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「iTunesが私の著作権を侵害している!」:怒れるアーティスト、最新アルバムをBitTorrentで無料配信

Flashbulb、別名Benn Jordanというミュージシャンは、Appleに対して怒りをあらわにしている。彼は、自身の最新アルバムが無断でiTunes似て販売され、そして彼の手元には1セントすら入ってきていないという。彼はその怒りをBitTorrentで彼の最新のアルバムをリリースするという方法で発散させることにしたようだ。しかし、彼はこれを無料の配布と考えているわけではなく、あくまでも、気に入ったら購入して欲しい、というプロモーションなのだという。これをきっかけに、彼は既存の音楽ビジネスのあり方、アーティストとしてのあり方、彼自身のBitTorrentサイトの利用、海賊行為について、彼の考えを述べているよというお話。

原典:TorrentFreak
原題:Pirated by iTunes, Artist Turns to BitTorrent
著者:Enigmax
日付:February 06, 2008

成功を収め、しかしまた怒れるミュージシャンは、従来の配信手法を止め、新たな潮流となりつつあるイニシアチブ(例えばRadioheadの『In Rainbows』プロモーション)を採用し、自身の最新アルバムを無料でダウンロードさせることにした。現在、それはThe Pirate Bayやいわゆる『OiNKの代価』サイトであるWhat.cdにて利用可能となっている。What.cdでは、より多くのダウンロードを促すため"free leech"にてアルバムが提供されている*1

TorrentFreakがBenn Jordanに話を伺ったところ、彼は幻滅したどころの話ではなく、『激怒』しているのだという。iTunesは彼の作品を無断で販売し、そして全てのお金を手に入れているのだと。

TF:あなた自身のこと、あなたのこれまでの経歴を少しお聞かせください。

Benn:私はBenn、29歳になります。5歳くらいから、クラシックギターの演奏を始めました。それ以来、人生を通じて望んできたことは、音楽を製作するということでした。それから20余年がたち、音楽を生活の糧としていると言えることを運がよかったと感じます。私はこれまでにさまざまなインディーレーベルで、およそ14年間に渡ってアルバムをリリースしてきました。ここ5年間は、テレビ、映画、広告向けに作曲もしてきました。音楽のおかげで、世界中を旅することも、たくさんの素晴らしい人々に会うことも、作品を通じて自分自身を表現することもできました。私には音楽を作曲する以外の理由で、この惑星に生きることなどできっこないでしょう。

他方、私のレーベル*2には、複雑だったり、ラディカルなプランはありません。私達の目標は、単純に出来うる限り私たちのアーティストに補償すること、なのです。私達の利益のために「デジタル革命」を利用することも含まれるでしょう。ファンを罰することで私達のアーティストを罰することの代わりに、です。

TF:あなたとレーベル、『産業』との契約についてお聞かせください。そして、なぜ幻滅したのか、も。

Benn:幸運なことに、私のレコード契約は、常に交渉がうまくいっていました。かつて小さなレーベルにいたときもありましたが、そのときも大きなレーベルから声がかかってはいたのです。ただ、そうしたものは常に何らかの胡散くさい条件がつけられていたものです。おかげでサインせずに済んだのですけどね。

それでも、50/50の契約であっても、私がアルバムを2,000枚売ったところで、どうにか250ドルが手に入るといったところです。私のライブに来る多くの人たちが、iTunesで私の音楽を購入したと言うのです。しかし、まだ私の音楽をiTunesでホストするのを許す契約にはサインしていませんでした。私はそこから1セントだって得てはいないのですから。そこで私はレーベルから得られる数字を調査し始めました。その結果、リテーラーに比して、いかにアーティストやレーベルがお金を得ていないかという衝撃的な事実を知ることとなりました。私はiTunesについて聞いて廻ることにしました。Sublight Recordsのオーナーは「放っておけ」と訴えましたが。他のみんなも、私の電話、電子メールを相手にしないという驚くべき反応を示しました。

ついに私がデジタルディストリビューター(「デジタルディストリビューター」という言葉はこれまで私が耳にした中で、もっともの痛ましい職業名ではありますが)の支配力について理解したのは、一度iTunesシステムにファイルが存在してしまえば、それは1年の間、文字通り削除(remove)することも、取り下げることもできないのだと聞かされたときでした。Appleが彼らですら停止できない自己意識を持った終末兵器を作り出したのか、それとも、その関係者たちが、私のようなアーティストからうまい汁をすすることを楽しみ、脅迫のためにAppleの弁護士軍団を利用しているのか、はわかりませんが。

この問題に関して、私が弁護士を雇ったあとですら、以下の回答がAppleから受け取った唯一のものです。

親愛なるBenn

私は、あなたがiTunes Storeにあなた自身のアルバム「The Flashght」やその他のアルバムを発見したことで、幾分動揺して書いているということ、あなたが購入された音楽に対して著作権使用料を支払われる権利を有していると感じていることを理解しています。これを発見し動揺させてしまったであろうことを申し訳なく思います。私はWendy、あなたとこの問題を話し合う適切な人々に連絡しておきます。

さて、私がやっつけなきゃいけない海賊達は誰なのでしょう?非DRMフォーマットが利用できず、Amazonでは30ドルもかかってしまうために、私のアルバムをダウンロードしているキッズ達?それとも、数千ドル相当の私の音楽を販売していながら、それすら認めていない巨大なマルチビリオン企業?

私は幻滅しているのではありません。激怒しているんです。そして、これまでにこれらの配信手法を通じて音楽に1セントでも支払った人なら誰でも激怒してよいと思います。音楽を盗むなと訴えましょう、そしてこのような購入方法をダメにしてやりましょう。

TF:あなたはOiNKのメンバーでした。そこにいたときのこと、どのようにサイトを利用していたのかなどをお聞かせください。

Benn:OiNKは驚くべきネットワークでした。超レアなオールドジャズレコードの熱狂的なコレクターとして、OiNKはこれまでで最も完璧で多様なライブラリであったと言えるでしょう。私は非常にレアなアルバムをいくつかアップロードすることでリクエストに答えました。最終的には、ネットワーク内の誰かに私のSeedリストのスクリーンショットをレコードレーベルに送りつけられるといった嫌がらせにあうことになりましたが。不満を言えば、モデレータが単に、私のネットワーク上での他者とのコミュニケート機能、torrentへのコメント投稿を停止しただけだったんですよね。パラノイアも厳格さも理解できますけどね。

それでも笑って済ませられるくらいのことだったので、私は利用をやめました。OiNKが停止したとき、私が驚いたことは、OiNKのサーバがどこか別の国にあるわけではなかったということです。

TF:あなたがサポートを受けているいわゆる『OiNK代価』サイト、『What.cd』についてお話いただけますか。

Benn:What.cdが、実際にアーティストが自らの作品のtorrentと関係を持ち、プロモーションを行うという考えは非常に新鮮なものでした。それはアーティストのためになるというだけではありません。世界中のいかなる法廷であれ、著作権者が作成したTorrentに対して著作権侵害の責任を負わせることはできやしないでしょう。

TF:あなたが所有するアルバムのアップロードは別にして、あなたはOiNKにいたころ、アンチパイラシーのスタンスを取っていました。大きく心変わりしたのはなぜですか?

Benn:私は、大きくスタンスが変わってしまったとは思っていません。確かに、海賊行為に好意的だといえば、素晴らしいPRにはなるでしょう。しかし、それは嘘をつくことになります。それでも、“The Flashbulb Promotes Piracy”といったインターネットニュース記事を目にし続けています。コントロールすることなどできやしません。私はtorrentのなかに「気に入ったら購入してね」というメッセージをいれて、私が所有する作品をアップロードしているのですから、どうすれば海賊行為を推奨しているということになるのでしょうか。

私が促進したいことは、アーティストが彼/彼女の音楽で何ができること、できないことの選択するアーティストの自由です。さらに重要なのは、リスナーが彼/彼女のコンピュータ、MP3プレイヤー、インターネット接続でしたいことをする自由です。産業の長きに渡る旅路のあと、あなたは1つのことを学びます。「何かが正しくあることを望むのであれば、あなた自身の手でそれをなさなければならない。」私のアルバムのダウンロードが、試聴のためであれ、CDを持っているのであれ、海賊行為のためであれ・・・私は、聴き、気に入ったもののバージョン/リップを手にして欲しいと願っています。

TF:あなたは海賊行為に好意的ではないといっています。しかし、あなたはOiNK、更にはWhat.cdからダウンロードしています。矛盾しているようにも思えますが、これをどう説明しますか?

Benn:私の場合、ダウンロードリストを見てもらえば、私の考えがわかると思います。それらのダウンロードの大半は、実際に私が既に所有しているアルバム(ビニールアルバム全部を録音するよりダウンロードする方が非常に簡単なんです)、試聴したが気に入らなかったアルバム、単に適当な非DRMフォーマットで(CDを含む)利用できないアルバムです。一部のソフトウェア、例えば私のリストにあるTomTom DVDは、実際にはソフトウェアなしに米TomTom GPSユニットを購入することができないのを考えれば、技術的に「剽窃する」ことは不可能です。問題は、トラッカーが逮捕されたとき、企業はこれらを含めて損失を計算するということです。

今、このインタビューの時点で、私の最新アルバムは、what.cdだけで6381回ダウンロードされています。その欺瞞的な方程式を利用すれば、私の損失は100,000ドル以上です。やろうと思えば、私はこれらの損失を利益から差し引くことができます。つまり、1セントたりとも所得税を支払わなくてもよいということです。ただ、それは邪悪な、企業的な、犯罪的な思考をもった立場からは、筋が通っているということになるのでしょうけれども。

そのうえで、私にとってiTunesやその他のサービスは単純に容認し得ないのです。私が合法的に購入した製品をコントロールする企業などありえません。

OiNKは、世界最大の音楽ライブラリでした。人々はそれが犯罪的であるという理由でそれを利用しませんでした。人々はそれが代金を支払うことのできるいかなるサービスよりも、文字通りよりよいものであったので利用しました。それは、音楽ライブラリのフロントドアにキャッシュレジスタを持つことを許さないというレコードレーベル、アーティスト、政府の強情な行為でもあるのです。

RIAAが恐れているのは、人々自らが音楽を探索することから、彼らの数十億ドルのバックボーンをもはや守ることができないということです。彼らのビジネスプランは、何が人々が聴きたがる、買いたがるものであるのかを世界中に知らしめるという形で発展してきました。そして現在、彼らは再び才能あるアーティスト達と競争しなければならなくなりました。人々は市場の支配権を回復し、音楽は再び精査されるようになります。音楽のダーウィニズムに委ねられるということでしょう。音楽産業にとって非常に面白い時代です・・・私の人生全ては音楽を製作することに捧げられているのです。上等じゃないですか。今回の私の最新レコードに関する状況が、どのように行われるビジネスであろうとも、人々の望むものを正確に人々に与えることが最もスマートな方法である、ということを、他のレーベル、他のアーティストに証明できればと考えています。

TF:音楽を共有していることで、ひどく罪に問われている人々をどう思いますか?

Benn:明白なことは、私の音楽を聴くことで誰かが罰金を科されるとか刑務所に入れられるということは、私のもっとも望まないところである、ということです。私自身がTorrentをアップロードするもう1つのメリットとしては、もしそうしなければ、政府やRIAAによって違法であると考えられるネットワークに、ほんの少しでも合法な領域を作るということです。他の誰かが私の音楽のTorrentをアップロードしたとすると、それは私の承認なくなされたことになるでしょう・・・逆に考えると、更に重要なこととして、もし誰かが管理人のアパートに捜査に入ったとして・・・私のところに、警官が告訴するかどうかを聞きにくることはありません。

TF:人々が寄付をする、ということに関してどうお考えですか?

Benn:リスナーがアルバムを気に入ったのであれば、直接アーティストに寄付をするという選択肢があります。もし、私のCDを欲しいと思うなら、直接私のレーベルに注文することができます。私は発送部門に自分の母を雇ってさえいます。私が見てきた限りでは、彼女は脅迫観点的で、精力的で、完全主義者なオフィスワーカーでしたからね。

最後に、私のアルバムのコンテンツ、リリース、ビジネスの全ての詳細は、私がそうして欲しいと望むまさにその方法でなされています。私達があまりになれすぎてきたディストリビューションシステムに比して、それがいかに解放し、利益をもたらしてくれるのかを、他のアーティストにも理解して欲しいと願っています。

TF:Radioheadは、「In Rainbows」をオンラインで無料で提供した後、非常にうまくいきました。あなたはこの実験に参加してまだ数日ですが、どうなっていくと思いますか?

Benn:CDの予約に匹敵するというほどではありませんが、寄付はうまくいっています。ただ、まだ祈らずにはいられないというところですが。1,2週のうちに、詳細な統計レポートを公表する予定です。どういうわけか、私は円グラフを作製するのが好きなもので。

TF:アルバム、Soundtrack To A Vacant Lifeを聴きました。本当によかったです。それについて少しお話いただけますか?

Benn:製作に2年かかっています。コンセプトとしては、私自身の人生のサウンドトラックを書いたものです。もちろん、これが意味するところはエレクトロニクというよりシネマティックだということです。楽曲は年代順に全て繋がっているのです。私の以前のアルバムを聞いたことがある人なら、このアルバムはよりメロディックで、おとなしく、インストゥルメンタルだと思うかもしれませんね。最初から最後まで、ヘッドホンで聞くことをお勧めしますよ。

TF:そうですか、後ほどそうやって聴いてみます。お時間をいただきまして、ありがとうございました。

Benn Jordanのブログはこちらから。

*1 プライベートトラッカーでは、一定のRatio以上でなければTorrentを利用できないことが多いが、そうした制約なく、誰しもがダウンロード可能な状態にある、ということ。

*2 彼はAlphabasic Recordsのオーナーでもある。

最初に読んだときには、Benn自身がiTunesでの配信をコントロールできないほどに権利を有していないのではないか、とも思ったんだけど、Benn Jordan自身のブログでは

1. I currently release music with one record label, my own. I own 100% of it and I own 100% of the mechanical, publishing, and performance rights to my music. The same goes for any other album I’ve released in the past, I’ve reacquired all rights back from the labels. As it is possible that some 3rd party had uploaded my music to iTunes, they are still lacking any sort of competence in establishing communications with their artists. If you buy my album on iTunes, there is simply no route in which that money can ever get to me.

と書かれており、彼が知らないところで配信契約が結ばれること自体おかしいようだ。また、iTunesで楽曲を購入しても彼にお金が入ってくることは無いのだという。

私には、どちらが誤っている、誤解しているのかはわかりえないので、ただただAppleを批判するということは避けたいのだけれども、それでもApple自身がiTunesでの配信にいたる契約プロセスを著作権者にすら明かさないという状況にあるので、擁護することも難しい(もちろん、裁判に備えて、というところもあるのだろうが)。

まぁ、彼の怒りも理解できるところではある。自身が権利を有しているものを無断で販売され、そのうえ勝手に販売した方が利益を上げ、権利者である自分には1セントすら入ってこない。しかも、AppleはDRMなどというユーザにわずらわしさを与えるものでしか販売していない。著作権を守れ!などと盛んに言われ、ユーザが追い回されている一方で、こうした企業によるパイラシーが依然として許されている(まさに著作権によって守られてきたところではないだろうか)。色んなことが入り混じって彼を憤慨されているのだろうなぁと。そういった怒りが、彼自身BitTorrentユーザ、OiNKユーザであったこともあり、BitTorrentでの配信に繋がったのだと思われる。

それに関連して、彼がBitTorrent上でのファイル共有を是認している理由もまた興味深い。彼の主張はしばしば、「言い訳に過ぎない」、「言い訳としても通用しない」と批判されている。しかし彼は、そうした経路でなければ現実的に入手できないもの、既にフィジカルな媒体で有しているもの、試聴のために入手したもの、これらの理由によって、単純な海賊行為とそうでないものを区別している。

もちろん、これらは著作権の侵害にあたる可能性が極めて高いのだろうけれど、一部のユーザの実感としてこうした考えがあるのだということは理解できる。なぜお金を出しても手に入れることができないものを唯一の入手手段によって手に入れることが悪いのか、なぜ既に有しているものを別の形態にすること(つまりエンコード)を簡便化するためにダウンロードしてはならないのか、なぜ購入するものを精緻に吟味することが許されていないのか、そういった思いはあるだろう。

こういった点が海賊行為そのものの議論を非常に複雑にしているのではないかなと思う。RIAAから見れば、彼も彼が海賊と呼ぶ存在も、等しく海賊として評価されるだろう。しかし、彼は彼自身を海賊とは思っていないだろうし、そんな彼が海賊だと感じる人々も存在する。

確かに、「全ては個々の著作権者が決めることだ、彼の言っていることは言い訳に過ぎない、通用しない」というのは正論だ。その部分に反論するつもりはない。ただ、そうした意見が私の中に響いてこないのは、個々の著作権者って実際に誰だろうという部分があるからかもしれない。いや、それだけじゃなく、著作権に関する議論に存在する「現実」、非常にドロドロした部分があるからこそ、そうなのかもしれない。

これまで著作権者対海賊という一連の動きを見てきて思うのは、結局のところ、そこに個々の著作権者が出てくることはほとんどなくて、総体としての著作権者、つまりレコードレーベルが海賊達との争いを繰り広げている。しかし、そのレコードレーベル自体、著作権者という座をめぐっては個々のアーティスト達とのコンフリクトを抱えてもいる。そして、さらにそこにディストリビューターという存在が加わる。

こうした議論は既に著作権だけで語れる部分を超えている、という側面も存在している。だから、そうしたところにまで、それは著作権法によってこれこれこう規定されているのだから、という説明をされても、理解はできても、それで議論を終わらせられるほどに納得できるものでもない。

Radioheadの手法が注目を浴びたとき、一部の人々はこれでは音楽産業はやってはいけない、一部のメジャーアーティストが存在してこそ、新たな才能を発掘できたのに・・・、と主張した。しかし、そうした人たちに、Radioheadは何も法に反しているわけじゃない、別に悪いことなんて無いよ、といって話が済むのだろうか。おそらくそれでは納得できないだろう。何もこうした人々は、Radioheadが法に違反しているとかそういう議論をしたいわけじゃない。彼らは、Radioheadの手法が「音楽産業にとってどのような影響をもたらすのか」を懸念しているのだから。

少なくとも、私にとって海賊行為の議論というのは、単純な著作権の話に留まらないというところがある。著作権がどのように存在しているのか、どうあるべきか、という側面で議論されることもある。しかし、産業がどうあるのか、産業がどうあるべきなのか、という側面での議論も同様に存在しているのだ。

このことは、著作権がこう定められているのだからこうなんだ、という議論に対してだけ冷めた視線を投げかけているわけじゃなくて、逆に、コンテンツ産業にこうなんだからこうしたっていいだろう、という議論に対しても同様のことだ。Bennの主張していることは、1ユーザとしては理解できる部分もあるし、彼の今回の行動がその説得力を高めているものではあるけれど、やはり許容し得ない。

コンテンツ産業は、そのビジネスモデルが著作権に深く根ざしたものであり、それゆえに著作権の議論や産業の議論を複雑にしている。もちろん、それぞれに議論されることで有益な議論が可能となることもあるが、片面からだけの議論がそれほど有益ではない論点も存在する。

これ以外に興味深いところとしては、RIAA、つまりメジャーレーベルのこれまでのプロモーション手法でもある、人々が何を聴きたがっているのかをレーベル側が決定してあげるという手法が通用しなくなっている、という指摘。人々の音楽探索が個々人によって、より容易となり、人々は自らの音楽探索の末に、自分の聴きたい音楽を見つけることのできる時代だということなんだろう。

ただ、これが意味するところは、人々が求めているのは音楽だけに留まらない、ということでもあると思う。むしろ、音楽産業にとっては、恩恵をもたらすものというよりも、音楽以外の素晴らしいもの、により目を向けさせる時代になったのではないかと。もちろん、フィジカル、ヴァーチャルという垣根を超えたとき、音楽はより人々に容易に入手でき、より容易にディスカバリーが可能となった。しかし、それと同時に、これまでフィジカルな世界に制限されていた全てのものが、ヴァーチャルな世界の開放によってその垣根を決壊させてもいるのだ。

データに還元しうるものであれば、その大半のものが人々が日常利用している端末によってアクセスすることができるようになった。コミュニケーション、出会い、アートワーク、ビジネス、創作活動など、多くのものがフィジカルな日常のさまざまなところで、ヴァーチャルな世界からの結合を許している。最近盛んに「フィジカルの復権」「エクスペリエンスこそ重要」といわれるのも、こうしたヴァーチャルな世界からの結合を許さないものこそ、唯一無二の価値観を与えうるのだということなのだろう(私としてはフィジカルなものは代価が難しいというだけであって、そこに内包される価値はフィジカルもヴァーチャルも同様に評価されると考えているのだけれどもね。単純にヴァーチャルな世界が代価可能なものが多いというだけで。理想論をいえば、それを超えてなお価値を有するヴァーチャルな存在があってもよいと思うのだが)。

なお、彼の作品は複数アップローダにも上げられており、彼自身が非What.cdユーザに対し、こちらでダウンロードするよう勧めている。興味のある方は是非聴いてみてほしい(なお、ここでアップロードされているアーカイブにも「気に入ったら購入して欲しい」というメッセージがhtmlファイルで同梱されている)。

余談だけれど、彼の作品を利用したマッシュアップコンテンツを発見したのでご紹介。クリップの最後に、インスピレーション元まで含めたリファレンスがあるのがいいね。

Gigermorph Meechem

これ、ビデオを音楽を組み合わせただけじゃなくて、音楽自体も2つのものをマッシュアップさせてます。かっこいいね。

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Comment

Beatdoctor | URL | 2008.02.12 20:10
早速聴いてみましたが素晴らしかったです。
ご紹介ありがとうございます。
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