「某○○○○動画の『権利侵害対応プログラム』のために、ド○○○の子会社のニ○○○が権利者であることを登録する用紙を会社に持ってきて、登録す
るとニ○○○が専用ツールを提供してくれるらしいんだわ。そのツールを使うと、申し立てしなくても(○○○○動画に)上がっている動画を削除できると」
「僕らが自己で防衛しろと」
「そういうこと。てめえらのサイトで違法アップされているのに対して」
「権利侵害に対応するのが我々だってのは面白いね。夜中もやれと」
気持ちはわからんでもないけど、実際には自分達でやるしかない。確かにアップローダと著作権者の間には、ニコニコ動画という存在が媒介しており、著作権者側にしてみればニコニコ動画が対処できるではないかと考えるのも無理はない(し、当然の部分もある)。ただ、それには限界があるということも理解しなきゃいけない。ある程度知名度のあるコンテンツを提供していて、かつそれをテレビ放送とDVD販売にしか利用していないからこそ、そう考えてしまうのだろうけれど、すくなくともニコニコ動画側は当該のコンテンツが違法にアップロードされたものかどうかなどは知りえないのである。常識的に考えて侵害しているだろ、というのもわかるが、しかしその常識はその当人だけのものであり、過度に一般化しうるものではない。また、メディアがより多様な方向性を目指したとき、果たしてそこにアップロードされるコンテンツは著作者の許諾の下にアップロードされたものであるのか、ということをビデオ共有サイト側は判断しにくくなるだろう。
結局は、明確な客観的な基準が必要となる。ニコニコ動画が当該コンテンツを違法か合法かを判断しうるだけのデータベースが必要となる。音響指紋技術でも画像指紋技術でもいい、客観的な指標となるデータベースを構築し、それを提供していくことが、より効果的な解決法となるだろう。なぜ、自分達がコストをかけなきゃいけないんだ、それは向こうがやるべきことだろ!というのも、自分達は被害者だというのには役立つかもしれないけれど、現実に著作権が守られることには繋がりにくい。結局いくらかのコストを支払わなければ、権利を守ることなどは難しいのだろう。相手にも相手の事情があり、その人たちの考える費用対効果の中での対策しか講じ得ない。ニコニコ動画は以前、独自の判断に基づいてコンテンツの削除を行ったことで、著作権者自身がアップロードしたコンテンツを削除してしまったという問題を引き起こした。まぁ、このような誤削除の背景にあったものはわかりようもないけれどね。
常々思ってきたのだけれども、なぜコンテンツ産業はこのようなデータベースを相手に要求するわりに、自らが構築しようとは思わないのだろうか。そのような圧力によってMySpaceやDailyMotionは、AudibleMagicの音響指紋技術を導入したし、Googleは独自の画像指紋技術をYouTubeに導入した。しかし、結果としてはその効果は完全ではないし、最大の問題がそのデータベースの量にあることもわかってきた。結局、フィルタリングを有効にするためには、当該コンテンツのコピーを提供し、データ化しなければならない、という手間が存在する。であれば、そのコンテンツに最も近い側の人々がそのデータベースを構築するという方が、もっとも効率が良いだろうし、ある程度の説得力があると思うんだけどなぁ。もちろん、そのようなデータベースに依存しないフィルタリング技術の開発も進んではいるのだけれども、プロとアマを区別するという随分大雑把な区分けでの検出であり、ビデオ共有サイトはアマチュアだけの場所という先入観も感じられる。
日本でも実際にデータベースを構築するという話は出てきてはいるのだけれども、それは権利者データベース。では、なぜビデオ、オーディオコンテンツの被害が声高に叫ばれる中、そういった取り組みがなされないのだろう?実情を知っているわけではないのでなんとも言いがたいのだけれども、結局は言うほど困っていない、のだろう。もちろん、困ってはいるのだろうし、将来的にはどうなるか怖い部分もあるのだろうけれど、とりあえず現状ではそこまでではないのではないかと。これが今すぐにでも産業が傾きかねないほどの被害を与えているのであれば、そういった強固な対策を採るのだろうけれども、実際そこまでは言っていないからこそ、その費用を渋るのかなと思ったりもする。
「コピーされてバラ撒かれたら売れないわな。このままだとアニメの値段がバンバン上がる」
「アニメが売れなくなってきているのは事実。もちろんクオリティや本数が多すぎる問題もあるけれど、この原因も理由の1つであることは確か」
前者の発言は、後者の発言を考えると、多少感情を含んだ発言なんだろうなぁと思う。ただ、現状では原因とされるくらいに影響を与えているかはわかりえないし、じゃあどうすりゃいいのって部分は、自らが動き出さなきゃ八方塞のままなんよね。
といっても、じゃあ単にニコニコだのYouTubeから違法コンテンツを除外すれば万事OK、DVD売上急上昇かというとそんなこともないだろう。結局は、与えられた情況でいかに利益を上げていくか、と考えるべきで、それがDVDじゃなきゃいけないということもない。要は今のインターネットという状況をいかに活かしていくか。
「広告の場としてオフィシャルに認めて欲しいなら、もうちょっと対応を考えないといけない。無料で流すことがNGというわけではなくて、流し方があるでしょという」
ここ読んで思ったんだけど、それ、君らも考えることなんだぜ?と。特に製作(制作じゃないよ)にかかわってるならなおさらね。
もちろん、ユーザも含めたニコニコ動画側に対して言っている部分に対しては、同意できる部分もある。違法アップロードされたコンテンツを視聴することが、コンテンツの購買にどのような影響を及ぼしているのかがわからない以上、ネガティブな影響は否定し得ない。コンテンツをフルでアップロードすることで、当該コンテンツに対する欲求を充足させることで、それ以上のコストの支払いを遠ざけてしまうということだって考えられる。
じゃあ逆に、製作者側はこれからどうするの?という疑問に対しては、あまり言及されていないところにもどかしさを覚える。もちろん、徐々に試みは広まりつつあるのは確か。既にGyaoでは、期限付きながら最新のアニメコンテンツの無料提供を行っている。でも問題は、同じコンテンツをGyaoではなく、ニコニコ動画で見ている人の方が多いということだろう。せっかくきちんと権利処理をして、全うに商売しようとしているGyaoは確かにかわいそうなのだが、現実として負けちゃってるわけでさ。
Gayoはなぜイマイチなのか
Gyaoとしては地に足つけて全うにやっていきますよ、権利者さん、ユーザさんどうぞよろしくってなところなのだけれども、結局のところ、そのような誠実さというのは、権利者サイドのデマンドと、ユーザサイドのデマンドが全然噛みあっていないことで、中途半端なサービスとなっている(いや、ほんと申し訳ない、悪意があるわけじゃないんよ)。ただ、権利者サイドの望むようなサービスとしてのGyaoって、小出しにされる貧弱なコンテンツと、過度の権利保護のための面倒なシステムと、閉鎖的な空間でしかなかったのよね。
うーん、やはり権利者サイドの取り組みが遅すぎたのよね(というと、今は取り組んでいるかのようだけれども、Gyaoのカタログを見る限りでも、その取り組みは本腰を入れているとも思いがたい)。遅いというからには、適切な時期があったのか?と聞かれそうだけれども、個人的にはそれは2005年だったのだと思う。YouTubeがローンチした年。爆発的に広まったのは、2006年に入るか入らないか位のことだったと思う。それから考えるとその後の約2年間、多くの人がYouTubeでコンテンツを視聴するという経験をつんでいった。
そこは豊富なコンテンツが集められたプラットフォーム、非常に容易に利用できるシステム、オープンな空間が広がっていた。もちろん、それは違法性によって支えられてきた部分が多いのだけれども、しかし、ユーザがそのような経験をしてきたということには違いはない。結果としてYouTubeの孕む違法性は肯定し得ないけれども、結果として生み出されたユーザの経験を否定し得ることもできない。それを取り消すことはできないのだから。
かくして、異なる経験をつんだユーザ達は、それ以下の経験を与えてくれるサービスに対して、必然的に厳しい評価を下す。少なくとも有料であることは、ユーザにとってサービスを利用する上で、二の足を踏ませるものであっただろう。ビデオコンテンツの有料配信が成功がたいといわれるのも、そういう理由からだと思われる。ただ、映像産業にとって無料でコンテンツを送り届けるというのは、(音楽産業に比べると)困難な道のりではないのかもしれない。実際、映像産業の柱であるテレビは、これまでユーザに対しては無料でコンテンツを送り届けてきた。
テレビとインターネット
現在、米国テレビネットワーク各社は、自社の人気テレビ番組の広告モデルによる無料オンラインストリーム配信に乗り出している。もちろん、実験的な意味合いがたぶんに含まれているのだけれども、有料配信に頼るだけでは利益に繋がらないということも理解し始めている。インターネット上で少しでも多くの利益をあげるためという部分もあるだろうし、もしくは自社のコンテンツを他者に勝手に利用されるだけの状況を打破するためという部分もあるだろう。
これによって1つの難問、「無料であること」はクリアできるかもしれない。しかし、それだけではユーザの心はつかめないかもしれない。ユーザが求めているのは無料であることだけではない。ユーザが重視するのは、豊富なカタログと、容易に利用できるシステムと、オープンな空間である。確かに無料でコンテンツが提供されているとはいえ、CBS、ABC、NBC、FOXなどネットワーク各社のWebサイトをめぐり、自らが貧弱なカタログ、閉鎖性というデメリットを補おうとするだろうか。広告モデルを採用した以上は、より多くの人々に見てもらうという必要がある。もちろん、ネットワーク各局が限定的な需要のみを求めているだけであれば、余計なおせっかいかもしれないが、少なくともそこから利益を上げようとするのであれば、現在の取り組みでは不十分なところもあるだろう(といっても、現在の取り組みにおいても、相当数の視聴者をWebサイトに招き入れているようだが)。
もちろん、自社内で完結することができるために、権利処理上楽なことも多いのだろうけれど、その壁を越えられなければ、YouTubeの作り出したハードルを越えることは難しいかも知れない。ただ、挑戦的な試みが全くないわけではない。たとえば、Hulu.com。依然としてNBCとNews
Corp.の2社のみではあるが、1つの集約されたプラットフォームを作り出そうという意気込みを感じる。Yahoo!、MSN、MySpaceやAOLへの大手ネットワークとの提携や、ユーザが自身のWebサイトにエンベッド可能にしていることなどからも、よりオープンにコンテンツを提供していこうとしているようである。また、コンテンツの保持期間は、最新プログラムであれば、5週間ほどとネットワーク各社が自社のサイト内に展開している無料配信よりも長めに設定されている(それでも短いという批判もあるが)。また、若干ではあるがソーシャルな機能が付与されてもいる(この辺は改善の余地があるし、Hulu側もそう感じてもいるだろう)
ニコニコ動画に学ぶこと
では、日本のアニメ産業においても、同様の取り組みはできないのだろうか。まぁ、アニメ産業の構造を良く知っているわけではないのだけれど、テレビ放送では利益を上げることができず、DVDセールスなどの収益なくしては成り立たないということを耳にする。であれば、なぜ新たな収益を獲得するために一歩踏み出すことをしないのだろう?と思えてならない。
もちろん、その1つの試みとして有料配信というペイモデルを考えているのだろうけれど、先述の理由から少なくともネット上では成功を収めることは難しいだろう。となると広告をつけての無料配信のほうが良いかもしれない。もちろん、無料で配信したからいって、視聴者が集まってくるというわけではないが。このことはDVDセールスを捨てろということとは同義ではない。批判もあるだろうが、期限的なものでも良いだろう。決して、無料で配信したからといって、既存のセールスに影響を及ぼすとは思えない。本当に単純な理由;「テレビ放送を見て、DVDを買わなくなるのか?」むしろ、連続的なものとして考えられるだろう(たとえば、テレビ放送>期限無料配信>有料配信>DVDセル>DVDレンタルの順に)。DVDセルをメインに据えたままでも、他の部分で利益を上げようとすることは可能ではないだろうか。
ただ、これを成功させるためにはGyaoのようであってはならない。カタログの貧弱さ、プラットフォームの閉鎖性、面倒なシステムは決してユーザには受け入れられないだろう。
まぁ、アニメ産業がどれほど積極的にネットに乗り出すのかどうかはわからない。ただ、インターネット上のユーザのなかには、多くのアニメファンがいる。そして彼らは非常にアクティブだ。もちろん、そのアクティブさゆえに問題を起したりもするが、彼らは金も払えば利益にも繋がる存在なのである。
もし、インターネットをフロンティアだと今も、これからも思わないのであれば、ネットに乗り出すことはない。むしろ、一切の関係を絶ったほうがよいだろう。消極的に関係を保ったとしても大したメリットはない。ただ、インターネットをフロンティアだと感じるのであれば、今すぐ、全力でそれに取り組むべきだろう。フロンティアになるだろうけれど、今はまだ大丈夫などと思っているのであれば、それは考え違いだと思う。今ですら手遅れになりつつあるのだ。彼らのターゲットとする層の、全員とは言わないけれど多くの人がYouTubeなどのビデオ共有サイトに続いて、ニコニコ動画を経験した。彼らはコンテンツを視聴することに加え、(擬似ではあるが)インタラクションする楽しみを知った。彼らは豊富なカタログになれ、容易な利用になれ、オープンさになれている。次第にデマンドが高まっているのは明らかだろう。
アニメ産業がネット乗り出すのであれば、YouTubeやビデオ共有サイト、ニコニコ動画に学ばなければならない。なぜ、Yahoo!動画やGyaoのような合法コンテンツ配信がイマイチなのか。なぜニコニコ動画がこれほどまでに爆発的に彼らのターゲット層に火をつけたのか。1つには上述してきた利便性の問題がある。そしてもう1つには、一般仕様
vs. オタ仕様という違いがあるだろう。後者は特に2ちゃんねると結びついていたことが、人気を加速させることにもなったが。
個人的には、アニメ産業が当面目指すべきところは、このニコニコユーザを奪うことではないだろうかと思う。ニコニコエクスペリエンスに見劣りしないだけのサービスを提供し、その上でニコニコ動画に対して、著作権侵害コンテンツの抑制を求める、それでこそ、ニコニコ動画に削除要請をする意味が見出せるような気がしてならない。
もちろん、ここまではアニメ産業側の取り組みを強調しただけであって、実際アニメ産業側がこのような仕組みを提供してくれたところで、ユーザがそれを受け入れなければ完結しないだろう。もちろん、快適さを求めるという欲求はあるのは理解している。ただ、そればかり追及していては、それ以降、建設的に発展することはない。
ただ、「だったら有料配信モデルでも、不便なGyaoでも受け入れろよ」というところではあるのだけれども、現実を考えるとそれも難しい。ただ、現実と理想の落としどころとして、そうであって欲しいなぁと思う。少なくとも、違法性を含む構造から合法的な構造に移行し、それによって作り手の側が利益を上げることができるのであれば、それこそが最も望ましい形だと思う。まぁ、アニメ産業の側がニコニコ動画を合法的なものにするという選択肢もあるのかもしれないけどね。そうなれば、ニコニコ動画の出方も気になるところだけどね。プロモーションツールになるというのは、確かにメリットではあるけれども、プロモーションは効果は図りづらいということもあって、なかなかに受け入れにくいものもあるかもしれない。やはり、収益を生み出す形というのが必要になるのかしらね。