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P4P実証実験:Verizon、より高速、低コストのP2Pコンテンツデリバリーシステムの実験結果を発表

P4Pの実証実験により、P2Pトラフィックのインテリジェントなルーティングによって、ネットワーク負荷の大幅な減少、ユーザのダウンロード速度の向上という結果が得られたよ、というお話。P4P Working Groupは、米国大手ISPのVerizonやP2Pファイル共有企業のPando Networksなどを中心に、ファイル共有テクノロジーのよりよい利用を求め、ISP、P2P企業、ハードウェアメーカー、トラフィックマネジメント企業、研究機関が参加する、Distributed Computing Industry Association (DCIA)に設置されたワーキンググループ。CoreグループとしてはVerizon、Pando、Yale大学以外にも、AT&T、BitTorrent、Cicso Systems、Grid Networks、Joost、LimeWire、Manatt、RawFlow、Telefonica Group、VeriSign、Washington大学、オブザーバーとして、Abacast、Cablevision、CacheLogic、Cox Communications、Comcast、MPAA、NBC Universal、Oversi、PeerApp、Time Warner Cable、Turner Broadcastingが参加している。今回のP4Pの実験では、Yale大学の研究をベースに、Verizon、Telefonicaから得られたトポロジーデータを用い、Pando Networksによって開発されたソフトウェアのP2Pプロトコルエンハンスメントの有効性が実際のネットワーク上で確認されている。

P2PトラフィックとISP

P2Pによって生み出されるトラフィックがインターネットトラフィックの大半を占有しているということは、調査によって数字にばらつきはあるものの、ここ数年多くの調査で確認されている。一部ISPはそのようなトラフィックの占有を問題視し、それに対する対処を行ってきたが、その中で問題が生じることも多い。たとえばComcastは特定プロトコル(BitTorrent)に対する差別的ともいえる帯域制御を行い連邦通信委員会の調査を受けるに至っている。また、Time Warner Cableはヘビーユーザの過度の利用を抑制するために、従量課金制の導入試験を行うと表明し、AT&Tは、違法コンテンツのトラフィックを遮断するため、デジタル指紋を利用したフィルタリングについても前向きな態度を公に示すなどといった報道に対しては、否定的な意見も多い。

ISPのP2Pトラフィックに対する対処は数多くあるが、P2Pファイル共有において行われている違法トラフィックに対処する、という暗黙の前提があるからこそ成り立つ話であると思われる。つまり、帯域を占有するトラフィックが違法P2Pファイル共有によって生み出されているという状況であったからこそ、多少乱暴であっても何とか許されるものであった、というところがある。しかし、現在P2Pによる商用コンテンツデリバリーがますます広がっており、P2Pトラフィックに対処するということが、違法P2Pファイル共有トラフィックへの対処と同義ではなくなりつつある。

P2Pテクノロジーが有用に扱われていく中、単に帯域食いの技術であるという認識のもとそれを阻害するような帯域制御は不可能であり、違法ファイル共有に対する帯域制御によっては克服できない部分でもある。そうした状況において、Verizon、Pandoらを中心にP4Pによる実験が行われ、よい結果が得られたというのは、P2Pテクノロジーの活用のためには非常にポジティブに働くものではないか、と思われる。

P2Pトラフィックが問題視される原因

さて、これまでファイル共有を含めP2Pトラフィックが非常に膨大なものであった背景には、単にそれが人気のプロトコルであったというだけではなく、P2Pプロトコルそのものが、地理的、物理的な距離の要因を考慮することなく、世界中のPeerとランダムに接続する、という設計上の問題もあった。P2Pファイル共有プログラムの多くは、1つのファイルを複数のピースに分割し、それを保持する他のPeerからそのピースを集める(ダウンロードする)ことで1つのファイルを完成させるという仕組みで機能している。しかし、そのピースに対するリクエストはランダムなものであり、そのためにピースが必要以上に長距離を移動することも当たり前であった。たとえば、私があるファイルをダウンロードするために、アイスランド、アメリカ、イスラエル、ブラジル、イギリス、イタリア、ロシア、オーストラリアといったさまざまな国のPeerからピースを集め、それらの国のPeerに対してピースをアップロードする。

しかし、必要以上に遠くのPeerからピースを収集するというのは不経済である。むしろ、ネットワーク配置上、最も近いPeerからファイルをダウンロードすることこそ、最も経済的であるといえる。今回の実験の目的はこうしたネットワーク上の地理的な要因を考慮し、可能な限りローカルなネットワークにおいて、ファイルを収集するというインテリジェントなファイルデリバリーを可能にする、ということ。つまり、Verizonユーザが同じVerizonのPeerと選択的に接続する(接続をローカルで解決する)ことでISPに対するコストの削減、ボトルネックが減少することでユーザのダウンロード速度の向上が可能となるというもの。

P4Pの実証実験

P4P Working Groupの共同議長でもあるVerizonのDouglas Paskoによると、通常のP2Pテクノロジーを利用した場合、ローカルネットワークから収集されるデータは僅か6.3%であったという。一方、Verizonネットワーク上でおこなわれたP4P実証実験の結果、"P4P"ソフトウェアを使用した場合には、近接したVerizonユーザから収集されたデータは58%であり、P2Pトラフィックにかかるコストを大幅に削減できたという。この技術を採用することで、参加ISPは50%程度のP2Pコンテンツデリバリーコストの削減が可能になるという。

Paskoは、ビットを通過させることがオペレータに何かしらのコストをかけるものであり、トラフィックをローカルにとどめておくこと、そして目的地に到達するまでに通過するルータ、ホップの数を減らすことが重要だと主張する。通常のP2Pトラフィックの場合、目的地に達するまでに平均して5.5ホップを必要とするが、今回の実験では、それを平均0.89ホップとすることができたという。このホップ数の削減がISPのネットワークコスト削減に繋がる。ただ、どの程度コストを削減することができるかは、それぞれのリンクに依存するものであるが、Paskoはそれでもコスト削減は可能になるという。

また、このようなインテリジェントなルーティングは、ISPに利益をもたらすだけではない。Paskoによると、FoisというVerizonのIPTVサービス加入者が、通常のP2Pソフトウェアと比べて、平均して2倍ほど高速にダウンロードが可能であったという。また、一部の利用者は6倍の速度でダウンロードすることができたと述べられている。

今後の展開

Pando Network IncのRobert Levitanは、来月から始まるPandoのソフトウェアを利用した無料TV番組ダウンロードサービスNBC Directにおいて、この技術が利用されるかもしれないと述べている。 このNBC Directは広告モデルによって成り立っており、P2P技術によるコスト削減は非常に重要なファクターであるといえる。現在、既存のデリバリーシステムを利用して1時間のHDコンテンツを送信するとおよそ1ドルを要するが、そのコストをP2P技術によって75~90%ほど削減することが可能となるという。

Levitanは 「インターネットはますますメディアディストリビューションプラットフォームに変容しつつあります。そして『それはいつか崩壊するだろう。インターネットは音楽や映画、ゲーム、ソフトウェアを伝達するように作られてはいないんだ』という人がいます。(訳注:つまり、そのための)新たなテクノロジーが必要だということです。これはそのために必要なテクノロジーの1つなのです。」という。確かにP2PはISPに多大なコストをかけるといわれているが、そのプロセスをインテリジェントなものにすることで、メディアディストリビューションにおける負担を最小限のものとすることも可能になるのである。

また、今回の実験結果で見られたような利益を、Verizon以外のISPが得るためには、自社ネットワークに関する情報をPandoなどP2P企業と共有する必要がある。Paskoは、このようなISPによる情報の提供を克服すべき課題だとしながらも、今回得られたポジティブな実験結果は、多くのISPが共同して取り組むための強いインセンティブとして働くだろうと述べている。

依然として解決し得ないもの

しかし、TheState.comでは、こうした"P4P"システムによっても対処しがたい部分があるという。これはVerizonのような電話会社ではなく、Comcastのようなケーブル会社にとって大きな問題である。一部ケーブルISPは、ローカル同軸ケーブルに最大で500世帯の回線を収容しており、ローカル内においても非P2PユーザがP2Pユーザによって圧迫されているという状況がある。そうした状況には対処し得ないのだという。ただ、こうした問題は必ずしもP2Pに限った話ではなく、ISPのキャパシティの問題とも言える。少なくとも、ケーブルISPがリッチコンテンツの普及に対応し切れていない、ということに由来するものだとも考えられる。

また、ローカルでのPeerの解決によって、ユーザがより高速なダウンロードが可能となるというメリットも、ともすれば限定的なものであるかもしれない。通常のP2Pソフトウェアの利用でも最大速度に達するような低速DSLユーザにとっては、速度向上のメリットは感じにくいかもしれない。もちろん、天井に達していないFTTHなどの高速回線を利用するユーザにとってはメリットの大きいものではあるだろう。

P2PとISPのターニングポイント

現在、合法的かつ有用なP2Pの利用が進んでおり、今後この流れはますます促進されると考えられる。そうした段階に至っては、これまでのように単純にP2Pトラフィックを抑制するだけでは対処し得なくなるだろう。少なくとも、映画、テレビ番組、ソフトウェア、ゲームからHDコンテンツに至るまで、リッチなコンテンツへの需要が拡大し、それに応じたサービスがますます増加することは疑いない。つまり、ISPにとってコストフルな通信はP2Pに限定されない時代である。そのような時代の有効なトラフィックマネジメントを考える上では、今回のP4Pの実証実験は1つのポジティブな可能性を示唆しているように思える。

PandoのLevitanはこう述べている。「この実験は、P2PテクノロジーとISPの歴史におけるターニングポイントを意味しています。この実験結果は、ISPに対して、問題がP2Pテクノロジーにあるのではなく、その配置にあるのだということを示すことでしょう。P2Pを利益を生み出すよう配置することも可能なのです。」

また、VerizonのPaskoは「私たちはこの結果が、インテリジェントなP2Pの利用が、誰にとっても利益をもたらすものであることが示してくれることを望んでいます。私たちのネットワーク上のほんの僅かなリソースで、加入者によりよいパフォーマンスを提供することができるのですから。」という。

よりリッチなコンテンツが求められる時代になって、帯域を食うという理由でその抑制を行うということ、それはリッチなコンテンツへの需要に対応し切れていない、ISPとしてのキャパシティが不足していることを示しているのだろう。厳しい考えかもしれないが、そういった側面があることもISPは理解していなければならない。

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