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自著をP2Pファイル共有で無料配信したがる著者たち

P2Pファイル共有によるコンテンツの無料提供がその購入を促進するかどうか、という点に関しては、それぞれ個別のケースを見てみなければその効果が期待できるかどうかはわかりえない、と思っているのだけれども、一部の著作者たちは自らのケースをその効果が期待できるものだ、と考えているようで、自ら積極的にBitTorrentをはじめとするP2Pファイル共有ネットワークを利用した書籍の配信を推奨しているよというお話。No Starch Press、WiredのニュースエディターであるLeander Kahneyは出版社とともに、自らの著書2冊のtorrentをThe Pirate Bayにアップロードし、自由な共有を許可している。また、『アルケミスト-夢を旅する少年』というベストセラーで有名なPaulo Coelhoは、翻訳された自著の海賊版コンテンツを自らのブログで紹介し、それによって世界中での売上の増大に貢献しているのだ、と主張している。

原典:TorrentFreak
原題:Publisher Posts Mac Books on The Pirate Bay
著者:Ernesto
日付:March 20, 2008

No Starch Press、WiredのニュースエディターであるLeander Kahneyは、The Pirate Bayにて著書“The Cult of Mac”と “The Cult of iPod”をフリー版をリリースしている。音楽や映画、本をBitTorrentにてパブリッシュするということは、1つのトレンドとなりつつあるようだ。何の問題もない。

BitTorrentにおいて著書のいくつかを公開したベストセラー作家Paulo Coelhoの成功によって、出版社とこの2冊の著者であるLeander Kahneyは同様の試みをしようとインスパイアされたようだ。

No Starch PressのBill Pollockは自らの手でThe Pirate Bayにtorrentをアップロードしている。曰く「(音楽や書籍の)出版者たちは守りを固めるためには相当な時間を費やしているが、その一方でテクノロジーを有効に活用する方法に関しては、それほど十分に考えてはいない。」

「確かに、私たちのこの試みは少し珍しいものかもしれない。しかし、誰かが思い切ってやらねばならないことでもある。ならば我々がやろう、というところ。結局、私たちはDMCAに反して公的に出版した米国初のパブリッシャーとなった。よく言われているように、言いだしっぺがまず行動を、今はそういう時間だ。」とPollockは付け加える。

もちろん、我々はこの試みを賞賛し、多くの著者や出版社が類似した実験を行うことを願っている。ベストセラーとなった”The Alchemist”の著者、Paulo Coelhoは、パブリッシャーとは無関係に、同著のロシア語翻訳版をオンラインで利用可能にした。その後、ロシアでのセールスは、年間1,000冊程度であったものが、100万冊にまで至っている。そうなることを望まない人がいようか。

Download The Cult of Mac and The Cult of iPod

当然のことながら、BitTorrentで公開したところで、その利益は保証されるものではない。ただ、何がしかのきっかけにはなる可能性はある、ということは否定し得ないだろう。

今回の文脈で感じたことなのだけれども、このKahneyのMac、iPod関連の2冊の本はそれぞれ2004年、2005年に出版されたものであり、ある意味では少し時代遅れの感があるものといえる。もちろん、数年前の本だからというだけで全く価値がなくなるということはないが、少なくとも絶え間ない変化を経験するテクノロジーを扱ったものである以上、その一部には賞味期限も存在するだろう。最新の情報こそが高い価値を持つような分野においては、ロングテールという言葉もそれほど期待できないのかもしれない

そう考えると、この2冊に限らず、一定の賞味期限が存在するような分野の書籍に関しては、そうではない書籍に比べるとこうした手法を用いるリスクは比較的少ない、といえるのかもしれない。もちろん、賞味期限が過ぎているためにダウンロードしてすらもらえない、ということもあるだろうが。ただ、このKahneyの2冊はテクノロジーを扱っているものの、それに熱中するGeekにも焦点を当てているために、それを取り巻く環境が少し古いとしてもまだまだ楽しめるところでもあるだろう(ちなみに、この"Cult of iPod"に掲載されているiPodの写真はモノクロ液晶時代ものだったりする)。

こうして書籍をBitTorrentで公開することで、その書籍そのもののセールスに貢献するかどうか、というのは少し難しそうな感もあるが、著者が次の書籍を買わせるための試みとしては、悪くないのではないかと思う(まぁ、Macマニア、iPodマニアを狙ったものということを考えれば、少しはセールスに貢献しそうな気もしないではないが)。

ただ、今回の試みをインスパイアしたというPaulo Coelhoの試みは、Kahneyとは少し事情が異なる。こちらの書籍は「物語」であり、賞味期限が非常に長いものである。現に、日本語翻訳版を含め未だに売れ続けている書籍である。しかし、Coelhoはこの物語の複数言語の翻訳版の.torrentを自ら紹介している。彼はこれが書籍のセールスに貢献するものだと考えているようだ。

原典:TorrentFreak
原題:Alchemist Author Pirates His Own Books
著者:Smaran
日付:January 24, 2008

Coelhoは、人々に自由に彼の本のデジタルコピーを交換させることが、セールスを増大させると考えている。ミュンヘンにて行われたDigital, Life, Designカンファレンスでの基調演説で彼は、如何にしてロシア語翻訳版『アルケミスト』のアップロードが、彼の書籍のロシア国内でのセールスに影響したのか、ゼロから1,000冊/年、そこから10万冊、さらには100万冊超に至った経緯を話している。彼はこう述べる。

2001年、私は10,000冊のハードコピーを売りました。そして誰もが困惑しました。私たちはゼロから1,000冊、1,000冊から10,000冊へと売上を伸ばしていきました。そしてその翌年、私たちは100,000冊以上を売り上げました。[・・・]

私はこれをすばらしいことだと感じました。読者に実際に本を読んでもらい、実際それを買うかどうかを選択する可能性を与えること。[・・・]

そうして私はBitTorrentにたどり着き、私の作品全ての海賊版を手にしたのです・・・。そして私はThe Pirate Coelhoというサイトを作りました。私は確信しています-そう確かに-人々に自らの本の無料版をダウンロードさせることは、セールスを助けるものだと。

ただ、もし彼が他言語で彼の書籍のコピーを共有しようとするならば、翻訳者に許諾を得なければならないという著作権法に絡んでの問題が存在する。

では、Coelhoは彼の本のtorrentをSeedingしているのだろうか。それはまだ始まったばかりかもしれない。彼は第一歩を踏み出し、上述したようにWordpressブログ、The Pirate Coelhoを開設した。そこで彼は、ファイル共有ネットワーク、FTPサイトなど、彼の本への無料版へのリンクを掲載している。彼はそれがセールスに直接的な影響を及ぼしたと述べている。

信じられないかもしれませんが、本の売上はThe Pirate Coelhoのおかげで非常に伸びました。

彼は演説の中で、如何にしてインターネットが言語と書籍を変えているのか、如何にしてオンライン「海賊」やBitTorrentがより多くの人に彼の本を読んでもらうだけではなく、より多くの本のセールスのために役立ったかについて述べている。以下がそのスピーチである。これは必聴だ。

もちろん、この行為はほめられたものではないかもしれない。おそらく、翻訳者に対しての許諾を得ているとも思いがたい。そのために、アップロードされているものを紹介するという形にとどめているのだろう。実際にCoelhoの元に翻訳者や各国の出版社からクレームが寄せられているかどうかはわからないが、快く思っていない人もいるのかもしれない。ただ、結果的にセールスが好調であり、それゆえに目を瞑っている、結果オーライだったなぁというところもあるかもしれない。まぁ、同じ船に乗り込んでいる著作者本人がやっていることなので、悪意でやっているわけではないのだろうということも理解しているだろうしね。

P2Pファイル共有の販売促進効果に関しては、定量化が非常に困難であるということを考えると、たとえCoelhoが役立っているんだ!と主張したとしても、本当に役立っているかどうかということはわかりようがない。ただ、この話から少し見えてくるのは、少なくとも1つの書籍に関して言えば、致命的なダメージを与えるほどではない、ということだろう。

一般の知名度が低い場合には、こうした手法というのはそれなりに有効ではないかと思われる(ただ、低すぎれば誰からも見向きはされないのだろうが)。感覚としては、本屋の店頭で立ち読みする、と言う感じだろうか。もちろん、その前提としては、全編を提供したとしても、ユーザは紙媒体で書籍を読みたいと思う、というところにあるのだけれどもね。もし、時代が変わり、デジタルデバイスで書籍を読むような時代になれば、このままの戦略は通用しないのかもしれない。

実際に試してみてから購入してほしい、というのはユーザにとっては非常に有り難いものだろう。個人的にはこうした流れが加速してくれることを願っている。ただ、私は、単純に全てを提供する、つまり購入することで手に入るもの全て、またはそのほとんどを提供する必要はない、とも思う。いつまでもユーザと権利者が互いにAll or Nothingの主張を繰り返していても、それで話は進まないと思う。もちろん、Allを求めるユーザは一部であり、Nothingを主張する権利者サイドも建前として言わざるを得ないというところもあるのだけれどね。

また、こうした試みは何もP2Pファイル共有の文脈だけの話ではなく、CCライセンスによってその許諾を明示することで、ユーザが自由に共有することを可能するという試みもある。たとえば、『Web2.0の未来』や『CONTENT'S FUTURE』といった書籍は、CCライセンスのもと(前者は「表示-非営利」、後者は「表示-非営利-改変禁止」)共有、公開が許諾されている。また、無料ダウンロード提供を行った結果、書籍の購入にどのような影響を与えるのか、という点について、O'reillyや南アメリカ共和国の研究機関がその結果を公表しており、前者はポジ/ネガどちらの影響も見られなかった、後者は売上が3倍になったとのこと。ただ、後者は政府機関の研究結果というニッチなものであったがゆえに、その効果が強く見られたのだろうと思われる。これらの事例に関しては、fumi's blogのエントリにまとめられているので是非。

アルケミスト―夢を旅した少年
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