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無料ダウンロードされたほうが利益は上がる、というケースを考えるために

無料ダウンロードというと、違法P2Pファイル共有を彷彿とさせてしまうためか、その言葉に嫌悪感を覚えてしまう人もいるかもしれない。そんなものは著作権者の利益を損ねるだけで、損失以外の何者でもないと考える人もいるだろう。ただ、私はそうは思わない。そのような手法は、適切に用いることで、著作権者側に利益を与える可能性も秘めているとも思えるのだ。もちろん、そこで重要なことは『適切に』ということ。何から何まで『無分別に』ダウンロードできることが利益を生み出す、などというつもりはない。無料でダウンロードできることが『すべからく』損害を与えるものだというつもりもない。とりあえず、今回はその辺のことについて、音楽の無料ダウンロードの提供を題材に考えてみるよというお話。私自身、この話題について煮詰まっていないので、かなりカオスな内容となってしまった。考え方のエッセンスとして考えていただければこれ幸い。

「違法ファイル共有は購買促進効果があるんだッ!」「んなわけねーだろッ!盗人猛々しい」という議論は双方に理解できる部分があるが、双方に理解できない部分もある。前者に対しては、購買促進効果がある可能性はあるかもね、という理解はできるが、その一方で、購買抑制効果に目を瞑っていい理由にはならない、と思う。後者に対しては、違法行為を正当化すんなよ、という点で理解はできるが、かといって販売促進効果があるかどうかという部分を無視するのももったいないなぁと思う。

「違法ファイル共有は購買促進効果を持つ」といっても、では違法ファイル共有のどの要素が効果を持つのかはわからない。違法性?タダなこと?その他?いろいろ考えられるが、「無料である」というリスナーにとってのインセンティブが効果をブーストするのであれば、それは違法性を伴わなくてもよいだろう。つまり、「違法ファイル共有に含まれる『合法的アプローチによって転用されうる要素』が販売促進効果を持つ」のであり、違法である必要はない。また、販売促進効果を持つにしても、何に対して効果を持つのか、ということも考えなければならないだろう。

無料で提供されること、それに対しての違和感を覚える人もいるだろうが、販売しようとしているものそのものを無料で提供すべし、といっているように考えているからではないだろうか。しかし、それは違う。あるものを販売する、提供する、それをプロモートするために別のものが無料で配布されるというだけのこと。「CDをより多く販売するために、無料ダウンロードを提供する」、そういった感じ。

と、単純に言ってしまえば、結局は水掛け論で終わってしまうのだけれども、実際の効果を考えるためには、より具体的な「状況」によって切り分けられなければ、見えてこないと思う。

たとえば『メジャーなアーティストであるRadioheadは、ニューアルバムを任意価格での音楽配信にて提供した。それがどのようなリスナーに、どのような効果をもたらしたのか?』という1つのケースを取ってみても、非常に多くの要因が含まれる。これをさまざまな状況を説明するために切り分けてみれば、

[メジャー or マイナー or クラシカル]なアーティストの[新しい or 旧い]アルバムの[無料 or 有料 or 任意の価格]でのダウンロードが、[ヘビー or ライト]リスナーの、[CD or デジタルダウンロード or コンサートチケット]購入にどのような影響を及ぼすのか

となるかもしれない。もちろん、便宜的な区別なので、必ずしも必要というわけでもないし、これで十分というわけでもない。

ただ、こうして切り分けられたそれぞれの具体的なアプローチにおいて、無料ダウンロードを提供することによってデメリットを上回るメリットを享受できる場合もあれば、その逆もある。

切り分けたそれぞれの要因には、それぞれの事情や制限、特性が存在するだろう。そういったものをざっと見てみることにする。

[メジャー or マイナー or クラシカル]なアーティスト

メジャーアーティストはファンベースの絶対数は多いが、マイナーアーティストは少ない。前者に比べ、後者のほうのファンベースのほうがよりヘビーリスナー率が高そうだ。クラシカルなアーティストは一定のファンベースは存在するものの、既存の大多数の音楽ファンベースにリーチしていない傾向にあるだろう。

[新しい or 旧い]アルバム

新しいアルバムは、旧いアルバムに比べると短期的にはより多くの収益を上げる可能性がある。また、新しいアルバムは製作費を回収してはいないが、旧いアルバムであれば、製作費を回収しきっているものも多い。(さらに厳密に区別すれば、アルバム全体or一部という区別もあるし、旧作といえども全ての場合も、その一部の場合もある。)

[無料 or 有料 or 任意]の価格のダウンロード

無料であれば、興味を持ったリスナーは、金銭的なコストを感じることなく、ダウンロードすることになるだろう。一方、有料である場合には(ここでは固定の価格での有料配信とする)、果たしてその金額に見合ったものが得られるかどうか、という査定が行われるだろう。その査定の結果、高くてもその価値があるというものはペイされ、安くとも価値を見出せないものに関してはペイされない。任意のオプションであれば、その価値に見合った一定の利益を得つつ、コスト感による制約を低減させることができる。もしくは、ダウンロードではなくストリーミングという方法を用いることもできるだろう。

[ヘビー or ライト]リスナー

ヘビーリスナーは、相対的に音楽に対して投入する金額は高いだろうし、また新しい音楽を発見することに対しては積極的だろう。ただし、ライトユーザに比べるとその絶対数は少ないとも思われる。一方でライトリスナーは、その絶対数はヘビーユーザより多く、音楽に対しては刹那的な価値を見出すかもしれない。また、ライトリスナーにアプローチするためには、多くのプロモーション費用が必要となるかもしれない。個人的な印象ではあるが、ライトリスナーからヘビーリスナーにかけての人口比は、線形で少なくなっていくというよりは、加速度的に少なくなっていくという感がある。つまり、マスに達するためには、ライトリスナーから受容されないといけない、ということかしら。

[CD or デジタルダウンロード or コンサートチケット]購入

CDとデジタルダウンロードは録音物を定着させた媒体であり、何度でも同じように再生することができる。ただ、前者は安定した物理媒体(+アートワーク、歌詞など)であり、後者は不安定なデータである。一方、コンサートにいくことは、CDと同じように音楽を楽しむというものではあるが、1度きりのパフォーマンスにペイするということであり、またそれはファンとアーティスト、ファンとファンとの貴重な接点であり、その体験にも価値がある。また、CD、デジタルダウンロードは

更にいえば、どのような手法を用いて配信するか、ということもあるだろう。P2Pファイル共有にて放流した場合には、コアなファン層がそこに集中することは考えられるが、一方でファンではない人々がわざわざダウンロードするということは他の要因(たとえばプロモーション、ユーザコミュニティのコミュニケーションなど)が絡まない限り起こりにくいだろう。一方、デジタル音楽配信のためのプラットフォームが存在する場合には(もちろん、そのプラットフォームにP2Pが利用されるかもしれないが)、そのプラットフォーム自体がプロモーションの効果を兼ねてくれることもあるだろうし、そのような場にユーザコミュニティが存在すればそれによって聞いてみようという気になるかもしれない。

もちろん、これらの切り分けはとりあえず便宜的に行ったものであり、その定義や個々の切り分けに過不足があるかもしれない(有料のダウンロードとデジタルダウンロードの購入が被ってるぜ、とかも無しね)。ここではこのような考え方が必要だということを提示するためのものだと考えて欲しい。また、個別のケースには、個別の事情というのも絡んでくるので、その辺も加味する必要がある。どちらかというと包括的な説明するのは難しいので(要因多すぎのため)、個別のケースについて考えるべきだろうと思う。とりあえずは、それぞれの組み合わせによって期待される効果も異なる、ということ。

と、この辺のことを、しばらく考えていたのだけれども、どうにも整理がつかなかった。というのも、上記の切り分けだけで、108通りのパターンが組みあがる。それをどうスマートに説明できるか、ということに苦心していたのだけれども、この際だからスマートに説明することを諦めて、とりあえずエッセンスをぶちまけることにする。こっからすごく長いよ。

Radioheadのケース

メジャーアーティストのRadioheadは任意の価格設定での新譜アルバムのダウンロードを提供している。これは、無料でもダウンロードできるというものでもあり、メジャーであるがゆえに、より多くのヘビーリスナー、ライトリスナー双方にリーチすることができる。

それがCDの売上にどのように影響を及ぼしたかという詳細は明らかにはされていないが、おそらくコアなファンは購入に動機づけられたことだろう。たとえ、ダウンロードによって得ることのできたコンテンツと同様の内容のCDとはいえ、付加価値の含まれるBoxセットは魅力的にうつるだろう。また、より多くのライトリスナーにリーチすることは、確率的な話になるが、絶対数が増えることでその数を増すことができるだろう(ただし、ダウンロードによってアルバムを得たことによる、購買の抑制効果は不明)。

また、任意の価格のダウンロードではあるものの、TheAgeの記事によると、平均して9.1ドルの価格がつけられ、通常のアルバム(22ドル程度)よりは安いものの、十分な価格であるといえる(無料でダウンロードした人がいたとしてもこの価格ということ)。というのも、Radioheadにしてみれば、以前はCDの売上に対し金額に対し5%のロイヤリティしかえられなかったのが、セルフパブリッシュでは購入金額の90%以上を手にすることができるという。通常のアルバムを22ドルとすると、ダウンロードに1.22ドルの価格がつけられれば、同額の利益をあげることができる。

また、無料でダウンロードできるということが、より多くのリスナーにリーチすることができる、このことはその際にペイしなかったリスナーに対しても、その後の行動を動機づけるものかもしれない。少なくとも、そのようなリスナーは1度、Radioheadにコミットしたという事実が残るし、それでRadioheadのアルバムが気に入れば、ライブにいく、次のアルバムも購入する、という行動が促進されることもあるだろう。特にメジャー系アーティストの場合、ヘビーリスナーのみのコンサート収入やアルバム収入(Radioheadのような収益体系)だけでも十分に利益が上げられるだろう。それに加えて、ライトリスナーにもリーチすることで更なる収益が見込める、ということもあるだろう。

付加的な事情としては、Radioheadの全盛期は『OK Computer』であり(一般的な認識としてね)、一度はRadioheadから離れていったファンに対しても、もう1度Radioheadの曲を聴いてみようかなと思わせることができただろう(少なくともペイするというハードルが自由に任されているという点で)。また、このようなメジャーアーティストの取り組みは比較的珍しいものだったがゆえに、多くのパブリシティを得たということもある。今後このような事例が多く出て来れば、その効果は鈍化すると思われる。

まぁ、任意の価格という意味では厳密な無料ダウンロードというわけではないけれど、無料というオプションを含めたダウンロードの提供が利益に繋がる、という1例にはなるだろう。

無料ダウンロード:What? How?

Radioheadは任意価格でのダウンロードだったけれども、じゃあメジャーアーティストの新譜の無料ダウンロードだったらどうだろうか、という点に疑問が生じる。確かにより多くの人にリーチすることができ、それによってコミットしてくれた人たちをライブに連れてこれるかもしれないが、そうなるとCDやデジタルダウンロードへの影響というのは無視し得ないかもしれない。少なくとも、個々の音楽に対して刹那的に価値を見出すタイプのリスナーにとっては、それ以上を求めるということはなかなかないかもしれない。それに対しては、新譜ではなく、収益性の下がった旧譜をプロモーションのために無料ダウンロードにて提供する、という手法もありかもしれない。

もちろんどちらにしても、ストリームでもMP3でもDRMの施されたものでも(期限的なものにすることもできるだろう)、その中でより効果のあるものを模索することはできる(ストリームはMySpaceなどで実際に行われている)。確かにリスナーの耳に届くという点では変わらないのだけれども、それぞれにリスナーに与えるインセンティブが異なり(無料でMP3がダウンロードできる!or無料で一定期間聴けるメディアがダウンロードできる!or無料でストリーミング視聴できる!)、また、その後の効果も異なってくるだろう。

たとえばMP3、DRMedフォーマットでは継続して聴取可能であるために、同一のコンテンツをデジタルダウンロードさせるこということはできない。ただ、安定したメディアとしてのCDの需要に関しては抑制効果、促進効果があるのかはわからない。コアなファンに対しては促進効果を持ちえるかもしれないが、ライトなファンに対してはどちらの効果を生み出すのかは(またはどちらの効果が強いのかは)推測しがたい。ただし、長期的な利用が可能であるために、リスナーが思い出したかのように聴くことで、改めてよさを実感して、再びそのアーティストに目を向けるきっかけになるかもしれない。まぁ、それでも副次的なものかもしれないが。リスナーに対しては、無料で手に入れられる、という感覚から、最も強いインセンティブを与えうるものであろう。

一方で時限的なDRMedフォーマットでは一定期間のみ視聴が可能となっており、その期間後は購入しなければ聴取することはできなくなるので、その時点で、コンテンツの購入の選択を迫ることにもなる。もちろん、そのコンテンツが良いとは思えなければ買うこともないだろうけれどもね。ただ、その場限りでの視聴ではないので、一定期間継続して聴くという可能性を与えることによって、その楽曲へのコミットを高め、その楽曲、アーティストをよりアピールすることが可能となる。ただ、ライトリスナーの中には、その期間(旬)を過ぎたら聴きたいとは思わないリスナーもいるだろうから、その層はターゲットから外れてしまうことになる。その期間をどの程度に設定するか、にもよるのだろうけれどもね。もちろん、ライトユーザの中にも、気にいったら恒常的に聴きたいという層もいるだろうから、その層がどの程度いるのかによっても、時限メディアの効果というのは変わってくるかもしれない。リスナーに対しては、レンタルに近い感じを与えるだろうから、相対的には中程度のインセンティブをもたらすことになるだろう。

また、ストリーミングによる聴取は既にMySpaceでも行われているが、その場限りでの聴取ということになる。視聴機の前で視聴するというようなもので、その期を逃せば、おそらく次はない、というものだろう。もちろん、何度も聴くことはできるが、リスナーがそこに聴きに行くというコストを支払うため、ちょっとでも気に入ったという人でない限りは取りこぼしてしまうことになる。それを防ぐためには、より多くの視聴機会を与えるために、そのコンテンツをストリームできる場を増やす必要がある。これは既存のプロモーションに似ているところもあって、テレビやラジオ、有線、BGMなど刹那的な聴取を何度も繰り返すことで、購入を促すことができるように、より多くの場で楽曲に触れさせることで、その楽曲に対して魅力を抱いてもらうという方法になるだろう。まぁ、その楽曲自体が、1回の聴取でインパクトを与えうる場合には、その限りではないのだろうが。リスナーにとっては、その場限りの聴取ということになるので、それほどインセンティブを与えるものではないだろう(だからこそ、複数の場で聴取する機会を作らなければならないということにもなる、ただ、それはネットでなければならない、ということはない)。

どのようフォーマットを選択するにしても、最も重視すべきは費用対効果。前者が上回ってしまっては意味はない。ただ、それぞれにかかるコスト(大半は予測される損失だろうが)以上に、より多くのユーザを刺激し、直接的にであれ、間接的にであれ、最終的にペイが発生すればよいのだ。

聴く機会を提供することなしには、コアなファン以外の人たちにリーチすることはできない、それはメジャーアーティストといえども変わらぬ事実だろう。重要なのは、どのようにすれば、不利益を生じさせずにより多くの人に音楽を届けるられるか、ということ。もちろん、不利益を生じさせないといっても、Radioheadのようにレーベルのことを考慮にいれずに済む人たちと、レーベルとの契約に縛られいる人とでは、事情が異なるということも留意すべき点だろう。レーベルに所属しているアーティストの場合は、レーベルも利益を上げられるような体系ではなくてはならない。となると、Radioheadのように最も収益性の高い新譜を惜しげもなく無料で提供するというのは、あまりポジティブな結果を得られないかもしれない。となると、よりコントロールされたフォーマットでの配信、または収益性の下がった楽曲の配信という手も考えられる(もちろん、後者の場合は、収益性が下がっているとはいえ、上げられる可能性のある利益を失うということも考えられるので、得られる利益とのバランスを考えなければならないだろうが)。

ここまではメジャーアーティストの一例、あまり知られていない新人アーティストにとってはこの手法は厳しいのでは?と思われるかもしれない。ただ、それも個々のアーティストらが求めるところが、そしてそのためのアプローチが異なれば、その有効性も変わってくるだろう。

マイナーアーティストのケース

新人アーティストやマイナーアーティストの場合は、デジタルダウンロードにしてもCDにしてもライブにしても、それほど収益性を持ち合わせていない場合が多い。また、メジャーアーティストと同様に無料ダウンロードによって利益を上げることを考えられるほどに、注目が集まるわけでも、より多くの人にリーチできるわけでもない。要は、あまり知っている人がいないのだから、プロモーションでもかけない限りは、認知されていくこともないと。ただし、考えようによっては、捨てるものはあまりもない、と考えることもできるだろう。ある意味、認知度が低ければ低いほどに掛け金が少ないギャンブルのようなもので、当たるも八卦、当たらぬも八卦なところがある(ちょっと意味が違うけどね)。

もちろん、旧来のやり方に則って、レーベルのプロモーションによる成功を待つというのもあるだろう。ただ、プロモーションには金も労力もかかる。レーベルが全てのアーティストに対して、同様にプロモーションをかけてくれるということもないし、またインディペンデントなアーティストにとっては、レーベルがやるようなプロモーションを行うほどの経済力は持ち合わせてはない。

では、旧来のメディアへの露出以外のプロモーションというのはないだろうか、というところに、この無料ダウンロードが含まれるだろう。目的は簡単、至近的な売上を上げること以上に、マスに存在をアピールすること。もちろん、目的は簡単だけれども、そのための手段が非常に難しい。旧来のプロモーション戦略においても確実に成功する、などということは不可能であり、やはりギャンブル的要素が含まれることになる。

新譜、旧譜の別はそれほど重要ではないかもしれない。要はリスナーのハートに火をつけるものを、リスナーの手元に届けること、それが一番大事(当然、火をつけられるようなものじゃなければ、どうしようもないが)。それでも新旧の別を考えるのであれば、現時点でのアーティストを反映する新しいもの、の方がいいかもしれない。ただ、重要なのは、人々の耳に入れること、だ。たとえ素晴らしい楽曲であっても、人々の耳に触れなければ価値はない。

無料、有料、任意の別に関しては、たとえ有料ダウンロードを提供したとしても、認知度が低く、ファンベースが小さいうちはそれほど利益の上がるものではない。一方、無料ダウンロードを提供することは、認知度やファンベースの大きさによって損失が生じる可能性もある。認知度やファンベースが小さいうちは、それほど大きな影響はないが、ある程度それらが大きくなれば、負うリスクは大きくなる。ただ、マスにリーチする可能性は飛躍的に高まる(ただし、問題はその確率とプラットフォーム、これについては後述)。任意の価格でのダウンロードは、有料ダウンロードよりはユーザのコスト感にネガティブに働くものではないが、無料ダウンロードよりはコスト感が高いだろう。無料にできるオプションがあれば同じではないかと思われるだろうが、$0.00を入力する心理的なコストが存在することになる(ただ、Saul Williamsのようにサポートしたければ5ドル、という選択肢のようなものであればそういった心理的なコストは緩和されるかもしれない)。マスに届けるということを最大の目標とするのであれば、無料かつ制限の少ないフォーマットでのダウンロードを選択することがベターかもしれない。ただ、収益性を求めつつ、マスに届けたいという場合は、その限りではないだろう(例えマスに届いたとしても、無料ダウンロードからは利益が上げられないが、有料ダウンロードであればそこから利益を上げることは可能)。

どのようなリスナーに向けられるか、ということに関しては、最終的にはマスであろうライトリスナーに向けられるのだろうが、最初からそこを狙うということは、既存の巨大メディアでもない限りは難しいところだろう。となるとバイラルなところに頼るということ必要になるだろう。まずきっかけになるのは、音楽に対して積極的なヘビーリスナー、そのようなリスナーのアンテナに引っかかるように音楽を流す。もちろん、そのようなリスナーにとっても、コスト感覚というのはあるので、接触されやすいのは無料>任意>有料となる。ただ、リスナーに与えるインセンティブとしては、メジャーアーティストとは異なり、MP3>DRMed>時限メディア>ストリーミングの順ではないかもしれない。ダウンロードするにもコストがかかるので、きっかけとしては、ストリーミングのほうが気軽にできるのかもしれないということ。

どのような流れであれ、ヘビーユーザのお眼鏡に適うことができれば、そのユーザ層に存在する情報の発信者によって、レコメンドされることになる。後は口コミで広がっていくとと。その中に影響力の大きいオピニオンリーダーが存在すれば、一気に拡散するかもしれないし、小規模の影響力しか持たない人たち数人だけのレコメンドで終わってしまえば、そこで収束することになるかもしれない。そして、その拡散が一定数、クリティカルマスに達すれば、後の拡散は加速度的に増大する。つまり、今ネットで流行っている!ということ。

そこまで行けば万々歳、何もいうことはないだろう。ただ、クリティカルマスに達することができないとすれば、損失を生むというケースも出てくるかもしれない(ファンベースの大きさに比例したリスクに依存するのかも)。では、クリティカルマスに達するためにはどうすればよいのだろうか?というのは、誰しもが知りたいことであろうが、まぁ、少なくともそのことを多くの人に知ってもらうこと、だろう。当たり前なんだけど、それしかない。

なので、そのためにどうすべきかを考える必要がある。先述したどのプラットフォームを利用するか、ということに繋がってくる。メジャーアーティストであれば、自分のサイトをプラットフォームとして利用して、配信することも可能であるが(大きなファンベースそれ自体がバイラルな広がりを持つだろう)、そのような巨大なファンベースを持たない人たちには無理な話。そうなれば、別の、より外向きな、または外にあるプラットフォームを利用する必要に迫られる。たとえば、MySpaceのようにストリーミングで楽曲を聴かせることができるサービス、YouTubeのようにプロモーションビデオを流せるサービスは誰しもが利用可能なプラットフォームである(YouTubeなどの動画共有サイトはブログやサイトにエンベッド可能なため、バイラルな効果を求めるのであれば、それなりに有効な部分もある)。わずかでもファンベースが存在すれば、そのような人たちのバイラルに期待したり、たまたま誰かがそのページにたどり着いてくれることを期待したり、一応はしてくれるであろうレーベルのプロモーションによって相乗的な効果を挙げることを期待したりすることもできる。とりあえずは、運と実力の両方が必要だとしかいいようはないけれども。

また、ギャンブル好きな人たちであれば、そのようなプラットフォームをより多く採用することでマスに届く可能性は高まるだろう(もちろん、それでも低い確率のなかでのお話)。100のサービスがあれば、その全てを利用したほうが、1つのサービスだけに頼るよりも確率は上がる。ただ、クリティカルマスに達するまでは、どんよりどんよりと広がっていく。そこで収束するか、一気に突き抜けるかは、運と実力頼み。

先ほどはきっかけとしてはストリーミングがいいと述べたが、もしそれを気に入ったとすれば、それがダウンロードできるほうが望ましいだろう。当該の楽曲やアーティストによりコミットできるほうが、影響力は大きくなるというだけのことだけれども(ただし、音楽にとってそれは真実だと思う)。

そんな感じで、ちょっとずつでも広がりを見せる段になって初めて、P2Pというのは効果を持ちうるのだと思うし、それはその辺の限定されるのかなと思ったりもする(ちなみに、メジャーアーティストの楽曲が購入に値するかどうか、という評価をしたいがたためにP2Pネットワークからダウンロードする、というのもよく聞く話ではある。個人的にはそれは真実であるとも思うし、言い訳にしている人もいるとも思う。ただ、そういった層を狙うのであれば、全編ストリーミングでの提供でもいいし、時限的なメディアの提供でも良いように思われる)。少なくともユーザが意図せずに勝手にダウンロードされるということはない。少なくともそれをどこかで聴き、ちゃんと聞いてみようか、ということでダウンロードされる。

無料でダウンロードされることが、当該楽曲のCDやデジタルデータの購入に効果を持つのは、その人の価値観がデータとしてのメディア以上に、フィジカルなメディア(CDとか)に重きを置いている場合に限られる。前者に重きを置いている人が、わざわざCDを購入するということは考えにくいし、改めて全く同一のデジタルデータを購入するということも考えにくい(その点に関しては、ビットレートなどの品質の差を設けるという手もないではないが、効果は薄そう)。ただ、オンライン上から手に入らないカタログに関しては、購買促進の効果はありそうだ。また、多くの人に自らの存在をアピールすることができるということは、ライブ会場に足を運んでくれるリスナーも増えるということである。

無料で提供するリスクと引き換えに、多くの人にリーチする可能性を得る、という構造にあるようにも思えるのだが、それでも保険、というわけではないが、広告収入を得るという手段がないわけではない。先日お伝えしたように、Jamendoはその広告収入を楽曲を提供しているアーティストに、その人気に応じて分配している。ワナビーアーティスト達のショーケースのような大きなプラットフォーム(おそらくP2Pを利用したものになるだろう)、そういった試みが今後増えてくれば、アーティスト側が抱えるリスクは若干ではあるがより小さいものとなるかもしれない。


この辺で限界。頭が廻らなくなった・・・。

やはり、まだまだ精査しきれていない部分もあるし、大幅にはしょった部分もある。その一方で考えの及んでいないところもあるだろうし、言及の足りない部分も多いだろう。また、それぞれの影響については予測が難しいところもある

あのカナダの調査を紹介したエントリをあげた者として、単なる相関と因果の混同、「違法共有クソ喰らえ vs 権利者クソ喰らえ」の議論で終始するというのはちょっと残念なので、取り急ぎ纏めてみた。

このエントリでの区別は単に思いついたものだけを並べただけなので、実際の個別のケースやアプローチには、より多くの選択肢があるだろう。とりあえずここでは、要因を切り分けていって、その1つ1つの組み合わせによってはメリットとデメリットの関係は変わるよって考え方を伝えたかったのです。。

要は、あるアプローチが、どのような人々に対して、どの部分に関してメリットを持ち、デメリットを持つのかということをより具体的に考える必要があるということ。ある人々にとって無料で配信することが「メリット>デメリット」という構造を持つのであれば、可能な限りデメリットを抑え、メリットを増大させるように実現すべきだし、無料で配信されることが「デメリット>メリット」な構造を持つのであれば、それを逆転させる方法はないかを考え、それが難しいのであれば、そのデメリットを可能な限り抑制する必要がでてくる。

ただ、基本は全て以下のエントリで紹介した法則に集約する。

音楽を聴き、好きになり、そして購入する(+共有したいと思う)、この3ステップを最大化させ、かつそれによって不利益を生じないようにする、そのような試みにおいて、無料である、というインセンティブは有効な選択肢の1つとなると思う。随分前に書いたエントリなので、私が考察した部分は今とは若干異なるところもあるけれど、紹介したエントリにある法則は未だに真実だと思っている。

余談だけれども、らばQのいう「違法ダウンロードされたほうがCDは売れるの法則」というのがあるのだとすれば、どのようにしてそれが実現されうるのか、ということを当ブログなりに考察してみたエントリでした。

向こうの記事の中にニコニコ動画に記述があるけれど、個人的にはビデオコンテンツの無料配信ってのも興味があるなぁ。もちろん、何度も聴くという音楽の特性と、1度限りで満足できるというビデオコンテンツの特性の違い(どちらも傾向、ね)を考える必要はあるだろうね。たとえばアニメコンテンツなんかで考えると、全く見ない人は別としても、まぁ見てやってもいいかな位の人から、絶対買う、買えなきゃ死ぬ位の人までの分布の中で、ニコニコでそのアニメを見たことで、どれくらいの人がDVDの購入やレンタル、TV視聴を抑制されるのかというところに興味がある。ニコニコで見れたからペイしないよという層が多いのであれば、それは抑制されるべきなんだろうけど、一方で、そういった層が少ない、つまりDVDを買うつもりはないけど見れるなら見るよという層が多いのであれば、コンテンツホルダー自身がニコニコにコンテンツを提供して、広告塔の挿入によって利益を上げるってのも悪くはないのかも。個人的にはCMにコメントできるってのはなかなか面白いかもしれないなぁと。ただ、ネガティブコメントも予想されるので、問題がないわけじゃないだろうけどね。この辺はいつか考えてみたい。

最後に、らばQの中の人にどどいつを。

言いたいことは わかっちゃいるが 釣り記事だけは 勘弁ね

お粗末。

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Radioheadの『IN RAINBOWS』の購入金額と無料ダウンロードを考える
当サイトでも取り上げた、自由に価格を決める事が出来るRadioheadの『IN RAINBOWS』ですが ITmedia Newsに分かりやすい数字が出ていたのでご紹介。 10月1~29日の間にIN RAINBOWSのサイトにアクセスした人は全世界で120万人。そのうちかなりの割合がアルバムをダウンロー
2007.11.08 09:01 | 音楽データベースをみんなで作ろう~A project of musira♪
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Comment

匿名のPeerさん | URL | 2007.11.07 21:01 | Edit
「すべからく」も「これ幸い」も日本語間違ってますよw
主張は普通なのに、恥ずかしい背伸びで説得力ゼロ、残念です。
heatwave | URL | 2007.11.07 22:04 | Edit
あらお恥ずかしい。

説得力という点では、真面目に読んでいる人はそれを抜きにして読んでくれるでしょうから、大した問題ではないかなと。ただ、読むだけの強い動機づけを持たない人にとっては、それで説得力が低下してしまうことはあるでしょうね。
http://en.wikipedia.org/wiki/Elaboration_likelihood_model

残念なことです。
とおり | URL | 2007.11.07 23:43 | Edit
揚げ足取りしか能の無いアホを相手にマジレスするだけ無駄でしょう。
スルー推奨ということで。
Ripple | URL | 2007.11.10 23:21
Radioheadのケースは先日の記事にもあったように、全てのDLが彼らのサイトを利用した訳でもないので、その辺は数字の一人歩きにならないようにフォローすべきです。その上で、ただし全体のパイが大きくなれば態々ペイしてくれる稀少なユーザーが塵積もることで、売上げも大きくなるという事例~という流れがいいのでは。

また、利益に関してもレーベルとのやり方次第では5%の方が割に合うなんて事例も出てきます。セルフってのはほぼ全てにおいて自腹ですから。両パターンによる可処分所得?みたいなものが分からない限りこちらも一人歩きがちになります。とは言えRedioheadが大成功をしたアーティストであり、色々な意味での地盤を既に持っている以上、5%よりセルフの方が遥かに割が合うというのは間違いないでしょう。

ネットはどうも性善説になりがちなので、ちょこっとツッコんでみました。しかし個人的にお捻り方式?で気になるのは最高金額ですねー。自分は利用して無いのでシステムがどうなっていたか存じてないんですが、ペイの設定に上限がなければ面白い話。金額だけなら個人情報保護云々に引っかからないから公開して欲しい…。

あと、やはりこの手の新しいビジネスモデルの問題で語らなきゃならないのは既存のビジネスモデルや敷かれてきたものへの改めての評価や考察でしょうか。例えば大まかなものとして、束縛されるが有名にしてもらえる斡旋をしてくれるシステム。稼ぎ頭の利益で他のアーティスト(新人)を支えるシステム。そんなこんなで巨大産業となり音楽という娯楽が身近で当たり前のものになった歴史。それらは何だったのか? そして何が良かったか? 何がダメだったか? ではインターネット以後というクロフネによって開かれた未来ではそれらはどうなるのか? 引き継がせるのか引き継がせないのか? 既存の何を? 善は引継ぎ悪は引き継がせない? いやそもそも善悪はお互い切り離せるもの? 表裏一体かも? ならばどうする? 上手い落としどころがある? じゃあそれは何だろう? ~そういった部分があった方がいいと思います。

まぁ再評価することで、新しいビジネスがどうあるべきかがより導けるのではないかと。インフォームドコンセンサスっていうんでしたっけ? ここが未熟だから未来ってのが無いんです。今、多くあるのはギョーカイorユーザーそれぞれのワガママばかり。そんなすれ違いが置き去りのままでは良質な未来のヴィジョンなんて出やしないでしょうし、音楽業界も湿気てきて当然です。

どっかのライターさんがそんな風なコラム書いたりしないのかなぁ、自分の言いたいスタンスはギョーカイ寄りだし遠慮なく出来ると思うんだけども…(笑)
heatwave | URL | 2007.11.13 09:42 | Edit
そうですね、個人的には産業の側もユーザの側もどんどんわがままを言っていいとは思うのですが、互いにその両者のわがままの均衡点を探るという点においては、それほど議論やすり合わせが進んでいないのではないかと思います。どちらも言いっぱなしな感じで。そうなると、よりパワーのある音楽産業のほうの意見が通りやすいですから、ユーザにとってはますますもって魅力的ではなくなってくると。

ここであげている例は、(商業的に)完成したアーティストと、(商業的に)不遇なアーティストです。じゃあ、ミドルクラスなアーティストはどうなの?というと革命的な恩恵や選択肢というのは、前者二者に比べるとないのかなと思っています。確かにその辺のフォローをもう少し入れても良かったですね。ミドルクラス以下のアーティストにとってはパイの大きさは「塵も積もれば・・・」といえるくらいのレベルではありませんから、このモデルを選択することは難しいですし、また、このようなモデルがライトミュージックに対してであれば、たとえビッグネームといえども難しいのかもしれません。おそらく、このようなモデルで成功するのは、リスナー自らのアイデンティティに組み込まれているようなアーティストだけなのかもしません。

ただ、一部の完成したアーティストにとっては、レーベルが足かせになると思っている人も多いでしょうし、その一方で不遇な扱いを受けているアーティストはレーベルは頼りにならないと思っているでしょう(小さな成功でも起さないと振向いてはくれないかもしれないですから)。その辺をフューチャーしてみたってところです。

でも、これって連続的なんですよね。一定の成功を収めた新人アーティストはようやくレーベルから好待遇を受け、プロモーションもしてくれるようになる、で、その中の一握りの人たちが大成功を収めて、レーベルが足かせに思えてくる。そうしてレーベルを出て行く。このようなプロセスが続く以上は、レーベルの必要性ってのは十二分にあるのですよね。

少なくともミドルクラス以下のアーティストは、独立してパブリシティを得ることは難しいですし、そのプロモーションのノウハウもレーベルのもつものに比べるとやはり見劣りします。また、安定したCDという媒体でのリリースも、ビッグネームに比べると収益性が低いことが見込まれるために、困難なことが多いでしょう。

確かに、稼ぎ頭が抜ける分、新人へのサポートが更に難しくなるということも考えられますが、レーベルとしてはよりショーケース的なSNSなり、プラットフォームを活用していくという手もありますね。上が切れた分、下に使うコストをいかに軽減し、ミドルクラスから利益を上げるか、ということを考えてもいいかもしれません。

と、未来ばかり見てなかなか再評価という方向に進まなくてすみません。ただ、そういうレビューを読んで見たいですね。そしたら、私はユーザよりのエントリをアップしますけど(笑)。

ちなみに、Jamendoなどは寄付された金額とアーティスト、寄付したユーザ(匿名も可)の一覧がありますから、結構面白いですよ。あとRadioheadに支払った金額で言えば、Trent Reznorが俺は5,000ドル支払ったね、といっています(もちろん冗談でしょうが。俺もこれだけ払ったんだから、お前らもSaulに5ドル払えよ、というジョーク)。
http://nymag.com/daily/entertainment/2007/10/trent_reznor_and_saul_williams.html

あとこの記事のRadioheadのアルバムに関する金額が間違っているので、早いとこ直さないといけないですね。といっても、その数字すらRadiohead側が否定しているので、いろいろ当たらないと直すに直せない・・・。
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