としての音楽は飽きが来れば簡単に捨てられてしまう。それを補うためには、再び大々的なプロモーションをかけ、次の楽曲、次のアーティストを売り出していかなければならない。あまりに不毛だろう。もちろん、プロモーション自体を否定するつもりはない。どんな時代になっても、音楽を知るためのプロモーションは必要だろう。しかし、そのプロモーションだけに頼るやり方だけでは、現在のジリ貧状態を脱することはできない。その一方で、人々の目を音楽に向けることはプロモーションの効果をこれまでの2倍にも3倍にもしてくれるだろう。

単にお金の使い道が音楽に向いていたというバブル時代の到来を再び望むことは、音楽産業の発展には繋がらず、結局はまたバブルがはじけて過去をうらやむだけのことになる。音楽産業は利用できるもの全てを駆使して、次の「音楽のあり方」を模索するべきだろう。

自己表現の1つとして、着うたというスタイルがあることは否定し得ないし、それを良しとする人を否定するつもりはない。しかし、その対象となるものが、音楽産業のプロモーションの結果としてのみ選択されるという現状は、音楽産業のジリ貧を回復してくれるものではないだろう。人々の共有している「流行の音楽」の中で、私はこれが好きだ、あれが好きだといったところで、それは限られた楽曲、アーティストに限定されてしまう。

創作における文化というものは、『その価値観が(そこに含まれる)多くの人に共有されていること』にあると思っている。しかし、その価値観が、音楽産業の意向によって限定され、結局は音楽産業の衰退を招いていると考える。自らの個性としてスタイルを提示するためのツールだとしても、結局は限定されたものを、その価値観を内包する人同士の間で提示しあうだけのことでしかないからだ。つまりは、自己表現といっても、音楽産業の戦略の範囲内での自己表現に過ぎず、それ以外のものを受け入れるだけの土壌を育てることにはなっていないということだ。

自己表現としての音楽を、より広範囲に広げること(自己表現としてポジティブに受け入れられる土壌を創りあげること)が音楽産業のベースを発展させるためには必要となるだろう。限定された楽曲、アーティストに価値を見出させるのではなく、音楽そのものに価値を見出させるよう促すこと、それこそがスタイルとしての自己表現の幅をより広範なものとし、リスナーが音楽に対してより貪欲になることに繋がる。そのような目的にこそ、着うたは利用されるべきであると考える。

人は、(自分が内包されている)文化への同調・受容を示すと同時に、その中での独自性を表現したがるものである。しかし、多メディア化、多様な価値観が育ちつつある現在において、既存の文化への同調をもってビジネスを進めることは決して利益を生み出さないだろう(なぜならば、音楽産業がプロモーションによって作り出している既存の文化の縮小は既にはじまっているのだから)。独自性を表明するにしても、既存の似たり寄ったりのものに限定されてしまう。いかに独自性を表明するにしても、彼らを内包する文化を超えては理解されないのだから。

ならば、より広範な文化への同調・受容がなされるよう努力すべきだと考える。少なくとも、現在の音楽産業の試みはそのような多様な音楽を受け入れるような体制にはない。より多くの楽曲を、アーティストを、音楽を文化に内包することで、それに同調する、受容するという欲求は多様な楽曲、アーティスト、音楽に向けられる。その中で独自性を見出すことは、その音楽の海へのダイブに他ならない。そんなダイブによって得られたミュージックエクスペリエンスを着うたという形で表現する、表明するということに対してはやぶさかではない。

そうなったとき、果たして着うたという、単にデバイス内の利用方法だけの違いに過度の価格差をつけ、二重に売りつけることは意味のあることだろうか。より多くの人に音楽の多様なスタイルを表明させることは、音楽の海への更に深いところへの潜行を促すだろう。ならば、それは音楽への欲求を促進するためのツールとして利用するべきであって、わざわざそこから利益を上げることを考える必要はない。むしろ、不必要な障壁を取り払い、いかなるチャネルから購入した音楽であっても、それをどのような方法であれ、好きに利用させる方向に向かうべきだろう。同調を表明するものであれ、その中での独自性を表明するものであれ、私的な空間の中に音楽を示してくれる機会でもあるのだ。

そう考えると、着うたから利益を上げることばかりを考え、他の媒体から入手した楽曲を着うたとして利用させること、またはその逆を良しとしないやりようは、結局のところ、旧来のビジネスモデルに頼ったものでしかない。そのようなモデルが揺らいでいる今、それに旧来のやり方に頼リ続けるというのはまったくもって建設的ではない。むしろ、これからのモデルに従って、その利用法を考えていくべきだろう。CDであれ、音楽配信であれ、自作の楽曲であれ、どのようなチャネルから入手したものであれ、自らが所有する他のデバイスにおいてはその利用を促進する方向にもって行くべきだろう。

どれほど音楽が進化しようとも、音楽は決して嗜好品を超えることはない。そのようなものに価値を見出させるのだとしたら、受動性に頼るやり方ではなく、能動性に頼るやり方にシフトする必要があるだろう。携帯にしろ、PCにしろ、インターネットというチャネルを手に入れた人々は、より能動的なチャネルとしてそれを利用しているのだから。

 

さて、今回のエントリは、もはや音楽は消費材か──「着うた」世代の今という記事にインスパイアされた感情のままに、書き綴ってみました。これだけ書いてみても、まだまだ未完ですし、とりあえず思ってきたこと、思いついたことをそのまま羅列した状態です。これからもこれについては考えて行きたいと思っていますし、また多くの人に考えて欲しいなぁと思っています。

私は、着うたは音楽文化にとって、従であって主であるべきではないと思っています。主従を逆転させてしまえば、ライトリスナーを狙った音楽文化すら破綻をきたしてしまうのではないかと思えてならないのです。着うたありきで考えるにしても、そこから利益を上げて終わり、ではなく、それをどう音楽産業全体の発展につなげていくか、と考えていくべきではないでしょうか。

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Comment

アドリアーノ | URL | 2007.10.16 04:54 | Edit
いつも拝見させて頂いています。
あと以前Joostの招待状を送って頂きました、ありがとうございます。

参考になるかと思い、たった今、
私自身がこよなく愛しているJ-POPアーティストの
最新のシングルに対する出費を振り返ってみました。

1.先行着うたフル
2.CDシングル初回版
3.CDシングル通常版
4.着うたAメロ
5.着うたサビ
6.着うたフル限定バージョン(ドラマ挿入アレンジ)

と、いった具合でした。
昔はシングル1枚だけでしたから、一曲あたりの単価は
異常に高騰していますね。CDシングルの値段も微妙にあがってますし。
しかし、これでもかなり良心的なアーティストです。
ジャニーズ系になるとシングルは4パターンは日常茶飯事です。
「ファン心理」をついて商売していることが悪いとは思いませんが、
現状、なんとか「着うた」で凌いでいるこの業界が、
この後、どう進むのか不安ですね。
ふと思ったんだけど | URL | 2007.10.16 16:11
最初の着うたエントリで私がその流れに感じたモヤモヤは言ってしまったのでまったく関係の無い話になります。

何故、このような話題は業界、特に資本家の無能と悪意ありきなのでしょう?

最近、興味を持ってネットと著作権について調べているとその津田大介氏のお名前がよく出てくるんですね。
彼の論理はまず著作権者が悪意を持ってユーザーの権利を侵害している、という批判から始まるわけです。

それを私はおかしいと感じるわけです。

着うたというものがCDとMD、PCの機能をほとんど介さないMP3プレーヤーから未だ脱することのできない情報格差の下に位置する未だ幅広いライトユーザーを対象としたサービスだと考えることはできないのでしょうか。

どうして、鼻持ちならない"何も分かっちゃいない"無能な業界のお偉方の悪意ある先の展望も何もない一時的な金儲けの手段というイメージが一番最初に思い浮かぶのでしょうか。

私は津田大介氏やそれに類する人々を個人的にデジタルヒッピーと呼んで軽蔑しています。

彼らのような人々が体制や資本家に特に深い理由もなく反発し、
それをあたかもプロフェッショナルの意見であるかのように錯覚させ、
著作権違反を立ちションと同程度だと軽く見て"コンテンツがタダ"だと思い込んでいるガキどもを扇動するたび、
日本の大衆文化やネット文化はこうやって終わっていくんだなぁと思わせられるからです。
Ripple | URL | 2007.10.16 22:56
個人的に着うたは革命だと思ってます。大歓迎です。ただ、この変革によって今後どう転ぶかは分かりません。存外何も変わらないかもしれません。ひとまず現状はちゃんと数字を残している急成長中の市場です、その割にCD市場は落ちてません。なので自分は今のところポジティブに捉えています。正直なところ着うたのおかげで救われたと思ってるくらいで。

着うたが消費的すぎる~というのは同意なんですが、流行りもの好きな女性層が強い超ライトユーザー向けですし、今も昔もそういうライトユーザーは消費的な傾向であると思うので気にしてません。個人的にはむしろ着うた(PC配信でもそうですが)に比重がおかれることによって省かれる、既存の媒体であるショップやプレーヤー市場がどうなるか、その先の方が不安含めて興味ありますね。

しかし旧来のモデルなんでしょうか? 縛り的なやり方とか見ると随分と迷惑な新しいモデルだなぁと思うんですが(笑)。同じコンテンツに金が重複するというのは、チェリーピックのポジティブ面でもあるし、別バージョン商法にしてもファンの需要に合致するだろうし、仕方ないんじゃないかなぁ…と。それらを除外しないと何とも言えません。確かにケータイとPCの音楽流通はパラレルなんですが、とりあえずソニーとAUは動いたようです。自分は期待してませんが、融合には向かっていっている訳で、きっかけになってくれればいいものです。

>>ふと思さん
津田さんは今、著作権非親告の件で大事な時期なんで煽り気味になるのは仕方ないんじゃないかな(笑)。まぁそうして短絡的に誘導された先にはいい未来は大抵ないですけどね、ギョーカイ本意でもユーザー本意でも。
heatwave | URL | 2007.10.17 00:40 | Edit
アドリアーノさま

いつも読んでいただいてありがとうございます。

随分投資していますね(笑)。
個人的には、CDなり音楽配信なりを利用するリスナーさんに対しては、着うたくらいくれてやっても良いのになと思ったりします。

もちろん、ファン心理につけこんで商売するってのは、何から何まで悪いというわけではないと思います。同じようにファン心理につけこんだ商売としては、ブート屋なんかがありますし、ファンにしてみれば、好きなアーティストには可能な限りつぎ込んでも惜しくはない、というくらいの満足感もありますしね。

ただ、個人的にはせっかく同調にせよ、独自性にせよ、ファン心理を狙ったツールが成功を収めているわけですから、それを音楽自体の活性化に利用しないってのはもったいないなぁと思うわけです。もちろん、上記のエントリはかなりの抽象論で、じゃあ、具体的にはどうしたらいいの?という問いに満足のいく答えはできないかもしれませんが。

ただ、私が見る限りでは、結局これまでどおりのプロモーションに頼った戦略を繰り返していくように見えるのです。数多くのホビーが手元で楽しめる、そして数多くのチャネルを手にした現在、そしてそれが加速する未来にあって、既存の戦略がどこまで通用するのか、という疑問もあります。


ふと思ったんだけどさま

>彼の論理はまず著作権者が悪意を持ってユーザーの権利を侵害している、という批判から始まるわけです。

個人的には、悪意を持っている、というわけではないと思っていますよ。彼らのマネライズのやり様が拙いということだったり、そのやり方がユーザのユースとぶつかるということだと思います。DRM1つとってみても、彼らの利益を考える部分と、我々の損益と考える部分とがぶつかり合っていますから、それに対して過度にユーザの利益を損ねていると主張するのはユーザの側にあって当然ではないかなと思ったりもします。

>"コンテンツがタダ"
というのは、正解でもあり間違いでもあります。ただ、それはオプションとして考えるべきところなのでしょうね。「鼻持ちならない"何も分かっちゃいない"無能な業界のお偉方の悪意ある先の展望も何もない一時的な金儲けの手段」を用いる音楽産業という批判を繰り返しているのは、津田さんというよりTechCrunchのような気もしますが、Webというコンテンツ/サービスがタダで利用できる機会が多い場において、その場に不相応な有料サービスというのは批判されるべきだという点では、TechCrunchの意見に同意したいと思ってはいます。

まぁ、eBayが最近愚痴ってるみたいですし、それを絶対無比の法則だと考えることも怪しいものですけどね。どこで、どう効果を得られるのかというのを考える必要がありそうですね。

個人的にはそのような批判に負けてメイクマネーを確実にできないのであれば、それは単にビジネスとして敗北したというだけだと思っています。海賊行為が横行していようと、ユーザからの反発を受けようとも、それでも利益を上げなければなりません。ビジネスは善-悪ではなく、利益-損失でしかないのですから。

>著作権違反を立ちションと同程度だと軽く見て"コンテンツがタダ"だと思い込んでいるガキどもを扇動するたび、
>日本の大衆文化やネット文化はこうやって終わっていくんだなぁと思わせられるからです。

著作権侵害を助長するつもりはありませんが、個人的にはその程度で終わる文化であれば、もともと錯覚に過ぎなかったのかなぁと思ったりします。


Rippleさま

私も着うたというやり方自体は、そこまでひどいものだとは思ってはいないんです。ただ、結局は音楽産業自体を底上げするほどのパワーを持っているサービスだとは思えないのです。もちろん、楽曲やアーティストに対して強くコミットさせるものではあるのですが、ただ、音楽そのものに強くコミットさせる性質を持ってはいないと思えるのです。そうした意味で、別のアプローチに利用してもいいんじゃないかなぁと思ったりするのですよね。

層別に見て、それぞれの層にマッチしたアプローチというのはアリなのでしょうが、それが超ライトリスナー~ライトリスナーに向けられたものに比重が置かれる、というのは、これまでのプロモーション戦略を更に強化した多メディア版プロモーション戦略を作り出す必要があるのではないかなと。

それが叶わないのであれば、そこだけを狙う戦略から、その層をより音楽を購買するそうに変容させる戦略を強化する必要があるのかなと思ったりするのです。その意味で非ライトリスナー化戦略を検討すべきでは、と考えている次第であります。

おっしゃるようにポジティブな面は多々ありますので、それを伸ばし、活かしつつ更なる発展を期待したい、というところです。ただ、個人的にはチェリーピックのネガティブな側面が気になりますね。もちろん、ユーザが欲しい曲だけを選択できるというのは悪くはないのですが、レコード産業はアルバムだのみなところもある業界ですし、アルバムという概念が好きな私にとっては、少々気がかりなところではあります。
ふと思ったんだけど | URL | 2007.10.17 04:57
>Rippleさん
私も個人的にそう思います。

音楽には詳しくてアマチュアのバンドのボーカルまでやってるようなうちの母親(御年47!)はPCを闇に首を突っ込んだような気分になる箱と形容しましたが、
携帯の着うたに好きな音楽を使えると知って私に色々と聞いてきましたわけで・・・

そこから異常な適応能力を見せて今ではmyspaceにアーティストとして登録して
旧ユーゴだのカリフォルニアだのの外人と自分の演奏した音源を聴かせあって
言葉もわからないのに交流するというところまでたった半年で一気に進歩しました。
こういうきっかけになるほどの影響力を着うたは持っているわけです。
それは結構凄い革命だと思います。

>heatwaveさん
>著作権侵害を助長するつもりはありませんが、個人的にはその程度で終わる文化であれば、もともと錯覚に過ぎなかったのかなぁと思ったりします。

私もそう思います。
そもそも砂上の楼閣、硝子の都、翠玉の宮殿。
ネット上で生まれる全ての文化は錯覚や魔法で形作られたまやかしに過ぎないのかもしれませんね。

ネットゲームをやっていて、どんどん引退して消えていく友達の顔を思い出し、顔なんて初めから知らないとふと思い至った時によく感じることです。

そのほかにも好きだったサイトが閉鎖してしまったときや、2ちゃんねるでどんどん融けて消えていくスレッドを思い出すとき、手元に確かなものは何も残らないとき、そう思います。

きっとP2Pやネット文化もそのひとつなのでしょう。

P2Pやダウンロード配信などで思うことは、箱とか何だとか、物質が手元に残らないことです。
たったそれだけのことが現実感を喪失させ、少しづつ気付かないうちに文化を退行させていくのかもしれません。

私は海賊行為をやらないといえば絶対に嘘ですが、海賊行為をやっている最中も、そういう取り留めのないぼんやりとした危機感のような感覚を感じることがあります。
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