2007.10.20 Sat
『Radiohead vs. P2P』は『無料アルバム vs. 違法コピー』の戦いではない
Radioheadがリリースした『In Rainbows』は、ユーザ自らが価格を決定し、ダウンロードすることができるという点で、非常に画期的なものであった。そして、リスナーがダウンロードするためには、ゼロコストで
ダウンロードが可能であり、ゼロコストという点では、BitTorrent経由でのダウンロードと変わるところはない。もちろん、前者は合法であり、後者は違法である。しかし、TechCrunchが報じているように、同じく無料で提供されているにもかかわらず、BitTorrentを利用してダウンロードしている人たちが、かなりの数存在しているよ、というお話。個人的には、その理由は簡単だと思う。ユーザにとってコストはお金だけじゃないってこと。
原典:ars technica
原題:P2P vs Radiohead's "free" Rainbows: why P2P can be a hard habit
to break
著者:Nate Anderson
日付:October 18、, 2007
URL:http://arstechnica.com/news.ars/post/20071018-p2p-vs-radioheads
-free-rainbows-why-p2p-can-be-a-hard-habit-to-break.html
Radioheadは彼らの最新アルバム、『In Rainbow』において、革新的なデジタル配信方法を取った。人々は、好きな金額でそれを購入することができる。もちろん、ゼロでも。にもかかわらず、アルバムのBitTorrent上でのやり取りの状況は、他のメジャーレコードと同じくらいのレベルに達している。人々は本当に、フリーアルバムをちょこっと手に入れるのに、バンドにレジストすることすら惜しむほどケチなのだろうか。答えはYesであるようだ。
彼ら自らがレコーディング、マスタリング、配信を取り扱うことで、バンドはいかなるRainbowsからもチューブをクリアにすることができた(激しく期待されたアルバムへの見事な妙技といえよう)。いったん、アルバムがダウンロードできるようになると、すぐさまP2Pネットワーク(主にBitTorrent)上にあふれていった。この問題について、BigChampagneのCEO、Eric Garlandによると、アルバムはリリースの当日、BitTorrentユーザたちによって24万回ダウンロードされ、「完全なる半減曲線」を描いて次第に減少していったという。
大半のBitTorrent上での楽曲交換とは異なり、『In Rainbows』はコンプリートアルバムとして共有されている。ここ10年にわたってシングルを出してこなかったRadioheadは、そのようにアルバム全体としてダウンロードされていることは喜んでくれるかもしれない。しかし、間違いなく、彼らはバンドのWebサイトに来てアルバムを手に入れることを望んでいるだろう。
Garlandは、利便性こそがここに影響を及ぼしている主な要因であると推測している。それは価格によるものではないという。Radioheadのサイトは、ダウンロードコードを取得するために、電子メールアドレスやそれ以上の複数の個人情報を入力するよう求められる。そのようなプロセスはどれほどの価格であろうとも、一部の人々を疎遠にするだろう。多くのユーザは、BitTorrentから音楽獲得することに慣れきっている。このような人たちにとっては、どこか他のサイトを訪れ、レジストし、電子メールを受けとり、楽曲をダウンロードするよりも、アルバムがネットワーク上にリリースされたときにそれを手に入れるほうが簡単だと考えるだろう。
バンドがユーザに音楽の価格を設定させたという事実は、音楽の価格が買い手次第でなければならないという認識を促す。BitTorrentとRadioheadがアルバムを同じ価格(訳注:つまりタダ)で提供するのであれば、ファンはその2つのソースにほとんど違いを見出せないだろう。実際、Radioheadの行動は、BitTorrentを新しい音楽を手にするためのフォーラムとして、ますます合法的なものと思わせるかもしれない。したがって、この件を『海賊行為 vs. 無料』という軸で評価することは、必ずしも正しくはない。つまり、一旦あるユーザたちが、それは「無料だ」というメッセージを受け取るとしたら、アルバムをどこで手に入れたかということはそれほど問題ではないのである。
Garlandはそれに同意して、このような動きは、産業と、その製品を購入する人々との間の「長きに渡る」軋轢を「拡大する」ものであるという。更に彼は、この問題が露見したのはこれが初めてではないと指摘する。ダウンローダーたちは、P2Pサービスから音楽をダウンロードすることを正当化するために、「ラジオは無料ではないか」、「ミックステープを作成することだってできる」と長き渡って主張してきた。これらの主張に対して反論しようとする音楽会社の試みにも関わらず、ラジオ、ミックステープ、P2Pは、多くのエンドユーザにとって全て『無料であるかのように』思われている。これはBitTorrentで音楽を入手すべきではないという認識を阻害するものであり、一方で、Radioheadのset-your-own-priceモデルはそのような考えを促進するものだろう(特定の楽曲をプロモーションするためにP2Pサービスを利用するレーベルの試みがあるように、ユーザはレーベルすらBitTorrentを無料の音楽を提供するのに利用しているのであれば、彼らが手に入れた音楽が違法かどうかなどどのようにして判断できるというのだろうか?)。
しかし、Radioheadにとっては、確実にソースの違いというものが存在する。バンドは人々にサイトを利用してもらい、人々の情報を集め、適切な時期にコンサートやグッズについてのインフォメーションを送りたいと思っていることだろう。しかし、バンドはRadioheadファンにとって、お金こそが唯一の重要なものであるというわけではない、という複雑さを学んだことだろう。
以前、SlyckがLimeWireにインタビューを行ったとき、彼らが音楽配信サービスを始めるに当たって重要視していたのは、それが付与されたとしても、既存のLimeWireエクスペリエンスを保つということ。もちろん、LimeWireが音楽配信ビジネスに乗り出すということ自体には懐疑的なのだけれども、この弁に関しては、非常に納得のできるものであった。
LimeWireにしても、BitTorrentにしてもそのユーザ達は少なくともその活動(つまりダウンロード)を、それぞれのプラットフォームを中心に考えているのだろう。もちろん、それに依存しているともいえるが、その一方で、依存できるほどに快適な環境でもあるのだろう。もちろん、彼らの行っているのは違法行為であり、快適だからいいだろうというわけではない。
しかし、たとえ無料で手に入るにしても、これまでのP2Pファイル共有サービスというのは、ユーザの間に浸透しており、その層を狙うためには、無料であることだけが彼らの行動を支えているものではない、ということを認識しなければならない。
そこにはユーザのスタイルが存在し、それに従って行動するという側面があるのだろう。arsの記事にもあるように、ユーザは無料なのだと聞かされることで、もう自らにその入手経路を問うことはないのである。当然、指摘されているようにわざわざ混み混みのRadioheadのサイトに行き、個人情報を入力し、自らの良心と戦いながら金額を設定し、メールを受け取ってダウンロードするよりならば、いつものようにダウンロードしてしまえばいい、そう考えるのも当然だろう。
しかし、もしRadioheadのサイトが個人情報を求めなかったとして、サイトが非常にサクサク動いたとして、ファイル共有ユーザ達はそれでもBitTorrentで入手したのだろうか。個人的な推測に過ぎないのだけれども、私はそれでもBitTorrentでダウンロードするユーザは多数存在したであろうと思う。
ただ、ここでその行為の是非を問うたところで、それほど意味のあることではないのかもしれない。もちろん、是とされるような行為ではないのだけれども、その一方で非としたところで、何が変わるだろうか。結局のところ、ユーザは増え続け、活動はますます盛んになっている。彼らの行為自体を否定したところで、彼らが自らの行為を考え直すことは非常に稀である。
ならば、彼らを否定するのではなく、どうすれば彼らのファイル共有活動が有益な方向に向かい、是とすることができるのか、、と考えるべきだろう。今回のRadioheadのやり方は、おそらく音楽配信からの収益を狙ったものではない。彼らはボックスセットの販促もかねてこのような配信形態を選択している。とすれば、まず確実にそれを購入してくれる層を抑え、それを買ってくれそうな層にアプローチし、更には本来であれば買ってくれなかった層を購入を検討させる方向にもって行くことが目的であるといえよう。
そのような目的を考えるとき、RadioheadのサイトをスキップしてBitTorrentから入手することは、Radioheadとしては望ましくはないだろうが、おそらく、本来であれば購入を考えなかった層、つまりRadioheadをサポートしようとは思っていない層がわざわざRadioheadのサイトに行き、面倒な手続きをとるとも思いがたい。でも、そのような層にあっても楽曲に触れ、その魅力を感じることができれば、Radioheadの目的にかなうリスナーとなる可能性は残しているのだ。
プロモーションの効果に100%を求めてはいけない。たとえば、ライブのためにアルバムを無料配信するというバンドがいたとしても、それを手に入れた全ての人が同じだけの情熱を持っているわけでもないし、バンドのライブに来てくれるわけでもない。しかし、重要なのは潜在的な可能性のあるリスナー達に、その可能性を開かせるために、音楽を届けることではないだろうか。
今回オンラインアルバムリリースとボックスの予約とをあわせると、120万枚販売されたようだ。それなりの数字だけど、おそらくは今回のリリースの報道によって誘導された人が多いのだと思われる。今後、このような形態がそれほど珍しくなくなっていけば、物珍しさからサイトに行ってみたり、ということもなくなる。と考えると、より多くの人にアプローチする方法として、ユーザ同士の共有を、それぞれのアーティストの目的のために、いかにして利用していくか、ということを考える必要もあるのかもしれない。
ただ、個人的な感想としては、せっかくアーティストの側が既存の状況を打破してくれる動きをしているというのに、それを利用する側の意識があまり変わっていないのかなぁと残念に思うところもある。Radioheadのアプローチは画期的なものではあるが、まだまだ効果の見えない『斬新な』ものでしかない。今は、そのようなアプローチが有効であるという証明が求められている時期でもある。そういった時期だからこそ、その実現に向けた活動をサポートするべきなのだろうと思うのだが。
音楽業界が認識を改めるべきだ、というのはまったくもって同意したい。だけど、音楽リスナーの認識も、そしてファイル共有ユーザの認識も、変わらなきゃいけない部分はあるんじゃないかな。
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P2P/ネットと著作権:アーティストと違法コピー










Re: 『Radiohead vs. P2P』は『無料アルバム vs. 違法コピー』の戦いではない
音楽業界が認識を改めてファイル共有を有益なものへ変える努力を〜
というのは割れ厨がモラルや自制心を持たない限り難しいと思います
無料で視聴できて宣伝になるという側面があるとよく言い訳に使われますが
今回と同じく結局ファンになっても購入ではなく共有でことが済むわけで・・・
どう足掻いても音楽でこの先以前と同じように稼ぐのは酷く難しいんじゃないでしょうかね
| ふと思ったんだけど | 2007/10/20 15:47 | URL |