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英国調査:海賊行為の原因は選択肢の欠如?

先日、英国でリリースされた2008 Digital Entertainment Survey (pdf)という調査のパイラシー項目にて、違法ファイル共有ユーザの多くが既存の合法サイトが、違法に手に入るもの以上にカタログを保持していないために違法ファイル共有を行っていること、違法ファイル共有ユーザであっても、満足できるサービスが存在するのであれば対価を払って利用することなどが示唆されている。もちろんこれは、自身の行為の正当化という側面もあるのだろうが、必ずしも正当化だけで主張されているとも思いがたい。その辺について考えてみるよ、というお話。また、この調査では、違法ファイル共有によってISPから警告メールを送付される、訴訟などの報道を目にする、などによって、7割近いユーザが違法ファイル共有を止めようと考える、ということも示唆されている。

原典:TorrentFreak
原題:Study: Piracy is Caused by Poor Choice
著者:Ben Jones
日付:March 05, 2008

英国でリリースされたばかりの新たな研究によると、著作権侵害を行う最大の理由の1つととして、選択肢の不足が挙げられている。より詳細な調査によって英国民の3分の1が、既に著作権を侵害するコンテンツをダウンロードしたか、将来的にそうするだろうと考えているという。

2008 Digital Entertainment Survey (pdf)の主張はこれまで何度も言われてきたものと異なるものではなく、サービスの不足が海賊行為を招いているということを推し進めるものである。

全体としては、海賊行為を認めた人々の70%が「合法的なサイトが、違法なサイトほどのカタログを持っていない」ことに同意し(Beatlesの楽曲を探してみればわかるだろう)、また同程度の人々が、望むものが利用可能であれば、きちんと支払ってダウンロードするだろうと答えている。おそらくこれは、BitTorrentダウンロードの半数がテレビ番組である、ということを説明する主な理由の1つでもあるだろう。

英国民の3分の1が海賊とみなされるという事実は、これら消費者が他のチャネルを通じて入手できないものを望んでいるというシグナルであろう。それが無料であるということ以上に、利用可能であることが重要だということ。

利用可能性の問題においては、著作物をダウンロードしているという回答者の68%が、違法にダウンロードするほうが、彼らが望むものをより早く手に入れることができるために、より便利であると回答している。

加えて、レポートでは、アンチパイラシーキャンペーンはあまり効果的ではないことを示している。業界団体を失望させるであろうこの指摘によると、68%の回答者がダウンロードしてもつかまることはないだろうを考えており、‘You can click but you can’t hide‘といった(訳注:アンチパイラシーキャンペーンの)スローガンも誓いというよりはむしろ、脅迫として理解されているという。

進展している訴訟などを見ても、ファイル共有ユーザを特定し、起訴するための情報の要請に関して、これらのケースにおいて用いられた手法の妥当性を裁判官は快く思っておらず、ユーザを捕らえる可能性は着実に低下している。

エンターテイメント産業がこのレポートから何かを学ぶのであれば、彼らが時代遅れにならぬように、バックカタログを早々にリリースすることではないだろうか。彼ら以外の誰かに、無料でそれをさせているよりは。

この話題は結構いろいろなところで扱われているのだけれども、それぞれに注目しているところが異なるのが面白い。TorrentFreakでは触れていないけれど、上記以外にも興味深い結果が示されている。それはおよそ70%のユーザがISPからの警告メール、違法P2Pファイル共有による裁判などの報道などによって、ファイル共有を止めようかと思う、という傾向も得られている(Ars Technicaの記事はこちらのトピックに注目している)。なかなか面白い(PDFの209ページを参照のこと)。ある意味では、英国で検討されているかも知れない(一応は否定されたが)「スリーストライクアウト」の方針の効果を期待させるものでもあるのかもしれない。

ただ、米国でのKazaaユーザや現在の大学生に対する訴訟/和解戦略が目立った効果をあげていないことを考えると、止めることは考慮するものの、結局は止めない、もしくはそうやって止めていくユーザがいる一方でそれを補って余りあるユーザが参入してくる、というところだろうか。

さて、上述の記事では選択肢の欠如が、海賊行為を招いているという可能性が示唆されている。個人的にも、そういった可能性はあるのではないかと思っている。たとえば、オーストラリアでは米国のドラマに対する違法ファイル共有のデマンドが高く、その原因の1つには、米国での放送後の遅延や放送されないことなどが考えられている。もちろん、この辺はライセンスなどの関係上、そうそう対応しうるものではないにしても、そういった原因を考慮した対策を考えることで、対処できないこともないだろう。実際、オーストラリアの放送局Tenはそうした試みを開始している。もちろん、こうした対応をしない放送局などが悪いとか、海賊行為を正当化するとかいうわけではなく、そうしたアンチパイラシー対策の方向性もあるよ、ということ。

どのような動機からであれ、違法ファイル共有ユーザの多くはカタログの貧弱さから、その利便性から、その品質から(たとえばFLACといったロスレス形式を好む人々も多い)ファイル共有を行っているという調査や意見を目にする。そういった意見を違法ファイル共有ユーザの側が主張することも多いのだけれども、個人的にはそれが完全に詭弁だったり、自己正当化だけのものとも思えない。以前、カナダで行われた(そして物議を巻き起こした)調査結果に、ヘビーP2Pファイル共有ユーザほど、より多くのCDを購入しているということが示された。もちろん、これは「音楽が好き」という第三の変数が、CDの購入数、ダウンロード数に影響している擬似相関と考えられるんだけど(たくさん音楽に触れることで、より音楽を好きになるという可能性もないわけではないし、そういうところもあるのかなとは思うけれど、少なくともこの調査ではそこまではいえない)、こういった声を上げているのって主にそういうヘビーユーザ層なんじゃないかなと。たくさん音楽を購入しているけれど、そこで購入し得ないものを、たくさん違法に共有している。だからバックカタログが足りないことでそうした行為に駆り立られている、と主張するのかもしれない。廃盤になったまま音楽配信でも利用されていないものもあれば、もはやCDに価値をかんじることができず、音楽配信のみを利用しているのに、CDでは購入できるが音楽配信では利用できないものがある、とかね。

とはいえ、そうしたヘビーユーザは既にファイル共有界隈でも少数派であって、大半はライトユーザであることが考えられる。また、既存のカタログが不満だから利用している、といっても、流通しているファイルが主にメジャーかつ利用可能性が高いコンテンツであることを考えると、必ずしも上述したような理由だけではないようにも思える。タダで手に入れられるから、という理由だって違法ファイル共有ユーザの動機づけの重要な一部分だろう。また、ヘビーユーザであっても、違法ファイル共有にどっぷりつかりこみ、そうした利用をより快適なものとしてしまえば、利便性という言葉を用いて既存のサービスを批判し、違法に共有し続けるということも考えられるし、そこにもタダであるというインセンティブが働いているのかもしれない。

カタログの貧弱さ、利便性、品質、価格に対する不満から違法ファイル共有を行うユーザがいるのはおそらく事実だと思われる。ただ、その一方でそれを口実に自己正当化し(こうした点が調査結果に反映されていないとも考えにくい)、違法ファイル共有が行われているということも事実だと思われる。違法ファイル共有ユーザの中には、前者のユーザもいれば、後者のユーザもいるだろうし、その両方が入り混じったユーザもいるだろう。

現実的なアンチパイラシーを考えるのであれば、多角的に原因を捉える必要がある。単に、ユーザはタダで手に入るから違法ファイル共有を行っているのだ、という視点だけでは、一部の違法ファイル共有ユーザが主張するような部分を解決することはできないし、一方で、既存のサービスの質が悪いから違法ファイル共有が行われているのだ、という視点だけでは、タダであることが強いインセンティブとなって違法ファイル共有を行っているユーザには対処し得ないかもしれない。

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Comment

Sophie | URL | 2008.03.08 02:24
せめて、受注生産くらいしてくれてもいいと思うんだ、廃盤のCDとかをさ。
heatwave | URL | 2008.03.09 23:27 | Edit
Sophieさま

コメントありがとうございます。

ただ、CDのプレスは何かとコストがかかるものですから、なかなか難しいものだとは思っています。ただ、現在ではローコストで音楽配信を行うことができるわけですから、そうしないというのはどうなんだろうとは思っています。

こうした調査が真にユーザの本音を反映しているかどうかは定かではありませんが、こういった回答結果が得られているということを考えると、ユーザを追及することだけが海賊行為対策なわけじゃないんじゃないの?とは思えますね。
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